総務委員会で質問 多摩振興プランをより良いものに
2021年 06月 04日
「新しい多摩の振興プラン(仮称)」の素案
コロナ禍のもと、多摩地域の課題は
原のり子 「新しい多摩の振興プラン(仮称)」の素案について質問します。今回のプラン策定では、コロナ禍のもと、多摩地域にどういう課題があるのか、きちんと見据えていくことが重要だと思います。
最初に、コロナ禍で認識された多摩地域の課題はどういうものがあるのかうかがいます。
総務局多摩島しょ振興担当部長の答弁 コロナの拡大により、多摩地域においても、社会経済活動の制限、外出や移動の自粛、医療体制のひっ迫などによる大きな影響。コロナ禍を契機として、これまでの働き方や暮らし方などが変化し、移住やオフィス移転などを検討する動きもあり、より多くの方々に多摩に関心をもってもらえるよう新たな視点に立った取り組みを行う必要がある。
多摩格差 2000年には「おおむね解消」と
現実は、コロナ禍で医療体制がひっ迫
原のり子 医療体制のひっ迫、ということも述べられました。かつては、1975年に三多摩格差8課題を解消していくということが進められていましたが、プランによると2000年にはおおむね解消、としています。しかし、コロナ禍のもと、医療体制のひっ迫という状況もうきぼりになり、改めて検証していくことが求められていると思います。
同時に、小池知事は、もともとは「7つのゼロ」という課題をあげ、そのなかに多摩格差ゼロを位置付けていました。コロナ以前の段階でも、多摩格差を指摘していました。2期目の選挙では多摩格差ゼロという文言はありませんでしたが、取り下げたとの表明もありません。都の方針は、多摩格差は解消されているとの認識に対し、知事は多摩格差を解消していくという認識だったわけですが、新プランではどのように整理されていますか。
(小池知事の「7つのゼロ」=待機児童ゼロ、残業ゼロ、満員電車ゼロ、ペット殺処分ゼロ、介護離職ゼロ、都道電柱ゼロ、多摩格差ゼロ)
多摩島しょ振興担当部長の答弁 従来からのいわゆる多摩格差については、これまで、都と市町村が連携し、解決に努めた結果、かなりの部分で解消していると認識している。一方で、多摩地域は、人口減少、少子高齢化への対応、道路・交通インフラの整備、防災対策、産業振興など、地域それぞれの課題を抱える。地域の実情を的確に把握し、課題を一つひとつ丁寧に解決していくことで、多摩地域のさらなる発展を目指していくことが重要だ。新プラン(素案)は、こうした認識の下で策定した。
多摩格差は解消している、という都の認識
コロナ禍の現時点に立って検証したものか
原のり子 結局、従来の都の方針は基本的に変わっていないわけで、多摩格差ゼロとまでいった知事がこの問題を説明する責任があると私はおもいます。
今回の新プランでも、多摩格差は解消しているという前提になっています。「多摩格差8課題」について、コロナ禍の現時点に立って検証したのでしょうか。したとすればその内容を教えてください。
多摩島しょ振興担当部長の答弁 三多摩格差8課題についてかなりの部分で解消され、多摩の地域特性や課題を踏まえた振興策を講じていく方向に転換。そうした状況を踏まえるとともに、一口に多摩といっても、地勢、人口動向、土地利用、産業構造など、地域によって特性や課題はさまざまであることから、関連するデータについて、多摩地域全域と5つのエリアごとに把握・分析。
コロナ禍で多摩地域の保健所不足が浮き彫りに
格差解消どころか格差が広がっている
原のり子 改めて8課題とは、(1)義務教育施設(2)公共下水道(3)保健所(4)病院及び診療所(5)道路(6)図書館及び市民集会施設(7)国保料(税)(8)保育料です。とくに8課題を改めて検証はされていない。
ただコロナ禍で、多摩地域の保健所不足の問題は課題として浮き彫りになってきています。格差が解消されたどころか、現時点では広がっているといえるのではないか。現時点にたって検証し直す必要があると思います。「おおむね解消」ということをそのままにしてしまうと、今の時点での検証が本格的にならないのではないか、ということをとても心配しています。多摩の保健所は明らかに足りない。28市町村に5カ所しかない。これはもう多摩格差の一つといえると思いますが、認識はいかがですか。
多摩島しょ振興担当部長の答弁 住民に身近な保健サービスは市町村がおこない、より専門的なサービスは保健所が実施するという地域保健法の考え方に基づき、現在、二次保健医療圏に1カ所の体制となっており、広域的、専門的、技術的拠点として、地域の感染症対策の重要な役割を担う。今後、コロナ感染症の感染拡大から収束に至るまでの保健所のとりくみを検証したうえで、多摩地域の都保健所のあり方を検討していく。
新生児集中治療室の設置 基準に満たない
これも多摩格差ではないのか
原のり子 十分な検討をなるべく早くしていただきたい。実際の検討の中心は福祉保健局だと思いますが、多摩の振興、多摩の格差を解消していくということでは総務局のかかわりは非常に重要だと思いますので、連携してやっていただきたい。
8課題のうちの一つ、医療についても多摩の課題が顕著になっています。新生児集中治療室(NICU)も多摩地域は基準に満たない、これは多摩格差ではないでしょうか。見解をうかがいます。
多摩島しょ振興担当部長の答弁 NICUは、新生児科医師の常駐や、3床にひとりの看護師の配置とともに、生命維持装置の施設整備が必要。その整備にあたっては、搬送体制を整備しながら、限られた医療資源の集約化を図り、高度な医療を集中的に提供する体制を構築することが最も効果的。こうした考えに立って、NICUは、都内全域を一つの圏域として整備をすすめている。
清瀬市には出産できる産婦人科がない
清瀬小児病院の廃止が大きな原因に
原のり子 東京全体を一つの圏域でとらえて対応する、ということだけでいいのかということが実際には問われています。清瀬小児病院が廃止されるときに、NICU(新生児集中治療室)もなくなり、その後、清瀬では出産のできる産婦人科の病院がなくなりました。隣の東村山市もそうです。清瀬で産婦人科を経営されていた先生方にうかがうと、近くにNICUがあったので安心して個人の産婦人科でもできていたが難しくなったんです、と話す方もいらっしゃいます。
救急搬送された妊婦さん
時間をかけて23区の病院に
また、搬送体制を強化するといわれていますが、実際に妊婦さんがNICUのある病院に救急搬送されるときに、多摩地域では見つからず、23区内の病院に時間をかけて搬送されているケースも起きています。東京全体を一つの圏域で考える、ということだけでは十分ではなくて、多摩地域に本当に足りているかどうかをしっかり検証していく必要があるのではないでしょうか。
振興プラン素案のなかには、多摩北部医療センター改築に向けた検討ということで、地域のニーズを踏まえた質の高い医療を提供していく、と書かれています。北多摩北部の地域で足りていないNICUなどについて対応できるような十分な検討が必要だと思います。すでに、お医者さん方からも、基本構想をまとめるにあたって産科は必要ではないか、小児科の充実が必要だなどの声がたくさん出ています。多摩地域にこうした機能が必要だという視点を大事にしながら検討をすすめていただきたい。
格差は解消した、としているものについても
現状を明らかにして充実する視点で対応すべき
保健所と医療機関についてうかがったが、格差は解消したとしているものについても、8課題が現在どうなっているのかを明らかにしながら、充実していく視点をもっていただきたい。
都民の視点・都民の目線が非常に重要
多摩地域の課題を都民参加で検討してほしい
最後に質問します。新しいプランは、各分野の課題を取りまとめているのだと思うが、多摩地域の困難や課題にまっすぐ光があたっているのかどうか。都民の視点、都民の目線が非常に重要だと思います。現時点にたっての多摩地域の課題を都民参加で検討し、あらいだしていく機会も必要ではないでしょうか。
多摩島しょ振興担当部長の答弁 市町村へのアンケート調査などを実施するとともに、学識経験者やNPO団体からもヒヤリングをおこなった。その結果を踏まえ、地域の課題や特性をとりまとめた。素案について、パブリックコメントや市町村への意見照会などをおこない、9月を目途に新らしい多摩の振興プランを策定していく。
原のり子 パブコメをふまえて、議会でも議論されたうえでプランがまとめられるといちばんいいのかな、と思います。よりよい多摩の振興プランを練り上げていく点で、ぜひ検討していただきたい。
by hara-noriko | 2021-06-04 20:57 | 都議会 | Comments(0)