文書質問から(2)LGBT当事者の権利保障
2020年 12月 02日
私のコメント
質問の動機のひとつは、共産党都議団総務委員会チームの事務局の方と相談し、誰もが性自認・性的指向による差別を受けてはならないし、差別をしてもいけない。一部の人の問題でなく、みんなの問題なんだ、ということを明確にするために、SOGIの考え方を明確にしていこうということ。この時提案した内容が、人権尊重条例に結びついていったことは本当に嬉しく思います。
また、もう一つの動機は、同性カップルの方が、里親になれないと悩んでいることを西東京の大竹市議からうかがい、調べてみて、これは改善を求めなければと思ったこと。このあと、同性パートナーも里親になれる道が開かれました。
(*性同一性障害については、2018年6月、WHOが、「精神疾患」から外し、「性の健康に関連する状態」に分類され、「性別不和」とされています)
【質問事項】
LGBT当事者の権利保障について
いじめや差別の防止
【質問1】
(1)宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が、2016年にLGBTをはじめとするセクシュアルマイノリティ当事者に対し行った「LGBT当事者の意識調査」では海外在住者77件含む1万5141件もの有効回答数が寄せられました。
調査結果で、学校生活(小・中・高)における「いじめ」は全体の約6割が経験しており、10代では約5割が経験しています。また、「職場・学校の環境」で、7割以上が「差別的な発言」を経験しています。
2017年3月16日の文部科学省が通知した「いじめの防止のための基本的な方針」の改定」の中で、新たに「性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するいじめを防止するため、性同一性障害や性的指向・性自認について、教職員への正しい理解の促進や、学校として必要な対応について周知する。」との文言が入りました。
この通知を受けて、セクシュアルに関するいじめや差別を防止するために、都としてどう取り組んでいくのですか。
【回答1】
性同一性障害等の児童・生徒が、いじめや差別を受けることなく充実した学校生活を送ることができるようにするためには、全ての児童・生徒が、自他を大切にする人権尊重の理念を正しく理解できるよう、人権教育を充実することが大切です。
そのため、都教育委員会は、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」に先立ち、平成29年2月に「いじめ総合対策・第2次」を策定し、学校において、性同一性障害や性的指向・性自認など人権上の配慮が必要な児童・生徒の特性を踏まえ、他の児童・生徒に対して適切な指導を行うよう明記するとともに、いじめを許さない意識の醸成に向けた授業のプログラムを掲載するなどして、都内公立学校の全教職員に配布しました。
これを踏まえ、各学校では、年間3回以上、いじめに関する授業を実施するなどして、児童・生徒が、いじめや差別は絶対に許されない行為であることを自覚できるようにする指導の徹底を図っています。
性的指向について学び考える場を
【質問2】
(2)宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が行った「LGBT当事者の意識調査」では、学校教育における「同性愛について」の知識については約7割が「一切習っていない」と回答しています。
10代では48.2%が「一切習ってない」と回答し、「異常なものとして習った」が7.1%、「否定的な情報を得た」が18.8%となっています。
性的指向に関しては、多くが10代前半の頃に自身のセクシュアルを自覚するといわれ、10代に満たない年齢でも自覚する方もいます。
しかし、保健体育の教科書などでは異性愛であることが前提であるような記述もあります。都内の中学校で使用されている大修館書店の保健体育の教科書では、思春期になると「異性への関心が高まったり」と記述され、異性以外への性的指向に関しては記述がありません。
教育現場では、児童・生徒に対し、性的指向は同性やその他の性に対してもあること、また相手の性にこだわらない人や性的指向がない人もいること。それが当然であり、肯定的に伝えることが重要と考えますが、認識を伺います。
教育現場において性的指向について適切に学び、考える場について、具体的にどのような施策を行っていますか。
【回答2】
学校においては、人権教育を通して、一人一人がかけがえのない存在であり、互いに尊重し合って生活する必要があることを児童・生徒に指導することが重要です。
都教育委員会は、こうした考えに基づき、校長や主幹教諭等を対象とした人権教育の研修会において、文部科学省の通知の内容を周知したり、医療や心理等の専門家による講演を行ったりして、全ての教員が性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童・生徒について適切に対応し、一人一人に寄り添えるよう取組を進めています。
SOGIハラ防止へ正しい知識の普及・啓発
【質問3】
(3)LGBTは性的マイノリティを包括的に表現する言葉として使われるようになりました。一方で、SOGIという概念と言葉が注目されています。2006年のジョグジャカルタ原則において性的指向、性自認に関する定義が示され、その後2011年の国連人権理事会はSOGIを人権の問題として定式化されることが決議されました。この決議に賛成票を投じています。SOはセクシュアルオリエンテーション(性的指向)、GIはジェンダーアイデンティティー(性自認)の略です。このSOGIは性的マイノリティに限らず、全ての人の「特性」を表す概念です。
SOGIという考え方、概念が日本ではほとんど普及していませんが、現実ではSOGIハラスメントも問題になっています。SOGIハラスメント、SOGIハラとは性的指向、性自認に関するハラスメントです。
2016年、一橋大学に通う大学生が友人に自分のセクシュアリティを許可なく公表され、その事を苦に自殺するという痛ましい事件が起こりました。自分のセクシュアリティについて許可なく公表すること「アウティング」といい、当事者が最も恐れることです。
SOGIハラには他にも、差別的な言動、望まない性別での生活の強要、不当な異動、不当な入学拒否や転校拒否、などがあります。SOGIハラについて、まだ広く普及されているとは言えず、正しい知識を身に付けることが必要です。
国連人権理事会は2016年6月30日、「性的指向と性自認を理由とする暴力と差別からの保護」に関する決議を賛成多数で可決しています。
都として、教育現場や、事業所などと連携して広く都民にSOGIハラ防止について正しい知識を普及啓発することが重要と考えますが、認識を伺います。
【回答3】
都は、平成27年(2015年)8月に改定した「東京都人権施策推進指針」において、「性的指向」及び「性同一性障害者」のほか、「ハラスメント」を新たな人権課題として取り上げました。
今後も、同指針に基づき、性についての多様性があることへの理解を深め、SOGIすなわち性的指向や性自認を理由とする偏見や差別、ハラスメントの解消を目指して、都民への啓発等に取り組んでいきます。
安心できる相談体制
【質問4】
(4)あわせて、SOGIハラについて、プライバシーが守られ、安心できる相談体制が教育現場や労働現場などに必要と考えますがいかがですか。
【回答4】
都は、平成27年8月に改定した「東京都人権施策推進指針」において、「性的指向」及び「性同一性障害者」のほか、「ハラスメント」を新たな人権課題として取り上げました。
ハラスメントに対しては組織でも取り組むことが大切であり、そのためには安心できる相談体制の仕組み作りが重要であると考えます。
都内の公立学校は、子供からの訴えを確実に受け止め、相談した子供が安心して学校生活を送ることができるよう、日頃から子供の不安や悩みに対して、スクールカウンセラー等を含む全ての教職員が、いつでも相談に応じる体制を整備しています。
また、職場での様々なハラスメントの問題については、労働相談情報センターにおいて、労使双方からの相談に幅広く応じています。
SOGIの考え方や意味 都が率先して普及啓発すべき
【質問5】
(5)性の多様性、一人ひとりのセクシュアリティについて、全ての人が尊重される社会の実現のため、SOGIという考え方は重要であると考えます。LGBTの人権問題を解決する上でも、すべての人に関わるSOGIについて、考え方や意味について都が率先して普及啓発することが重要と考えますが、いかがですか。
【回答5】
性についての多様性があることへの理解を深め、SOGIすなわち性的指向や性自認を理由とする偏見や差別の解消を目指した啓発に取り組んでいくことは重要であると考えています。
都はこれまでも、都民向け啓発として、リーフレット「性的マイノリティの人権」を発行し、様々な機会を捉えて都民に配布しているほか、大型人権啓発イベントである「ヒューマンライツ・フェスタ東京2017」におけるLGBTを題材とする映画上映やパネル展示、東京都人権プラザや人権週間行事における啓発など、様々な取組を行っています。
今後も引き続き、都民への啓発活動に努めていきます。
「性的指向、性自認に関する差別を禁止する条例(仮称)」の制定を
【質問6】
(6)都として、性的マイノリティ当事者だけではなく、すべての人の性的指向、性自認を尊重しSOGIハラを防止し、セクシュアルに関する差別的な言動等を防止する上でも、「性的指向、性自認に関する差別を禁止する条例(仮称)」の制定を検討すべきですがいかがですか。
【回答6】
性についての多様性があることへの理解を深め、性的指向や性自認を理由とする偏見や差別をなくし、全ての人々の人権が尊重される社会であることが重要であると認識しています。
都は、東京2020大会の開催に向けて、「東京都人権施策推進指針」に基づき、人権尊重の理念が浸透した社会を実現するための取組を推進していきます。
里親家庭を増やす目標は?
【質問7】
(7)国内では現在、約4万5000人の子どもが社会的養護のもとで生活しているといわれ、そのうち児童養護施設で生活する子どもが約9割、里親家庭で生活する子どもが約1割です。日本の里親委託率はOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも低く、国連からの勧告の影響もあり、厚生労働省も「家庭養護の推進」を掲げ、里親を増やす政策を推進しています。
東京都として社会的養護に占める里親家庭等をふやす目標と現状はどのようになっていますか。
【回答7】
子供は、本来家庭的な環境の下で愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいと考えています。
都は、平成27年4月に策定した「社会的養護施策推進計画」において、平成41年度に社会的養護に占める養育家庭やファミリーホームなどの家庭的養護の割合を、おおむね6割に引き上げる目標を定めています。
平成29年3月現在、その割合は、養育家庭等が10.5%、ファミリーホームが2.1%、グループホームが21.2%、合計33.8%となっています。
同性カップルの里親認定 都はどう認識しているか
【質問8】
(8)大阪市は昨年(2016年)12月、虐待などにより親元で育てられない子どもの養育里親に、30代と40代の男性カップルを認定しました。里親委託する際には、慎重にマッチングを確認しながら、家庭に慣れていく期間が設けられます。また子どもへの意思確認があり、子どもの意思が尊重される仕組みになっています。大阪市の場合も、10代男児に男性カップルの里親であることを説明し、納得したうえでの委託となっています。
塩崎恭久前厚生労働大臣は、「同性カップルでも男女のカップルでも、子どもが安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されれば我々としてはありがたい」と述べたことは大きく報道されました。
都は、この大阪市の事例と、それについての前厚生労働大臣の発言について、どのような認識をお持ちですか。
【回答8】
都は、社会的養護を必要とする児童の措置に当たっては、児童の福祉を第一に考えており、児童の意思を確認するとともに、心身の発達状況や保護者の家庭引き取りの可能性など、一人一人の状況を総合的に勘案し、まずは養育家庭への委託を検討しています。
養育家庭への委託に当たっては、養育家庭の状況をきめ細かく把握するとともに、児童の様子を確認しながら、委託に向けた交流を重ねるなど、時間をかけて丁寧に対応しています。
都の里親認定基準については、これまで、児童の成長・発達に必要な養育環境を提供するという観点から、児童福祉審議会の議論等を経て、改正しており、現在、平成28年の児童福祉法の改正を踏まえ、児童福祉審議会で御議論いただいています。
子どもにとって選択肢を増やすことは喫緊の課題
【質問9】
(9)同性カップルの里親を認めることは、子どもたちの委託先の選択肢を広げることにもなります。たとえば、親から虐待を受けてきた子どもが、男性あるいは女性に強い恐怖感を持っている場合や、子ども自身が性別に違和感を持っているような場合もあります。欧米では、同性カップルに育てられた子どもの成長について、社会学や心理学の観点からの研究が進んでいます。そのなかで、問題がないことが確認され、約20カ国・地域で同性婚が認められるようになり、そのほとんどが養子縁組を認めています。大阪の同性カップルの里親は、「子どもが欲しい大人のためにある養子縁組ではなく、大人を必要としている子どものためにあるのが養育里親」と述べています。都内でも、里親を希望している同性カップルはいます。一つでも多くの里親家庭を増やし、子どもにとっての選択肢を増やすことは喫緊の課題だと考えます。
東京都では、里親を希望する方たちの相談をどのように受け付けていますか。相談件数、主な内容、そのなかで同性カップルからの相談についての現状をお聞かせください。
【回答9】
児童相談所では、里親制度に関して、里親の要件や認定までの手続、子供の紹介から委託までの流れなど、様々な問合せを受けていますが、その件数について集計したものはありません。
里親希望者から、里親認定の具体的な手続について相談があった場合には、希望者の年齢や家族の構成状況、欠格事由の該当の有無等、里親の要件を満たしているかどうかの確認を行うとともに、里親種別による違いや里親の役割などについての説明を詳細に行っており、平成28年度(2016年度)に、里親の認定について、新たに児童福祉審議会に諮問した件数は140件となっています。
同性カップルを排除すべきではない
【質問10】
(10)厚生労働省ガイドラインの里親希望者の要件は、同性カップルでも里親を希望することは可能です。ただし、運用主体は都道府県や政令指定都市です。現在、東京都だけが同性カップルを里親に認定しない方針です。また、「東京都里親認定基準」の「家庭及び構成員の状況」項目の(5)は「里親申込者は、配偶者がいない場合には、次の全ての要件を満たしていること」とし、「ア 児童養育の経験があること、又は保健師、看護師、保育士等の資格を有していること」「イ 起居を共にし、主たる養育者の補助者として子供の養育に関わることができる、20歳以上の子又は父母等がいること」との厳しい要件を設けています。里親にふさわしい人材か否かは、認定・登録の後の委託の段階で判断されるべきであり、同性カップルを排除すべきではありません。
同性カップルを認めない方針を改め、認定基準も改善することを求め、見解をうかがいます。
【回答10】
都の里親認定基準については、これまで、児童の成長・発達に必要な養育環境を提供するという観点から、児童福祉審議会の議論等を踏まえ、改正してきました。
平成28年(2016年)に児童福祉法が改正され、要保護児童について、家庭と同様の環境における養育の理念が明記されました。こうしたことを踏まえ、現在、里親認定基準について児童福祉審議会で御議論いただいています。
【掲載されている議事録】
平成三十年東京都議会会議録第一号
平成三十年二月二十一日(水曜日
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by hara-noriko | 2020-12-02 22:48 | 都議会 | Comments(0)