ヘイトスピーチ対策の陳情を審査
2021年 06月 11日
ヘイトスピーチ対策の実効性を高めることを求める陳情
5月31日の都議会総務委員会で請願・陳情の審査を行いました。パートナーシップ制度については先日報告しましたが、今日は、「人権尊重条例に基づくヘイトスピーチ対策に関する陳情」(都人権条例のアップデートを求める連絡会)について報告します。
この陳情は、ヘイトスピーチ対策の実効性を高めることを求めています。人権尊重条例では、国のヘイトスピーチ解消法にもとづき、ヘイトスピーチ根絶をめざすことが位置づけられています。そのために、有識者の審査会を設けて、都民からの情報提供を受けて審査し、ヘイトスピーチと認定したものを公表しています。これ自体は大事なとりくみです。しかし、ヘイトスピーチがくりかえされている状況のなかで、これまでのとりくみをふりかえり、さらに実効性を高めていくことは必要です。
陳情が求めている内容は
実行者の氏名及び団体名の公表など
陳情者が求めている項目は4つです。
(1)ヘイトスピーチの概要の公表手段を充実させる
(2)ヘイトスピーチの実行者の氏名及び団体名の公表
(3)都が公表したヘイトスピーチの概要を拡散しているネット上の動画の削除を、プロバイダーに要請する
(4)ヘイトスピーチを複数回公表された実行者に対して、段階的・具体的な禁止措置(勧告・命令・行政罰など)を講ずること
共産党は趣旨採択を主張
他の会派は反対で不採択に
採択の結果は、共産党は趣旨採択を主張しましたが、残念ながら他の会派は反対で不採択となりました。しかし、立憲民主党の中村議員も質疑をおこない、趣旨採択をしてもよい項目もあるとの発言もありました。共産党としては、4項目のうち3項目までは採択すべきと考えていますが、罰則については専門家等も入った検討委員会などで、きちんと検討する必要があることから趣旨採択としました。
ヘイトスピーチ根絶へ
一石を投じた陳情に学んで
ヘイトスピーチ解消法が施行されて5年、都の人権尊重条例が全面施行されて2年すぎました。ヘイトスピーチ根絶のため、一石を投じてくれた陳情に学び、取り組みを強めていきたいと思います。
「人権尊重条例に基づくヘイトスピーチ対策に関する陳情」を受けて、私は次のような質問をしました。要旨を紹介します。
原のり子 本陳情は、ヘイトスピーチ解消に向けて、人権尊重条例の実効性を高めていくことを求めています。これまで、ヘイトスピーチの概要の公表については、何件公表され、都民からの情報提供は何件あったのか、うかがいます。
総務局人権部長の答弁 人権尊重条例が全面施行された平成31年(2019年)4月から令和3年(2021年)3月までに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動として、条例に基づき表現活動の概要を公表した件数は12件、都民からの申出は127件。
原のり子 公表された内容をみると、本当に口にできないようなひどい言葉が並んでいます。これが可視化されたことは非常に重要だと思います。しかし、圧倒的に公表に至らないもののほうが多いです。なぜ、公表に至らなかったのか、ということについても理由などをお知らせすべきではないでしょうか。そうすることによって、ヘイトスピーチの啓発が進むのではないかと考えますがいかがですか。
人権部長の答弁 表現活動が不当な差別的言動に該当すると認めるときは、人権尊重条例第12条の規定に基づき、当該表現活動の概要等を公表している。
原のり子 つまり、12条の規定にあたっていないものは公表できない、ということなんだと思いますが、どうして規定にあたらないのか、ということを説明する必要があると思います。これまで都として、ヘイトスピーチを根絶していくための意識啓発、ならびに教育はどのようなことをやってきていますか。
人権部長の答弁 都は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消を図るため、各種の冊子やチラシの発行、動画やコミックエッセイの公開、人権プラザでの展示や講演のほか、令和2年度(2020年度)においては、12月の人権週間にあわせて都営地下鉄の駅に啓発ポスターを貼るなど、啓発・教育を推進している。
原のり子 条例の第1条および10条では、啓発と教育をおこなっていくことが位置付けられています。ヘイトスピーチ根絶にはやはり教育が欠かせません。今起きている事態について、対策をとることはもちろんですが、小さいときからヘイトスピーチがなぜだめなのか、きちんと学んでいくことが必要です。
同時に、高校無償化や幼児教育無償化から朝鮮学校などを除外する、東京都も朝鮮学校の補助金をカットする、というようなことを政治がやることにより、差別を助長しかねない、ということを指摘します。今もなお、チマチョゴリを来て通学できず、学校で着替えをせざるを得ない状況になってずいぶん時間が経過しています。朝鮮学校の子どもたちが差別を受けていること、また、ネットなどでもヘイトスピーチにあっていることについて看過できません。ネットで拡散されている、ヘイトスピーチの対策強化も強めていくことを求めておきます。
また、第1回定例会では、全会一致でこども基本条例が可決され、子どもたちの権利を守ることについて東京都でもより明確になったなかで、どの子どもの人権も守ることが都としても問われていることを指摘します。
これまでのとりくみをふりかえって、検討が求められているのが、ヘイトスピーチを繰り返している団体についてです。その団体名を公表する必要があるのではないかと考えますが、いかがですか。
人権部長の答弁 人権尊重条例第12条の規定は、発言者に対する制裁を行うことではなく、概要等の公表により、不当な差別的言動の実態を広く都民に伝え、いわゆるヘイトスピーチは許されない旨、啓発していくことを目的としている。
引き続き、条例に基づく附属機関である審査会の意見をうかがいながら、効果的な公表の仕方を工夫し、都民に対して発信していく。
原のり子 12条は発言者の制裁が目的ではない、との答弁で、それはそうですが、ただ12条では、表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずるとともに、当該表現活動の概要等を公表する、とあります。表現の内容の拡散防止するために必要な措置は概要の公表だけではなく、絶えず検討されるべきです。
また、効果的な公表の仕方を工夫する、との答弁はとても重要です。
こうしたことも含め、これまでのとりくみを検証し、今後の在り方を検討すべきと思いますがいかがですか。そのためには、検証する委員会等を設置すべきと考えますがいかがですか。
人権部長の答弁 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消のため、条例の施行に関する重要な事項について調査審議するため、附属機関として審査会を設けており、引き続き、必要に応じ意見等を求めていく。
原のり子 審査会は、知事の附属機関として設置されており、ご答弁にもあったように、必要に応じて意見を求めていくことができます。共産党都議団としては、人権条例の審議の際、修正案で、3年後に条例の執行状況の検証を行うことを規定することを求めました。それは、通りませんでしたが、改めて今まで実施してきての検証が必要になっていると思います。陳情の4項目目についても、審査会に意見を聞きつつ、きちんと検討の場をつくって議論していくことが必要だと指摘して、質問を終わります。
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by hara-noriko | 2021-06-11 23:35 | 都議会 | Comments(0)