都としてパートナーシップ制度を
2020年 04月 03日
パートナーシップ制度の実現求める
東京都は昨年12月、人権尊重条例第5条にもとづいて「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」を策定しました。パートナーシップ制度について基本計画では「平成27(2015)年度以降、いわゆるパートナーシップ制度は、令和元(2019)年11月末時点で28自治体が導入しています」とあるだけです。私は、3月13日の予算特別委員会に続けて、17日の総務委員会でもパートナーシップ制度の実現を求めて質問。基本計画を取り上げ、「人権尊重条例にもとづけば、パートナーシップ制度は都として実施していくべき課題ではないか」と質しました。質問の大要を紹介します。
パートナーシップ制度とは
各自治体の説明は
パートナーシップ制度とは、どんなものなのでしょうか。2つの自治体の説明を見ていただくためにリンクをはりました。自治体によって内容が違いますが、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の方々の人権を尊重するための施策です。
【東京都渋谷区パートナーシップ証明書】
【いばらきパートナーシップ宣誓制度】
人権尊重条例にもとづいて
原のり子 基本計画は、パートナーシップ制度については客観的な記述にとどまりました。本来、すべての人の性自認、性的指向における差別を許さず、多様性を尊重している人権尊重条例にもとづけば、都として実施していくべき課題ではないかと考えていますが、見解をうかがいます。
総務局人権部長 いわゆるパートナーシップ制度につきましては、婚姻関係のあり方そのものにかかわるものであり、戸籍制度や住民基本台帳制度との整合などの問題もあることから、広範な国民的な議論が必要であると認識しています。都としては、多様な性の理解を推進し、さまざまな意見をふまえ、引きつづき人権尊重条例にもとづいて必要な施策を展開していきます。
全国に広がるパートナーシップ制度
原のり子 パートナーシップ制度は全国34自治体に広がってきているんですけれども、その内訳を教えてください。
人権部長 いわゆるパートナーシップ制度については、その内容は自治体により異なりますが、令和2年(2020年)2月末時点で、都内では5区1市、道府県では1府1県、政令指定都市では8市、その他17市1町で導入されております。
都は全国の状況をどう受け止めているのか
原のり子 同性パートナーのみではなく、セクシュアルマイノリティを対象にしている自治体も多く、また事実婚カップルも対象にする自治体も生まれています。それぞれの地域の議論のなかで、実施をしてきているのだと思います。このようにパートナーシップ制度を導入する自治体が増えてきていることについて、都としてはどう分析していますか。
人権部長 いわゆるパートナーシップ制度の導入については、基本的には各自治体の判断が尊重されるべきと考えています。一方で、パートナーシップ制度は婚姻関係のあり方そのものにかかわるものであり、広範な国民的議論が必要な課題であると認識しています。都としては人権尊重条例をふまえて、性的マイノリティの方々に対し、都庁各局の施策現場においてどのような配慮が必要か検討し、取り組みを推進していきます。
原のり子 「人権尊重条例をふまえて」ということで答弁していただいていることはとても重要なんですが、条例をふまえればパートナーシップ制度をやっていくべきではないか、と私は聞いているんですね。
セクシュアルマイノリティの方たちを応援
セクシュアルマイノリティの方たちは、これまでさまざまな偏見や差別を受けて傷ついてきているわけです。ようやくいま、当事者のみなさんの努力も本当に大きくて、社会が少しずつ変わってきているわけですけれども、しかし今でも愛する人と結婚したくても法律では結婚は認められないという壁に当たるわけですね。法律を変えることは国の課題になるわけですけれども、いま全国でパートナーシップが広がってきているということは、法が変わらないもとでも自治体としてセクシュアルマイノリティのカップルの方たちを応援していく、そういうことをやろうということなんだと思うんですよね。私は人権尊重条例をもつ東京都としては、実施していくことは必要だと思いますが、見解をうかがいます。
人権部長 繰り返しになる部分もございますが、パートナーシップ制度は婚姻関係のあり方そのものにかかわるものであり、広範な国民的な議論が必要な課題であると認識しています。都としては、人権尊重条例にともとづき性自認および性的指向に関する啓発等を推進するとともに、都庁各局の施策現場において当事者の方々に対してどのような配慮が必要か検討し、施策を展開していくこととしております。
いばらきパートナーシップ宣誓制度
原のり子 都道府県初のパートナーシップ制度を制定した「いばらきパートナーシップ宣誓制度」について先日、(茨城県庁)でうかがってきました。実施してから8カ月くらいだと思いますが、2月末現在で26組が宣誓しているということです。他県から引っ越してくるカップルもいらっしゃる、と。なんでかっていいますと、自分たちを認めてくれる県だ、多様性を尊重する県だ、ということで引っ越しをしてくる人もいらっしゃるそうです。
カギは支援策勉強会
茨城県の取り組みでカギとなっているのは、「性的マイノリティへの支援策勉強会」です。勉強会に「パートナーシップ制度はいらない」と考えている方も含めて参加して、勉強しているわけです。きょうの都の答弁は、繰り返し「国民的な議論」とか「婚姻制度とのかかわりで」とお答えになるんですけれども、茨城県の議論のなかでは、「婚姻制度とは別のものであり、法的拘束力はない」と。でも、勉強会のとりまとめで書かれているんですが、「性的マイノリティへの支援が他の人々の権利を侵害するとはいえない以上、すみやかに実施をする」というふうにされているんですね。
考え方が違う人たちのなかで議論をして、お互いの考えが変わったわけではないんですね、「法律で同性婚を認めるべきではない」という人はその考えを変えているわけではないんだけれども、現状のなかで折り合ってやっているということなんです。
基本計画を進めていくなかで、さらに必要な施策を検討していくことになると思うんですけれども、少なくともこういう懇談会とか協議会などを設置して議論をすすめていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
人権部長 都では一昨年10月に全庁横断の「東京都性自認及び性的指向に関する施策推進会議」を設置し、当事者や有識者などから意見等を聴取し、昨年12月に「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」を策定いたしました。計画策定後も、この会議を通じて庁内各局との総合調整をすすめ、取り組みの進捗管理を行ってまいります。
基本計画の進行・見直しは都民参加で
原のり子 基本計画に今回位置付けられた「交流の場・機会」というものがあって、そこで意見を聞いたらどうかなと思ったりしたんですけれども、質疑のなかで「交流の場・機会」については、それぞれ当事者の方が悩みを打ち明けたりという場になっていくということですので、それはそれでとても大事なので、そこに「パートナーシップについてご意見を」ということではないのかな、と思いました。
「交流の場・機会」のようなものも非常に重要で、先日、18歳のゲイの若者から話を聞いたんですけれども、「相談のハードルが上がりすぎている」とその方はおっしゃっていて、何か特別のことがないと相談できない、すべて個別相談になってしまう、と言ってたんですね。「個別相談も大事だけれど、日常的に安心できる居場所があって、構えずに相談したり意見を聞いたりできることが必要だ」という話でした。そういう点から考えると、基本計画に位置付けられた「交流の場・機会」というのはとても重要なんだと、それはそれで大事だなと思いました。
でも何か工夫をしてですね、パートナーシップ制度のことも含めて、みなさんのご意見を聞いていく機会をつくっていけないか、というふうに思うんですね。基本計画の進行管理・見直しを都民参加ですすめることによって意見を聞くということは可能だと思うんですけれども、見解をうかがいます。
人権部長 基本計画策定後も引き続きさまざまな機会に都民の意見をうかがいながら、全庁横断会議を通じて庁内各局との総合調整や取り組みの進捗管理を行い、次期計画につなげてまいります。
都民がお客さんではいけない
原のり子 残念ながら全体として都民がお客さんのようになっているというか、もっと主体的に参加していただいて、どんどん意見を言ってもらうということがやっぱり必要なんじゃないかと思います。セクシュアルマイノリティの方たちをはじめ、都民の方が計画の進行管理や見直しに積極的に参加して、パートナーシップ制度をはじめ意見を出し合っていく仕組みをつくるべきだと思います。
茨城県では、パートナーシップ制度を実施することをやりながら、「性的マイノリティの方々の困難事例に関するアンケート調査」をネットでやっています。そういうことを一体的にやっていることが特徴で、東京都は人権尊重条例をという大事な条例ができましたので、それにもとづいてすすめていただきたい、と要望しておきたいと思います。
新たな変化
今議会、パートナーシップ制度の実現を求めて質問したのは、共産党だけでしたが、実はじわじわと大事な変化が生まれています。総務委員会の最終日、第1会派から、茨城県や大阪府がパートナーシップ制度を実施したことをふまえ、都として有意な調査を行なうべきだ、との意見が述べられました。他にも、セクシュアルマイノリティカップルが都営住宅に入居できるように、などいくつもの会派から意見が出されました。都民のみなさんの声と運動が議会を動かしています!引き続きとりくんでいきます。
茨城県を視察 県議会前でとや英津子都議(右)と
by hara-noriko | 2020-04-03 23:23 | 都議会 | Comments(0)