3月議会 文書質問とその回答(1)
2020年 06月 15日
高齢者施設の整備費など
なぜ軒並み減額するのか
(質問1)2020年度の東京都予算案の大きな特徴は、特別養護老人ホーム整備費補助、老人保健施設整備費補助、認知症高齢者グループホーム緊急整備、地域密着型サービス等重点整備等を軒並み減額したことです。三つのCをかかげ、「チルドレン」「コミュニティ」と並んで「長寿」を位置づけたにもかかわらず、なぜ、高齢者福祉施設の整備費等は、軒並み削減するのでしょうか。
(回答)都は、高齢者が地域で安心して生活できるよう医療・介護・住まいなどが一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築に向け、第7期東京都高齢者保健福祉計画において、7つの重点分野を定め総合的に施策を進めています。
介護サービス基盤の整備についても重点分野に位置付け、必要な予算を確保しています。
<コメント>予算減額しているにもかかわらず、必要な予算を確保、という矛盾…。
高齢者施設整備費
減額する分、何を強化するのか
(質問2)削減する分、何を強化するのでしょうか。
(回答)高齢者が、介護が必要になっても可能な限り住み慣れた地域で生活できるようにするためには、適切な住まいを確保し、医療や介護、生活支援サービス等を地域の中で一体的に提供することが必要です。
このため都は、第7期高齢者保健福祉計画に基づき、介護サービス基盤の整備、認知症対策や介護人材対策の一層の推進など様々な施策を展開しています。
<コメント>具体的に答えることができない。
特別養護老人ホーム 待機者は何人か
整備費減額で解消できるのか
(質問3)特別養護老人ホームへの申込者、いわゆる待機者は何人ですか。整備費を削減しても、解消できるのですか。
(回答)平成31年に都が実施した調査では、都内の特別養護老人ホームの入所申込者の数は、29,126人であり、そのうち在宅・要介護3以上でかつ入所の優先度が高い方は、3,820人となっています。
都は、第7期高齢者保健福祉計画において、特別養護老人ホームの定員を令和7年度末までに62,000人分まで増やす目標を掲げており、都有地の減額貸付けや土地賃借料の負担軽減、建築価格の高騰に対応した加算など、様々な独自の支援策を講じています。
<コメント>整備費を削減しても待機者を解消できる、とは説明できない。
特養の整備
年度途中でも対応するのか
(質問4)区市町村や事業者が、年度途中でも整備を検討したときには、対応するのでしょうか。
(回答)令和2年度は、特別養護老人ホームの整備費の補助協議を、3回受け付けることとしています。
<コメント>年度途中でも、3回協議する機会を設けるとの答弁は重要です。
特養の整備
地域の高齢者福祉サービスの拠点になる
(質問5)施設ができることで、地域の高齢者福祉サービスの拠点にもなります。在宅の高齢者、また介護するご家族を支援していくうえでも、施設整備をすすめることは必要不可欠ですが、都はどのように考えていますか。
(回答)都は、特別養護老人ホームの整備に当たり、併設のショートステイについても補助対象としているほか、小規模多機能型居宅介護等の地域密着型サービスの事業所や、地域包括支援センターを併設する場合に、1床当たり最大50万円の加算を行っています。
また、災害時に要援護者の受入れが可能となる設備等を備えた防災拠点
型地域交流スペースを整備する場合に、1施設当たり最大2,700万円の補助を行っています。
<コメント>認識を聞いているのに、そこには答えていない。ただ、特養にショートステイやデイサービス、防災の位置付けをする場合などの補助を答弁する形で、その必要性を示している。
低所得の方が、必要な医療や福祉を受けられない
都の認識を聞く
(質問6)とりわけ、ご本人やご家族の所得状況によって、受けられる福祉が左右されないように配慮すべきと考えますが、認識をうかがいます。
(回答)介護保険制度では、月々の利用者負担額が一定の上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される高額介護サービス費の仕組みがあり、その上限額は所得等に応じて段階的に設定されています。
また、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院、短期入所生活介護等の食費や居住費、滞在費について所得に応じた負担限度額を設定し、標準的な費用の額との差額を支給する補足給付の仕組みがあります。
さらに、低所得者に対する介護サービスの利用者負担軽減について、国の仕組みを基に、都独自に対象サービスや事業主体を拡大して実施しています。
<コメント>認識は答えない…。
介護老人保健施設
服用している薬で入所を断ることは適切ではない
(質問7)実際には、低所得の方が、必要な医療や福祉を受けられないケースが多々あります。
自営業のご夫婦は、80代のお母さん(要介護3)を在宅介護していました。認知症を発症し、精神保健福祉手帳1級と診断され、認知症の薬(メマリー)を病院で処方され、近くの特養ホームのショートステイやデイサービスを利用しながら、過ごしていました。が、認知症もすすみ、在宅で介護するのは限界の状態になっていきました。ケアマネージャーと相談し、特養ホームを希望するものの待機となり、介護老人保健施設に入ることになりました。
すぐに入れるとの話でしたが、高額のメマリーを飲んでいたことから、老健では用意できないとの話になり、「(当時入院していた病院から)一時帰宅して、薬をもらうことは可能か」と聞かれ、「それは構わない」と答えたそうです。
ところが、その後入所お断りの連絡があり、理由を聞くと薬のことだということなので、正当な理由なく断ってはいけないはずだと抗議しました。都に相談し助言をもらい、市に連絡し、市から施設に連絡が入り、文書が出されました。
そこには、判定理由として、「ご入所中の薬剤調整や変更などに対し承認を得ることができず、老健での医学的管理に支障が出る恐れがあるため。その後、薬剤調整の件についてはご家族の同意をいただきましたが、ご希望として、毎回、診察に同席し説明を受けたうえで薬剤調整に応じられると理解し、速やかな対応についての懸念からご入所にはいたりませんでした。」とのことでした。そこでうかがいます。
介護老人保健施設において、服薬している薬を理由に入所を断ることは適切でないと考えますが、見解を伺います。
(回答)東京都介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例等において、介護老人保健施設は、入院治療の必要がある場合や、入所者に対し自ら適切な介護保健施設サービスを提供することが困難な場合を除き、サービスの提供を拒んではならないとされています。
<コメント>服薬している薬を理由に、入所を断ることは適切ではないのです。
老健入所中の投薬
誰がどのように行うのか
(質問8)老健入所中の投薬は、だれが、どのように行うのか伺います。
(回答)東京都介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例等では、介護老人保健施設の入所者に対しては、施設の医師が必要な医療を行うが、入所者の病状から当該施設において自ら必要な医療を提供することが困難であると認めたときは、協力病院等への入院や、他の医師の診療を求める等適切な措置を講じなければならないとされています。
老健入所者の診察
家族の同席は認められないのか
(質問9)老健において、認知症の入所者の診察に、家族が同席することは認められないことですか。
(回答)東京都介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例等に定める介護老人保健施設における診療方針では、施設の医師は、常に入所者の病状、心身の状況及び置かれている環境等の的確な把握に努め、入所者又はその家族に対し、適切な指導を行うこととされています。
<コメント>認められるということですね。
老健の入所や運営について
相談や苦情解決の仕組みは
(質問10)老健の入所に関わることや、運営が不適切な場合の相談や苦情解決の仕組みについて伺います。
(回答)東京都介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営の基準に関する条例等において、介護老人保健施設は、入所申込者に対し適切な介護保健施設サービスを提供するため、その提供の開始に際し、あらかじめ、入所申込者又はその家族に対し、当該施設の運営規程の概要や苦情処理の体制等を文書により懇切丁寧に説明を行うこととされています。
また、介護老人保健施設は、入所者及びその家族からの苦情に対応するための窓口を設置するほか、苦情に関して区市町村及び国民健康保険団体連合会が行う調査に協力するとともに、指導又は助言を受けた場合は、それに従って必要な改善を行わなければならないこととされています。
老健入所中の医療費
都として国に改善を求めるべきです
(質問11)老健入所中の医療費は、施設の負担となっているため、医療費が高額になる方の受け入れが進まないのではないでしょうか。都として、国に改善を要望すべきと考えますが、いかがですか。
(回答)介護老人保健施設は、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする介護保険施設です。
施設の医師が、入所者の病状から当該施設において自ら必要な医療を提供することが困難であると認めたときは、協力病院等への入院や、他の医師の診療を求める等適切な措置を講じなければならないとされており、介護老人保健施設では通常行えない一定の診療や投薬等を入所者が受けた場合は、医療保険の対象となります。
住み慣れた場所で、安心して過ごすことができない
低所得でも入れる特養を増やす必要があります
(質問12)結局、この方は、3か月間精神科病院に入り、その後、他県の施設に入ることになるそうです。住み慣れた場所で、安心して過ごすことがかなわないことは本当に胸が痛む事態です。そもそも、近くの特養ホームに入れない、特養ホームが足りないことが問題です。しかも、ユニット型の施設は金額が高く、この方の場合は入れないとのことです。
低所得でも入れる特養を増やす必要があります。都として低所得でも入れる多床室を、増加定員の30%を上限に支援していますが、さらに上限を引き上げていくことを求めますがいかがですか。
(回答)国は、特別養護老人ホームについて、入居者の尊厳を重視したケアを実現するため、個室で構成されるユニット型での整備を基本としています。
都は、特別養護老人ホームの整備に当たり、ユニット型での整備を基本としつつ、地域の実情に応じて区市町村が必要と認める場合には増加定員の30パーセントを上限に、多床室の整備に対して補助を行っています。
<コメント>上限の引き上げは答えず。
介護で自己破産に追い込まれる自営業者もいる
困難なケースに対する支援策はあるのか
(質問13)知事は、介護離職ゼロを公約に掲げています。しかし、自営の仕事をしながら介護していたが、認知症で目が離せなくなり、実際には自営の仕事を大幅に削減し、苦しい生活を強いられている方が少なくありません。自己破産に追い込まれるという例もあります。自営業の家族が介護している困難なケースに対する支援策はありますか。
(回答)区市町村は、地域の相談支援の拠点として地域包括支援センターを設置
し、高齢者やその家族への相談に対応しています。
都は、センター職員に対する研修や、センターの機能強化に取り組む区市町村への支援を行うとともに、介護支援専門員に対し、介護を担う家族等への支援技術を含め、資質の向上を図るための研修を実施しています。
また、ショートステイや小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護に独自の整備費補助を行うなど、介護サービス基盤の整備に取り組んでいます。
<コメント>知事の介護離職ゼロの公約には、自営業者などは入っていないのです。
介護しながら自営で仕事をする人
経営面で相談できる仕組みや支援策は
(質問14)介護をしながら自営で仕事をしている方々が、経営面で相談できる仕組みや支援策はありますか。
(回答)都では、中小企業振興公社に設置しているワンストップ総合相談窓口において、個人事業主を含む中小企業の経営者から様々な相談に対応するとともに、相談内容に応じて各種専門家につなげるなどの支援を行っています。
認知症対策
所得の低い方の住まいや居場所が少なする
(質問15)認知症対策に知事は力を入れるとしていますが、実際に認知症の方、とりわけ所得の低い方の住まいや居場所が少なすぎます。都として、認知症と診断された方たちへの支援をどうすすめてく考えですか。
認知症と認定された方が、適切な医療や福祉を受けられ、人権とくらし、ご家族を支える手立てを強化していくことが求められています。にもかかわらず、施設整備費等を減額することは逆行しています。そうした姿勢を転換することを強く求めます。
(回答)都は、認知症高齢者グループホームの整備を促進するため、国制度による補助に加え、1ユニット当たり2,500万円の補助を行うほか、整備状況が十分でない区市町村等を重点的緊急整備地域に指定し、補助額を1.5倍の3,750万円としています。
また、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護についても、国制度に加えて定員数に応じた独自の補助を実施しています。
さらに、認知症の人やその家族を支援するため、認知症疾患医療センターなど医療機関と連携した認知症カフェ等の運営に取り組む区市町村を、高齢社会対策区市町村包括補助事業で支援しています。
by hara-noriko | 2020-06-15 22:56 | 都政報告 | Comments(0)