コロナ対策に罰則なんて
2021年 01月 27日
菅内閣が計画する罰則の導入
コロナ感染症対策に罰則を持ち込むことが大きな議論となっています。
菅内閣が持ち込もうとしている罰則は、次のようなものです。
感染症法改定案では、感染した人が入院などを拒否したとき、また、病院がコロナ患者受け入れの病床確保の勧告に応じなかったときに罰則を設けます。
コロナ対策の特別措置法改定案では、事業者が時短営業などの要請に応じなかったときに罰則を科すとしています。
入院が必要でも待機している方たちが大勢いらっしゃいます。病院はコロナ対応とともに通常医療を継続するためにぎりぎりの状態です。事業者は補償も不十分なままの状態に置かれていいます。こんなときに罰則などありえるでしょうか。今現在の困難を解決することこそ求められているのではないでしょうか。
自己責任を押し付けながら
罰則で脅すやり方は許されない
私は、「感染した自分が悪い」「迷惑をかけている」と悩み、自ら命を絶つ方も出ているのに、その背景になっている自己責任を押し付ける政治の在り方を見直すのではなく、罰則で脅すというやり方は許されないと思います。人権問題です。
もし、罰則が導入されるようなことがあれば、今以上に、感染したことで自分を責めたり、また、検査を受けないようにしたり、陽性でも黙っていたり…という状況が広がりかねません。感染がより拡大しかねないのではないでしょうか。
共産党の宮本徹衆院議員
予算委員会の質問で指摘したこと
1月26日の衆院予算委員会。ハンセン病患者の強制隔離によって人権を侵害し、社会に差別と偏見を広げたなどの反省の上に感染症法が成立したことに触れた共産党の宮本徹衆院議員は、人権を尊重して権利の制限は必要最小限にすべきことを強調しました。
ハンセン病元患者や家族の人権回復
請願を受けて都議会で質疑
都議会では、2020年第3回定例会で、ハンセン病元患者や家族の人権回復にかかわる請願を審査しました。内容は、職員の研修や偏見の解消を求めるもので、総務委員会で私も質疑を行いました。このとき、事前に、ハンセン病元患者の方にお会いして、お話もうかがいました。コロナのなかで差別が広がっていることを心配されていることが、強く心に残りました。
日本の感染症対策での過去の痛苦の教訓が、今、踏みにじられかねない…。とても危惧します。総務委員会での質疑から、少し紹介したいと思います。
ハンセン病
国の誤った隔離政策で深刻な差別被害
原のり子 国の誤ったハンセン病隔離政策のために、元患者の家族というだけで深刻な差別被害を受けたとして取り組まれたハンセン病家族訴訟は、2019年、国の責任を断罪する判決となりました。
その後、家族に対する補償金の支給等に関する法律の成立、また、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の改正へと結びつきました。ハンセン病元患者の方々、そしてその家族の方々が歴史を動かした画期的なものとなりました。
しかし、これで終わりではなく、ハンセン病問題の全面解決は道半ばです。特に、家族訴訟でも大半の方が匿名であること、また、未提訴にせざるを得ない方がたくさんいらしたことに、問題の深刻さがあらわれているというふうに思います。
重要なのは、1996年に、らい予防法が廃止されたにもかかわらず、そのときに、偏見、差別の除去義務を負う法務省が人権啓発活動をまともに行わず、文部省、文科省も正確な知識による教育を行う措置が十分ではなかったということを、違法だとしたことです。そこに照らして、東京都としても、これまでの取り組みを振り返り、何を強化すべきなのかを考えて取り組んでいくことが必要だと思います。
都職員への研修
無らい県運動を都としてどう総括しているか
原のり子 初めに、職員への研修について。研修を位置づける上で重要なのは、無らい県運動を東京都としてどう総括しているかということだと思います。見解をうかがいます。
総務局人権部長 昭和6年(1931年)以降、ハンセン病絶滅を理由に全ての患者の強制隔離が進められ、これに前後して、各地で無らい県運動が行われました。このため、ハンセン病は人々の間に伝染力が強く怖い病気という誤解を生み、差別と偏見を大きくしたと認識しております。
差別・偏見はなくなっていない
都は現状をどう認識しているか
原のり子 こういう歴史を二度と繰り返さないために研修が欠かせないと、より充実していくということが求められているということだと思います。それでは、広く都民の皆さんに向けてどういう取り組みをしていくかについて、次にうかがいます。
差別、偏見の解消に向けた施策に取り組むことの重要性は誰も否定するものではありません。ただ、実際に、今お話にもあったように、差別、偏見はなくなっていないということをどのぐらい実感を持って受けとめているかどうかで、真剣さが変わってくると思います。差別、偏見についての現状認識をうかがいます。
人権部長 ハンセン病回復者の方からは、本名を名乗れない、病気が治っても家族のもとに帰ることができないとの声を聞いております。
また、平成15年(2003年)に発生した回復者の方のホテル宿泊が断られた事件の際には、回復者の方を誹謗中傷する多くの手紙が送られる事例なども起きています。
このように、偏見や差別は残念ながら今でも続いていると認識しております。
これまでの延長線ではない取り組みの強化を
当事者の声を聞くことの重要性
原のり子 都としても、これまでの延長線上ではない取り組みの強化が求められていると思います。私は、その柱に当事者の声を聞くということを据えることが最も重要だと思います。
私自身が元患者の方のお話を初めて聞いたのは、20年ぐらい前です。小学校に上がるかどうかぐらいだった自分の娘と一緒に聞きました。話の後に、その元患者の方が娘の手を優しく握って、「お母さんを大事にしてね」と語りかけてくださったことが本当に忘れられません。らい予防法が廃止されても家族に会えない、ふるさとに帰れない、家族を大事に思うからこその万感の思いが込められていたのだと、今振り返って思います。
ある家族訴訟の原告の方は、親の病歴を理由に苛酷な差別を受け、こんなひどい目に遭ったのは親のせいだと思わされ、親子関係がずたずたにされたと訴えていました。家族訴訟によって、ハンセン病問題の深刻な被害、人生被害がより明らかになったというふうに思います。
こうして考えると、ハンセン病元患者の方や家族の生の声により学ぶことが、最も重要な施策になっていくのではないかと思います。都の職員研修で語り部の話を聞くことをさらに位置づけてほしいと要望しましたけれども、広く都民に対してもフィールドワークや話を直接聞く機会を設けることを、東京都が意識的に取り組むことをこの場では強く求めておきたいと思います。
ハンセン病元患者の方々の平均年齢は86歳です。先日、米倉春奈都議と一緒にお会いしたある語り部の方は、こういうふうにいっています。長い長いハンセン病の当事者と家族の苦しみや体験を力にして、今なお残っている差別と偏見をなくす取り組み、そしてこれから二度と同じような過ちを犯さない、犯させないために、歴史の真実を語り、人々が自由に生きられるように啓発活動を進めると話しておられました。コロナ禍のもとでも今、差別が生まれているということにも胸を痛めていらっしゃいました。
この方は、小学生のときに療養所に強制収容されたのですが、先に収容されていたお父さんが、この方を殺して自分も死ぬといっていたそうです。でも、そのときに自分がにこっと笑ったのを見て、やめたんだという話をしてくれました。それで自分は今生きているとおっしゃっていました。残り少ない人生を語り部として生き抜くという、その思いを話してくださっています。私は改めて、こういう方たちの取り組みを支援していくことこそ、東京都としてできることではないかというふうに強く指摘をし、検討を求めておきたいと思います。




by hara-noriko | 2021-01-27 22:46 | 国政 | Comments(0)