デジタル化 自治体のあり方が問われている   

 2022年都議会第1会定例会(予算議会)。総務委員会が3月14日から17日までの4日間、開かれました。私は人事委員会、政策企画局、デジタルサービス局、総務局の予算にかかわって質問しました。その内容を順次、お知らせしています。最終回の第6回は、デジタルサービス局に対する質問(3月15日)です。マイナンバーの利用にかかわる問題や、デジタル化による情報漏えい・プライバシー漏えいなどの問題を取り上げました。

【私のコメント】


 マイナンバーの適用事務を拡大していくことは、情報漏洩や個人情報保護について都民の不安も大きい中、慎重にすべきです。今回の案件では、マイナンバーによらない手続きもできることを確認しましたが、これ以上マイナンバーの利用拡大を推進すべきではないと考え、この質疑ののち、採決では反対しました。
 また、「デジタルサービス開発・運用指針」についても質疑を行いました。デジタルの力を都民の暮らしや福祉・教育に生かしていくことは大事です。しかし、それは、デジタル化先にありきではなく、都民にとってどういう方法が良いのか、ということが大前提になければいけないと思います。まさに、自治体としてのあり方が問われています。そのことを質疑しました。

都立産業技術高等専門学校の奨学金支給など
マイナンバー利用の事務を追加する理由は?


 原のり子 まず、第46号議案について質問いたします。
 この議案は、マイナンバーを利用することができる事務の追加をするものです。生活に困窮する外国人に対して行われる生活保護法による保護に準じた措置の実施に関して、また、都立産業技術高等専門学校における奨学金支給に関する事務においては、都の執行機関内において、特定個人情報を共有できるようにするものです。まず、その理由をうかがいます。

 デジタルサービス局戦略部長 法の趣旨にもとづき、都民の利便性向上、行政の効率的な運営を目的に利用事務及び情報連携業務の追加を行うためのものでございます。

従来の手続きは継続される
現場に周知徹底を


 原のり子 都立産業技術高等専門学校の奨学金支給に関しての手続きについては、従来の手続きとマイナンバーを利用しての手続きとの違いはどういうものでしようか。

 戦略部長 東京都立産業技術高等専門学校における奨学のための給付金などの支給申請者がマイナンバーを提出することで、生活保護受給証明書を取得する必要がなくなるというものでございます。これにより、申請者の利便性の向上と都の事務の効率化に資することとなります。

 原のり子 それでは、今回の条例改正によって、マイナンバーを利用することができるわけですが、従来の手続は継続されるのかどうか確認します。

 戦略部長 従来の手続でも申請は可能とする予定でございます。

 原のり子 マイナンバーによらない従来の手続も継続するということは確認しました。現場に周知徹底を丁寧にしていただいて、混乱や戸惑いが起きないように、十分な配慮を求めておきたいと思います。

後を絶たない情報漏えい事故
マイナンバー活用による情報連携は慎重に


 原のり子 共産党としては、一人ひとりのプライバシーを危険にさらすことになるマイナンバー制度自体には反対していますけれども、今回資料も出していただきましたが、都は独自に情報連携の項目をこの間拡大してきています。情報漏えいはヒューマンエラー、悪意からの流出など、完全に防ぐことはできません。そして、情報は集積され、長い期間取り扱うことで、流出の危険性というのはさらに高まります。
 2021年に、上場企業とその子会社による個人情報漏えい、紛失事故、これは過去最多の約575万人分になったというニュースが大きく報道されていましたし、また、総務省では、個人情報の保護に関する実態調査で、これ毎年行われていますけれども、国の行政機関や独立行政法人の漏えい事実、漏えい事案を毎年調査をしていますけれども、これもそれぞれ1000件を大きく超えているという状況になっています。
 清報漏えいの事案が後を絶たないことからも、このマイナンバーを活用して情報を連携させていくということについては、慎重であるべきではないかということを指摘しておきたいと思います。

デジタルサービス開発・運用の行動指針案
都民を顧客としていることに違和感


 原のり子 次に、報告事項について質問いたします。
 行動指針、東京都デジタルサービスの開発、運用に係る行動指針案は、デジタルサービスの開発、運用に携わるすべての職員等が遵守すべき基本的な価値観等を示すものとして策定、とされていますが、都民を顧客としていることにはとても違和感を持ちます。なぜ都民ではなく顧客なのか。これは今ほどの質疑でございましたので、重複は避けたいと思います。
 ご答弁の中で、行動指針では、都が提供するデジタルサービスで、利用者視点から申請画面等の操作生の向上等を進めて、利用者である都民がより使いやすいものにしていくため、顧客視点でデザインしようと、行動規範の一つとして規定をしたものだという趣旨のご答弁がありました。私はそれを聞いて、それでもやっぱり顧客としてわざわざ置き換える必要があるのかなというふうに、率直にいって思っています。

住民福祉の向上に取り組むことが自治体の本旨
個人情報の保護についてどう考えているのか


 原のり子 そもそも住民福祉の向上に取り組むことが自治体の本旨であって、公務員は全体の奉仕者です。わざわざ顧客と置き換えなければ、住民本位の仕事ができないということではないわけです。むしろ公務員として、デジタルに関わるということを明確にすることこそ大事ではないかと私は思います。
 それで、一つうかがいたいんですけれども、今回この行動規範のなかで、データを最大限活用するというふうに書かれていますが、個人情報の保護についてはどのように考えていますか。

 戦略部長 国においては情報セキュリティー・個人情報保護などのデータに関するガバナンスに関する包括的データ戦略を策定し、情報流通の信頼性の確保を進めております。これを受けまして、都の行動指針におけるテータ利活用に当たりましても、この国の戦略を参考にし、サイバーセキュリティーの確保や個人情報の保護に配慮しつつ、利活用を進めてまいります。

情報漏えいやプライバシー漏えいの不安
都の職員はどのように取り組むのか


 原のり子 セキュリティーの確保や個人情報の保護に配慮しつつということで、本当にここは重要なところだと思っています。都民のなかに、情報漏えいやプライバシー漏えいの不安があることがデジタル化を進めていく障害になっているのではないかというふうに思うんです。
 行動指針のなかでは、こうしたことについて職員はどのように取り組むと位置づけられていますか。

 戦略部長 デジタルサービスの開発、運用に携わるすべての職員が遵守すべき行動規範のなかで、データ利活用に当たりましては、サイバーセキュリティーの確保や個人清報の保護に配慮しつつ進めていくというふうに規定してございます。

個人情報の漏えいに高い不安が
都民の不安にどう応えていくのか


 原のり子 2020年版の『情報通信白書』、このなかでも、インターネットを利用していて、個人情報の漏えいについて74.2%が不安を感じると答えています。また、デジタル化が進まない理由のトップが情報セキュリティーやプライバシー漏えいへの不安がある。これが52.2%ということです。こうした都民の不安に応えていくということが必要になっていると思います。
 また、今回、誰一人取り残さないようにしようということも強調されていますけれども、デジタル機器を有しない人などへの配慮ということだけではなくて、デジタル以外の対応も必要であったり、また重要である、そういう場合も少なくないと私は考えています。
 これについてはどのような見解を持っていらっしゃいますか。また、こうした課題にどのように対応していくか、うかがいます。

 戦略部長 行動指針では、誰一人取り残されないようにするためには、サービスデザイン思考を徹底していくことが必要であるということを明記したところでございます。
 このため、デジタル以外のサポートなども含めたサービス全体の設計を利用者の視点に基づき実施することで、質の高いデジタルサービスの提供に努めてまいります。

デジタル以外の対応も大事
さまざまな手法をしっかり議論してほしい


 原のり子 先日、予算特別委員会でも質問しましたけれども、例えばパートナーシップ制度実施に伴っての手続は、基本的にオンライン一択ということに、素案で出されているんですね。私は本当にそれでいいのか。制度の本質に立てば、さまざまな選択ができるようにすることが大事ではないか、ということで質問をしたんですけれども、単にデジタル機器を有しない人への配慮をしようということにとどまらない、積極的な意味で、デジタル以外の対応も大事だというそういうものというのは、実はたくさんあるというふうに思っているんですね。そういうことを各局それぞれ、本当に横の連携を強めて議論をして、都民のみなさんに、本当に大事な情報をちゃんと提供していくということがやられるべきだというふうに思っています。そうしたことが十分配慮されるべきだというふうに思います。
 今、誰一人取り残されないようにしようという基本的な考え方は、デジタル機器を持っていない方とか、苦手な方への配慮とか、そういう観点が強いと思いますけれども、私はデジタル以外の、今いったようにさまざま手法、それも必要な場合もあるということをきちんと議論していくことが必要だということを提起しておきたいというふうに思います。

デジタル化 自治体としてのあり方が問われている
身分併有型特定任期付職員制度は立ち止まって考えるべきこと

 原のり子 それで、最後に意見だけ述べておきたいと思うんですけれども、デジタルの力が都民の暮らしや福祉、教育に生かされていくためには、自治体としてのあり方が問われているというふうに私は思っているんです。職員のみなさんが公務員としての姿勢をもって取り組んでいくということも本当に重要です。
 今回デジタル人材確保・育成基本方針のなかで、身分併有型特定任期付職員制度を創設するということが示されていました。これについては大変懸念をもっています。民間企業を退職しないで登用を可能とするという仕組みですよね。
 私は、これについてはというか、昨年の事務事業質疑で取り上げているんですけれども、デジタルシフト推進担当課長のあり方についてそのとき質疑をし、そこでいったんですが、国は今、デジタル庁の職員の600人中200人が民間人材、と。しかも、企業に在籍したままの兼業を認められているということで、これは非常に問題ではないかというふうに、私はそのとき意見で述べています。
 ただ、東京都は、デジタルシフト推進担当課長が兼業にはなっていない。なっていないけれども、あくまでも短期間の在籍だというなかで、本当に研修を強化もして、公務員としてお仕事をしていただく、そういう意識をもってやっていただくということについて意見を述べています。今ICT(情報通信技術)職の採用もスタートされたわけだから、このデジタルシフト推進担当課長のあり方も抜本的に見直しが必要ではないか、ということを提起したんですね。
 ところが、今回のデジタル人材の確保策の身分併有型特定任期付職員制度というのは、もっとさらに踏み込んだものを出してきているんだということだと思うんです。ここには、公務の公正性、公平生を担保するための基準を設け、適切に制度を運用と書かれていますけれども、これはこれからなんだというふうに思うんですね。
 私は、なので今日は質問はしないんですけれども、やっぱりこの問題は拙速に進めるべきではないし、立ち止まってよくよく検討される必要があるのではないかということを意見として述べておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。

【2022年 都議会第1回定例会での質問】
《予算特別委員会》
(1)都は公立保育園をしっかり支えてほしい
(2)パートナーシップ制度、よりよいものに
(3)障害者の余暇支援・居場所支援の充実を
(4)子ども医療費無料化の多摩格差解消
《総務委員会》
(1)パートナーシップ制度について
(2)新型コロナウイルス対策について
(3)市町村総合交付金について
(4)障害者の都職員採用試験について
(5)「未来の東京戦略」 バージョンアップというのなら
(6)デジタル化 自治体のあり方が問われている

カントウタンポポ(東京都清瀬市)
デジタル化 自治体のあり方が問われている_b0190576_21453256.jpg
デジタル化 自治体のあり方が問われている_b0190576_21453588.jpg





by hara-noriko | 2022-04-12 21:45 | 都議会 | Comments(0)

<< 3つのテーマで文書質問 202... 総務委員会質問(5)「未来の東... >>