都議会 総務委員会で質問
2021年 06月 03日
コロナ対策条例の一部改正案
どんな内容なのか
原のり子 東京都新型コロナウイルス感染症対策条例の一部を改正する条例について質問します。今回の条例改正は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正にあわせてのものだとされています。
まず最初に、特措法の改正内容はどういうものだったのか、うかがいます。
総務局総務部長 本年2月に改正されました特措法の主な改正内容でございますが、まん延防止等重点措置の創設や、法45条第2項の要請等に応じない場合の命令・罰則規定の追加などとなっております。
都民及び事業者の責務として
新たに「感染の拡大の防止に努める」
原のり子 全体はそういう改正で、かなり広範囲であると同時に、罰則を盛り込んだことも大きく、重たい内容になっていると思います。それのすべてが都条例に落とし込まれるわけではありません。
そういうなかで今回の条例に盛り込まれたのが、第4条に「都民及び事業者の責務」として新たに、「感染の拡大の防止に努める」という文言です。なぜこれをピックアップして追加したのか、うかがいます。
総務部長 特措法におきましては、事業者及び国民の責務といたしまして、予防に努める旨の規定がなされておりまして、これとの整合性を図るため、条例でも同様の内容を「都民及び事業者の責務」として規定しているものでございます。2月の特措法の改正で、自己の感染予防のみならず、個人による感染拡大につながりうる行動も抑止するため、事業者及び国民の責務として新たに感染の拡大の防止に努める、との文言が追加されたため、条例においても同様に追加することとしたものでございます。
都として考えてのことか
「防止につとめる」とは具体的には何か
原のり子 さまざまな法改正の中身があるなかで、ここを盛り込んでいくことについては、都としての考えというのが必要なんだと思うんです。法との整合性とおっしゃいますけれども、いまいいましたように法の修正のすべてが都の条例に反映されなければならないというものではありませんので、都としての考えというのをうかがっているわけです。具体的に、都民や事業者による感染の拡大の防止というのは、どういうことを指しているのでしょうか。
総務部長 今回の条例改正は、特措法の改正に伴う規定整備でございまして、国にも確認いたしましたところ、個人に対してはマスクの着用や咳エチケットなど、また事業者に対しましては種々の消毒液の設置や施設の消毒など、他者への感染の拡大を防止するための一般的に守られるべきルールを指しているものでございます。
努力しても感染することはある
どんな責任が生じるのか
原のり子 国に確認して、ということですけれども、都としてそれが必要だと判断したということだと思いますが、では、都民が努力していても感染してしまったり周りの人に感染を広げてしまったりというようなことがあった場合に、都民及び事業者にはどのような責任が生じるんですか。
総務部長 特措法の改正に伴う規定整備により追加いたしました感染の拡大防止につきましては、都民及び事業者の努力義務として規定するものでございまして、都民等に具体的な責任を問うものではございません。
無症状の感染もある 本人に責任はない
努力義務の規定は適切か
原のり子 努力義務だから都民等に具体的な責任を問うものではない、というご答弁です。努力義務ということについて、軽く扱っているというわけではないでしょうけれども、よく考えていく必要があると思っています。コロナの特徴は、気をつけていても感染する場合がある、ということで非常にやっかいなわけです。感染の拡大防止が努力義務だといっても、無症状の感染の場合もあります。気づけない場合もあるわけです。本人に責任はないんですね。それなのに、感染を広げるなということを規定するのが果たして適切といえるのかどうか。このあたりは検討されましたか。
総務部長 今回の条例改正は、あくまでも特措法の改正に伴う規定整備の範囲内でおこなわれるものでございます。今回、特措法の改正におきまして、新たに感染の拡大の防止に努めるという文言が追加されため、条例におきましても同様に追加する規定整備をおこなったものでございます。
努力しているのに責任を問われる事態も
救済する措置はあるのか
原のり子 具体的な罰則はないわけですけれども、責任は問われないということですが、たとえばですね、努力義務違反によって被害を受けた、とする第三者から損害賠償請求を受けたり、あるいは都が行政指導をおこなうということは、努力義務の場合でもありうるのではないか。たとえば飲食店などでクラスターが発生した、というような場合に、そのお店の責任が問われることもないとはいえない、というふうに思います。努力をしているのに責任を問われる事態になった、そういう方たち、そういう事業者を救済する措置というのはあるのか、ということを心配しています。
それでうかがいたいんですけれども、都民の責務として感染の拡大の防止を規定することに伴い、東京都はどのような責務を負うのでしょうか。
総務部長 条例第3条におきまして、「都は、新型コロナウイルス感染症対策を的確かつ迅速に実施し、及び都の区域において関係機関が実施する新型コロナウイルス感染症に係る措置を総合的に推進する責務を有する」と規定されておりまして、これまでも感染拡大の防止策を講じているところでございます。このため、今回の法改正をふまえた規定整備である条例改正において都が新たな責務を負うものではございません。
都はもっと重く考えるべきだ
自己責任を求める姿勢こそ改めよ
原のり子 いまも法改正をふまえた規定整備だからということでしたけれども、先ほどいったように都条例に何をどう盛り込むかというのは、都の考えであります。しかも、繰り返しになりますが、ぜんぶを盛り込んでいるわけではないのですから、きちんと理由というものが説明されるべきだと私は思っています。
私は、都民への努力義務を課すといことを重く考えていかなければいけないのではないか、と思って質問しています。これをとても心配するのは、これまでも努力義務についての議論が議会のなかで十分に議論する機会が得られなかった、ということもあったんですよね。ですから私は、都民のみなさんが知らないうちに努力義務が決まっているということのないようにしていかなければならないし、努力義務を課すのであればその理由が説明されるべきだと思って質問しています。
これまで東京都の、とくに知事の発信の仕方が、基本的にコロナについては、みなさん気をつけてください、というものが多くて、先ほどいったように気をつけていても感染する場合があるというのがコロナなので、自己責任では抑え込めないのが特徴なわけですよね。ですから、科学的な裏づけのある対策をどんどんとっていくことがカギですし、感染した人が悪いのではないというメッセージをもっと発信していかないといけない、と思います。
今回の改正は、たった一言に見えるけれども、非常に重い改正だと思います。感染予防に努力するということだけじゃなくて、それを広げるなということまで努力義務にするのは、みなさんが気をつけるようにしてくださいね、ということをさらに強調する内容になるのではないかと思います。
この間、都内でも自分が感染したことを責めて自ら命を絶つという方がいらっしゃいました。先日も、そういう方がいらっしゃって、本当にこういう悲劇を繰り返してはいけないと改めて思っていますけれども、条例でどんなに差別の禁止をうたっていても、自己責任を求める姿勢を改めなければ悲劇は繰り返されてしまうのではないか、ということを私はたいへん危惧しています。
これまで協力してきた飲食店も、もうこれ以上は限界だといっているお店も出てきているわけです。十分な補償がない状態だからお店を開かざるを得ないのではないかと検討しているお店もあるわけです。その問題を解決しないで努力義務違反といえるのか、という問題もあると思っています。十分な補償があって、みなさんが協力できる状況をつくっていくことこそ重要なんだと思います。
いま都がやるべきなのは、都民や事業者が安心してコロナ対策に協力できる状況つくることだと思います。そのことを最後に申し上げて質問を終わります。
【記事の説明】
★特措法は、緊急事態宣言中などに、時短営業などの要請に協力しない事業者に対し、罰則(過料を科す)などが適用できるようにする改悪がされました。小池知事は、飲食店への罰則適用について、法に基づいておこなっています。
一方、東京都コロナ条例は、都の独自の条例なので、特措法の改正をそのまま落とし込むわけではありません。
★第4条 都民及び事業者は、新型コロナウイルス感染症の予防に努めるとともに、新型コロナウイルス感染症対策に協力するよう努めなければならない。
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by hara-noriko | 2021-06-03 22:53 | 都議会 | Comments(0)