予特質問から(2)障がい者医療の充実へ   

障がい者歯科保健医療の充実
障がい者医療費助成の意義

 都議会第1回定例会(予算議会)。私は予算特別委員会の一般総括質疑(3月13日)に立ち、(1)公社病院の独立行政法人化は中止を(2)障がい者歯科保健医療の充実と障がい者医療費助成の意義(3)人権尊重条例の具体化―パートナーシップ制度の実現、の3点で都の姿勢をただしました。2回目は、「障がい者歯科保健医療の充実と障がい者医療費助成の意義」です。

障がい者と家族にとって
歯科保健医療は切実な問題

 私はまず、障がい者の置かれた状況を紹介しました。
 障がいのある方は、症状をうまく表現できないこともあり、虫歯や歯周病が悪化してしまう深刻な例を私も多く見てきました。早期発見、早期治療ができていたら、定期的な健診が受けられていたらと切ない思いになることが少なくありません。
 40代の知的障がいの方は、周りが気がついたときには全身麻酔で抜歯せざるをえない、そういう状況で、治療費も4万円近くにもなったといっています。私は、この障がい者が本当に困難をもっている、治療が困難だという状況があるなかで、障がい者と家族の方々にとって歯科保健医療が切実な問題なんだというふうに思います。
 こう述べたうえで、質問に入りました。

歯と口に関するアンケート調査
都はどう評価しているのか

 原のり子 東京都が実施をした障がいがある方の歯と口に関するアンケート調査、これは非常に歓迎をされています。障がい者施設を通じて利用者本人、保護者、施設職員から寄せられた回答は、21819人にも及びました。私も何人もの保護者の方から本当に困っているから一生懸命書いて提出したとうかがいました。これだけの声が寄せられていることについて、都としてどう受け止め、評価をしていますか。
 福祉保健局長 アンケート調査についてでございますが、平成30年度に障害福祉サービス事業者およびその利用者を対象として実施いたしました。歯と口に関するアンケート調査、これにおきましては、2114カ所の事業所へ調査票を送付し、そのうち約46%にあたる972カ所の事業所とその利用者21819人の方からご回答をいただいたものでございます。

答弁がないのは大変残念
きちんと受け止めてほしい

 原のり子 私は受け止めと評価を聞いたのですが、それについて答弁がないのは大変残念です。回答されたみなさんは、自分の声を都政に生かしてほしいと思って真剣に書いていますので、きちんと受け止めていただきたいということを申し上げておきます。

障がい者歯科を担う地域の歯科医院を増やす
都は支援を拡充する必要がある

 原のり子 アンケート結果について、都のワーキンググループでは、歯科医療機関に望むことは多様性がある、いろいろなタイプの診療所やいろんな対応ができる診療所を地域につくっていくのが1つの答えになるのではないかなど、熱心な議論が行われています。私が話を聞いた歯科医の先生は、発達障がいの人の対応にはかなり時間がかかる、小さなクリニックなので、障がいのある方に対応する分、他の患者さんが受け入れられないと話していました。このように地域の歯科医院では、知的障がい者や発達障がいの方などに治療を、努力をしつつ苦慮しているという実態があります。障がい者歯科に積極的にとりくむ身近な地域の歯科医院を増やすために、都はどうとりくんでいくのか、また、都として具体的な支援を拡充、強化する必要があると思いますが、見解をうかがいます。
 福祉保健局長 都内では22の特別区、17の市および三つの村が障害児・者に対する歯科健康診査や本人・家族等への歯科保健に関する研修会等を実施しておりまして、15の特別区および5つの市に障害児・者の歯科診療を行う口腔保健センターが設置されてございます。平成28年度に都が実施いたしました医療機能実態調査では、ご回答いただいた7058カ所の歯科診療所のうち、障害者に対応できると回答のあった歯科診療所の割合は約42%にのぼってございます。

持ち出しで工夫する歯科診療所も
都として具体的な支援を考えてほしい

 原のり子 そういう状況のなかで、具体的な支援をどういうふうに強化をしていくのかということをうかがいたいわけですけれども、私は、今いろいろとお話を聞いていくなかで、例えばクリニックによっては個室をつくっているとか、パーテーションで区切っているとか、あるいは障がい者だけを受け入れる時間を設けるなど、ソフト面の工夫も含めてですね、本当に持ち出しでとりくんでいる歯科診療所もあります。
 都のアンケートでも、発達障がいの方は個室を要望する声が多くなっています。こうした問題に具体的な支援を考えていっていただきたいということを求めたいと思います。

専門的な医療機関との連携強化が大事
多摩格差解消へ都の取り組みを

 原のり子 こうした身近な地域の診療体制と同時に、対応が難しい治療に対応できる専門的な医療機関の充実も必要です。そして身近な地域の診療と専門的な医療機関の連携の強化も大事な課題だと思います。飯田橋にある都立心身障害者口腔保健センターの研修を受けて連携している協力医は、23区には87人ですが、多摩地域はわずか18人です。5つの市からなる北多摩北部医療圏には1人しかおらず、市の口腔保健センターは1カ所もありません。明らかに格差があります。都の支援、とりくみの充実をこの場では求めておきます。

多摩療育園の歯科充実が期待されている
都「週5日外来診療を実施する予定」

 原のり子 そのうえで、地域の歯科医の先生方にお話をうかがっていきますと、例えば北多摩北部医療圏では、障がいの特性や治療の内容によって、他の医療機関に紹介する場合、都立口腔保健センター、多摩北部医療センター、東大和養育センター、多摩療育園などと連携をしているということです。しかし何カ月も待たなければいけないというのが実態です。改善が求められていると思います。多摩療育園については建て替えにより歯科の充実が期待をされています。現在の歯科外来診療の内容と利用状況、建て替え後の拡充についてうかがいます。
 福祉保健局長 肢体不自由児や重症心身障害児等の通園施設でございます多摩療育園では、治療に必要な機械等が配置された歯科ユニットを1台設置し、地域の障害児も対象に週2日、外来の歯科診療を行ってございます。重症心身障害児・者の入所施設であります府中療育センターでは、現在1台のユニットでセンター利用者を対象に歯科診療を行っており、来年度、両施設を統合いたしまして新たに設置するセンターでは、一般の歯科診療所では対応が困難な重症心身障害児・者に対応するため、ユニットを3台設置し、週5日外来診療を実施する予定としてございます。
 原のり子 もっとも治療を受けにくい重症心身障がい児・者の受け入れが拡充されることはとても重要だと思います。現在、1日あたり10人ほどの患者さんを診ていると聞いていますので、その3倍になるわけです。日数も2・5倍になります。これは大きな前進だというふうに思います。

すべての市町村で歯科健診できるように
多摩小平保健所の設備活用を

 原のり子 さらに、歯と口の疾患の予防と早期発見のため、健診の充実が必要です。ところが都のアンケートでは、福祉通所施設で歯科健診を実施していないのが7割との結果になっています。さらに多摩26市のうち、障がい者や高齢者への歯科診療などの事業を行っているのが17市にとどまっていまして、高齢者のみが対象のところを除くともっと少なくなります。すべての市町村で健診が実現、実施できるように支援をしていただきたいということを求めておきます。そしてあの、都のワーキンググループの会議のときに、障がい者の歯科健診について、かつては保健所でやっていたというご意見がありました。確かにそうです。そこでうかがいたいんですが、多摩小平保健所には歯科の設備が今も残されていると思いますがいかがですか。
 福祉保健局長 現在、多摩小平保健所には平成12年度に購入いたしました歯科用ユニット一式が設置されてございます。これは平成9年度から平成18年度までの間、当保健所におきまして、東京都の保健所におきまして障害者の歯科健康診査を実施していたことから使用していたものでございます。
 原のり子 それは今、残念ながら使われていないわけです。もったいないなと私は思っていまして、いまあの通所施設の健診、歯科ではなくて健診については、東京都は継続していますので、あわせて、歯科健診にも活用していただきたいことを求めておきます。

すべての障がい者が受けられるように
都知事「環境を整えることは重要」

 原のり子 ここまで質疑してきましたが、知事に伺いたいと思います。障がいのある方が、他の人と同じように歯科健診や歯科医療を受けられるようにすることの重要性を伺います。
 小池知事 ご質問にお答えいたします。障害のある方が、かかりつけの歯科医による定期的な歯科健診、そして歯科治療等を受けて、必要に応じて専門的な歯科医療機関を受診できるように環境を整えるということは重要だと考えます。
 原のり子 ぜひ前向きに積極的にとりくんでいただきたいということを求めておきます。

歯科口腔保健推進条例の制定を求める
制定していないのは東京と福井だけ

 原のり子 そのためにも、全国に広がっています歯科口腔保健推進条例を制定していくことを求めます。制定していないのは今、福井県と東京都だけになっています。まず知事に早急に条例を制定し、そのなかに障がい者歯科をしっかり位置づけていただくことを要望して、この問題の最後の質問に移りたいと思います。

経済的な負担を軽く
障害者医療費助成を拡充した評価は

 原のり子 最後に、経済的負担の軽減の問題です。障がいの認定が軽ければ虫歯や歯周病も軽いというわけではありません。都のアンケートには残念ながら経済的負担についての質問はありませんでした。しかしアンケートのまとめを読んでいきますと、歯科に通っていない理由として、金銭的な問題をあげた意見もあったと書かれています。障害者医療費助成の拡充はすべての障がい者の健康のため切実です。精神障害1級の方に拡充しましたが、その成果をどうみていますか。
 福祉保健局長 精神障害者の方には法で定める自立支援医療費制度によりまして、精神通院医療にかかる医療費を助成しておりまして、これに加え、都は区市町村民税非課税世帯の自己負担を全額無料とする独自の軽減策を実施してございます。心身障害者医療費助成制度の精神障害者への対象拡大につきましては、所得税の特別障害者控除との整合性や医療費負担の実態をふまえ、精神障害者保健福祉手帳1級所持者を対象に加えることとし、平成30年第1回定例会で条例改正の議決をいただき、昨年1月から施行いたしました。これにより、自立支援医療費制度の対象とならない医療にかかる経済的負担が軽減されるものと考えております。
 なお先ほど、条例制定についてのご要望をいただきました。委員もご案内の通り、東京都の場合は平成5年からですね、まさにこの口腔外科の部分、歯科にかかわります目標および計画を立て、他の自治体にも先んじてですね進めてまいりました。ぜひそのこともご理解いただければと存じます。

健診や治療の経済的負担軽減へ
都は検討をすすめてほしい

 原のり子 質問してないので。答えていただいたことは十分わかって質問しています。そのうえで、私もさっきいったように条例制定をということをいっていますので、理解していただきたいと思います。
 経済的負担軽減が図られたということが非常に重要です。障害者医療費助成の拡充については、厚生委員会でも請願が継続審査になっています。医療費の拡充を願う声に応えて健診や治療の経済的負担軽減の検討を進めることを強くこの場では要望しておきます。

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ニリンソウ(東京・東久留米市)
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by hara-noriko | 2020-03-27 23:55 | 都議会 | Comments(0)

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