文書質問から(6)放課後等デイサービスの報酬変更   

 3年半前の2017年7月に都議になってから、私は都議会定例会が開かれるごとに文書質問をしてきました。文書質問は、本会議で質問に立たないときに提出できます。どんな質問をし、都がどのように回答したか。随時紹介しています。第6回は「放課後等デイサービスの報酬変更について」(2018年第2回都議会定例会文書質問)です。

私のコメント

 放課後デイサービスは、学齢期の障害児が放課後や長期休暇中において、安心して過ごせる大切な居場所として、生活能力を身につけ自立促進の場として、必要不可欠です。しかし、不合理な報酬区分が現場で大問題になり、その改善を求めて質問しました。国が示した指標は、子どもたちの状態を正確にとらえるものになっておらず、子どもの尊厳が傷つけられると指摘されるものでした。子どもたちの権利を守りながら努力する良心的な事業所ほど苦しむ事態になり、都として国に改善を働きかけること、都としての支援を実施することを求めました。
 その後、コロナ禍においても、放デイは子どもたちを受け止め、守り続け、社会的にも広くその存在の大事さを示しました。もっと支援が強化されるべきです!

2月16日 都議会厚生委員会
障害児放課後クループ連絡会・東京の陳情を審査


 現在、障害児放課後クループ連絡会・東京から都議会に陳情が提出されています。そこには、国の指標該当児判定の廃止を求めてほしいと書かれています。子どもを深くとらえ支援しているからこそ、本質的なところで陳情を出されているのだと思いました。2月16日の厚生委員会で審査されます!


放課後デイサービスは不可欠なもの
減収で事業所の存続が危ぶまれる事態


【質問事項】
 放課後等デイサービスの報酬変更について

 放課後等デイサービスは、学齢期の障害児が放課後や長期休暇中において、生活能力向上のための訓練や自立促進、また居場所づくりとして必要不可欠なものです。障害児が安心して利用できることが重要です。
 今年度から、区市町村が行う判定に該当する児童の割合に応じて、事業所の報酬区分が決まることになりました。国は判定の基となる指標について、障害児の状態像を勘案したものとしています。該当する児童が半数を超えると区分1、それ以下であれば区分2となります。とくに区分2になった場合、報酬の大幅引き下げ、人員配置加算(児童指導員等加配加算)も1人しか認められず、多くの事業所が減収になり存続の危機に見舞われています。判定は区市町村が行いますが、それぞれの自治体で対応に差もあり、国が示した判定における指標についても問題が指摘されています。特別支援学校に通う、重度判定をされている肢体不自由児でも非該当になっており、保護者の間でも混乱が生じています。正しい判定にもとづき、支援を行なうことができるのか、関係者からも問題を指摘されています。
 今回の変更は、放課後デイサービスの事業所が増加するなか、国としても「利潤を追求し支援の質が低い事業所」への対策としています。しかし、すでに、「利潤追求」型の事業所は、今回の改定により、利用者への対応も不十分なまま早々と撤退したり、報酬が相対的に高い区分1にするために、利用者を選別するなどの動きをみせています。そうしたなか、良心的な事業所は、区分2になってもこれまでどおり利用者を大事にした運営に努力をしていますが、年間数百万円の減収になると見込む中、事業所を存続できる見通しがない状態です。よって、以下の点について質問します。

区市町村の対応
都として実態を調査し公表を


【質問1】
 厚労省通知(2018年2月13日)では、指標の判定に準ずる状態について区市町村が判断するにあたり、「障害児の状態を判断するにあたり、利用中の放課後等デイサービス事業所に対してヒアリング等を行うことは差し支えない」としています。また、3月2日の通知では「報酬区分の導入当初の措置として、平成30年(2018年)3月31日時点において現に存する事業所にあっては、平成30年4月1日時点の在籍者数(契約者数)に占める指標該当児の割合により報酬区分を判定すること。また、導入後3月経過後は、3月における障害児の延べ人数により算出すること」としています。
 これにもとづき、区市町村が事業所のヒアリング等を実施したのか、当初の時点と3カ月後でどのような対応がなされたのか、都として実態を調査し、把握してください。そして、公表してください。

【回答1】
 国は、平成30年度(2018年度)障害福祉サービス等報酬改定において、これまで一律の単価設定だった放課後等デイサービスの基本報酬について、新たに障害児の状態像を勘案した指標による報酬区分を設定しました。
 障害児の状態像の指標による判定に関しては、区市町村が実施するものですが、平成30年4月1日までに、利用する全ての障害児に対する指標による判定を行うことは困難であるため、国の通知において、平成31年(2019年)3月31日までは、行動援護の利用者である場合など、区市町村が認めた場合も指標の判定に準ずる状態として、指標対象児とみなすことができるとされています。
 事業所が国の報酬改定に基づき、平成30年4月以降3カ月間の児童利用延べ人数による報酬区分の再申請を行う際に、区市町村が障害児の状態像の指標による再判定を行うかどうか、また、事業所にヒアリングを行うかどうかなども、事業の実施主体である区市町村の判断により行われるものとなっています。
 放課後等デイサービス事業所に係る平成30年度報酬改定の影響については、平成30年5月、国が調査しています。

報酬と区分の指標
見直しを国に働きかけて


【質問2】
 放課後等デイサービスの報酬、および、区分の指標の見直しを国にはたらきかけてください。

【回答2】
 都は、平成29年11月に、平成30年4月の報酬改定に向け、放課後等デイサービスについて、「障害の程度や特性に応じた支援内容を適切に評価し、サービス提供の実態に即した報酬単価とすること」等を、国に緊急要望しました。
 報酬改定では、放課後等デイサービスについて、新たに障害児の状態像を勘案した指標による報酬区分が設定されましたが、肢体不自由のある児童や比較的重度の障害のある児童等の受入れを更に促進していくため、都は、平成30年6月に、「肢体不自由のある児童や重度の障害のある児童等の受入れに対する評価を更に充実するなど、サービス提供の実態に即した報酬水準となるよう一層の改善を行うこと」等を、国に対して要望しています。

良質な事業所が後退しないよう
都として支援を検討してほしい


【質問3】
 良質な事業所が撤退しないよう、都としての放課後等デイサービスへの支援を検討してください。

【回答3】
 放課後等デイサービスは、国の法令に基づく全国一律のサービスであり、基本的には、国の給付費により運営されるものです。
 都としても、引き続き、事業者が安定した事業運営を行うことができるよう、国に要望していきます。

【掲載されている議事録】
平成三十年東京都議会会議録第十一号
平成三十年九月十九日(水曜日)

【これまで掲載した文書質問】
文書質問から(1)発達障害教育の推進
文書質問から(2)LGBT当事者の権利保障
文書質問から(3)学校のブロック塀などの安全対策
文書質問から(4)通学路の安全対策
文書質問から(5)障害者グループホームの都加算制度の見直し

宮本徹衆院議員(左)とともに街頭から訴え
右は、佐々木あつ子・清瀬市議
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by hara-noriko | 2021-02-09 22:45 | 東京都政 | Comments(0)

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