事務事業質疑から(3)東京のデジタル化推進をめぐって   

デジタルサービス局に質問
デジタル人材の確保、育成


 11月は都議会で事務事業質疑がおこなわれました。都の各局がおこなう仕事の内容やすすめ方について、毎年行われているものです。私が所属する総務委員会は、政策企画局、子供政策連携室、総務局、デジタルサービス局、人事委員会、選挙管理委員会、監査事務局を所管しています。私は、政策企画局、監査事務局、デジタルサービス局、総務局に対して質問しました。その内容を順次紹介しています。3回目は、デジタルサービス局です。デジタル人材の確保や育成など、東京のデジタル化推進をめぐる問題を取り上げました。

【原のり子のコメント】

 都民のくらしにプラスになるデジタル化は必要です。しかし、都がすすめている方向は、自治体の在り方としてどうなのか、大きな疑問を感じます。結局、企業が利する構図になっているのではないか? 都民全体のために働く公務員としての大事な役割が後退してしまわないか? そういう問題意識で質問を重ねています。

【用語解説】

 ICT職=Information and Communication Technologyの略語で、情報通信技術を担う職員といった意味。東京都が正規職員として採用している。
 DX=Digital Transformationの略語で、データとデジタル技術を活用した業務や組織の変革といった意味。
 デジタルシフト=アナログからデジタルへの移行をすすめること。
 特定任期付職員=企業等を退職してから都の職員(任期付き、非常勤)になる
 身分併有型任期付職員=企業に在籍したまま都の職員(任期付き、非常勤)になる
 GovTech東京=ガブテック東京。都が打ち出した構想。東京全体のDXを効果的に進めるため、行政と民間が共同して斬新で革新的なサービスを生み出す新たなプラットフォームとして「GovTech東京」を設立する、としています。

ICT職の採用
どういう配置で、どういう仕事内容なのか


 原のり子 まず最初に、デジタル人材の確保、育成に関して、うかがいます。
 都は、正規職員としてICT職の採用を行っています。現在、他職種から転職した職員を含め既に95人とのことです。どういう配置で、どういう仕事内容なのか、うかがいます。

 デジタルサービス局戦略部長 ICT職は、本年11月1日時点で、デジタルサービス局に55名、デジタルサービス局以外の各局に40名の職員が配置されております。
 これらの職員は、各局や区市町村のDX推進に関する技術的支援、全庁システム基盤や各局業務システムの運用保守等、デジタル分野の専門性を生かせる業務に従事しております。

特定任期付職員
どう配置され、どういう仕事なのか


 原のり子 自治体としてDX化に対応していくことで、都民の暮らしを応援していくということは必要なことです。その中心は、このICT職の方々が担っていくのだと思いますけれども、一方で特定任期付職員も24人と増えています。
 デジタルシフト推進担当課長のほか、部長級の職員も在籍しているとのことですが、どう配置され、どういう仕事をされているのか、改めてうかがいます。

 戦略部長 特定任期付職員であるデジタルシフト推進担当課長および部長は、デジタルサービス局戦略部に配置されており、デジタル分野における高度な専門性と豊富な経験を活用して、都政におけるデジタルシフトへの実現に向けた技術面からの各種企画調整や、各局DXの取り組みへの技術的な観点からの支援などに従事しております。

 原のり子 すみません、ちょっと確認させてもらいたいんですけれども。先ほど他の方の質問への答弁の中では、デジタルシフト推進担当課長および部長などが予算関係も取り扱う旨の話があったかに聞こえたんですけれども、以前質問したとき、デジタル関連経費などの把握や分析にはかかわらないというお話があったと思うんです。変わったんでしようか。それとも、私がちょっと聞き間違っていたら教えてください。

 戦略部長 以前答弁させていただいたとおりでございます。

 原のり子 わかりました。それは確認しました。

特定任期付職員は平均何年在職するのか
最長2年で、5年まで年単位で更新が可能


 原のり子 それでは、特定任期付職員は平均何年在職するんでしようか。

 戦略部長 特定任期付職員の任期は、採用時は最長2年であり、5年まで年単位で更新することが可能でございます。

 原のり子 5年まで更新するということが可能だということですが、どういう場合に更新することがあるのか、更新する場合の要件、条件などはあるのでしようか。

 戦略部長 当該職の業務の必要性があり、本人の勤務成績が良好な場合に、関係部署との調整を行った上で、任期更新を行うものでございます。

特定任期付職員
自治体職員としてどんな研修をしているのか

 原のり子 わかりました。
 特定任期付職員の方は、自治体職員として公の仕事を担うということです。このことについて、以前も聞いていますけれども、現時点ではどのような研修をしているのか、うかがいます。

 戦略部長 当局におきましては、特定任期付職員の採用時に、一般職員と同様、公務員として必要な基本的な研修を行うとともに、局独自の取り組みとして、コンプライアンスについての研修を実施しております。
 その研修では、単に制度の説明だけではなく、具体的な事例を示しながら、注意すべき点などを強調するなど、理解を深めるための工夫を行っております。さらに、採用後におきましても、定期的に研修を実施することで、公務員としての認識の定着を図っているところでございます。

特定任期付職員の研修 基本は1年に1回と聞いている
仕事の重さに比べて研修が十分といえるのか


 原のり子 研修等も行っているということです。ただ、定期的にということですけれども、基本は1年に1回だと聞いています。
 この特定任期付職員の方、基本は2年、最長でも5年という非常勤の職員ですよね。それで、公務員としての仕事を担う、と。しかも、課長や部長職を担うということが、非常に重みがあると思っているんですね。ですから、その重さに比べて研修が十分といえるのかどうかということは、私は再度よく検討していただきたいと思うんです。
 もともと企業等で仕事をしてきている方たちでもありますので、公務員としての仕事を本当に理解していただくということがとても重要なんだと思います。

特定任期付職員が退職したあと
都の仕事に直接かかわる仕事はしないなどの制限は?


 原のり子 この方々が都庁を退職した後、企業などに就職した場合、東京都の入札などに直接かかわるような仕事をしないなどの制限はありますか。

 戦略部長 東京都を退職し、民間企業等に再就職した職員は、地方公務員法および東京都職員の退職管理に関する条例により、退職後2年間は、退職前5年間の職務に関する働きかけをすることが禁止されております。

区市町村へも支援に行く
これとのかかわりについても制限されるか?


 原のり子 禁止されているということです。
 それで、もう一つ確認なんですけれども、この議論の中でちょっとうかがいたいと思ったんですが、デジタルシフト推進課長の方は、区市町村への支援にも行く場合があるわけですよね。そういう区市町村への支援にも行っているということを考えると、退職した後、区市町村とのかかわりについても制限はされますか。

 戦略部長 いまご答弁申し上げたとおり、退職後2年間は、退職前5年間の職務に関する働きかけをすることが禁止されております。

 原のり子 主語に区市町村という言葉はありませんでしたけれども、東京都というだけじゃなく、区市町村にも行って仕事をしているということを考えれば、そちらも制限されるということで理解をしました。もし違っていたらご指摘ください。

特定任期付職員
あと何人必要だと考えているのか


 原のり子 特定任期付職員はこういうお仕事をされて、この職員の方々をあと何人必要だというふうに考えていらっしゃいますか。

 戦略部長 本年9月に発表いたしました東京のDX推進強化に向けた新たな展開で示しているとおり、急増していくデジタルサービスをスピード感をもって、質、量ともに強化していく必要があることから、今後、関係部署との調整を図りながら、デジタル人材のさらなる確保をすすめてまいります。

どんどん増やしていく、という話ばかり
どのぐらい必要だという話がほとんどない


 原のり子 この件は以前にも質問しているんですけれども、どんどん増やしていくという話ばかりで、どのぐらい必要だという話がほとんどないんですよね。それで、天井知らずなのかなという、そういう人事はあるのか、と私は思っているんです。デジタルといえば、どんどん人を増やし、お金もつけるというふうに見えてしまうんですね。現時点でも百人近く採用している正規職員、ICT職を中心にして、どういう配置をしていくのかという構想が見えない。私はここをちゃんと示すべきだと思っています。

身分併有型任期付職員
出向元企業から給与補填を受けるのか


 原のり子 さらに心配なのは、デジタルサービス局が募集している身分併有型任期付職員(企業に在籍したまま都の職員になる人)です。現時点ではいないということだと思いますが、出向元企業から給与補填を受ける場合も想定していますか。

 戦略部長 民間企業の従業員の身分を併有する任期付職員に適用する公務の公正性の確保に関する基準におきまして、任期中における賃金の支払い、その他の給付を行わないよう、身分併有元の企業との間で取り決めることとしております。

 原のり子 東京都ではそれはないんだということですね。出向元企業から給与補填を受けるおそれは想定していないということだと思います。

企業との取り決めに法的拘束力はあるのか
ちょっと疑問が残る


 原のり子 一つうかがいたいんですけれども、企業との取り決め、企業との間で取り決めるという話でしたけど、企業との取り決めは、法的な拘束力というのは何かあるんでしようか。

 戦略部長 先ほど申し上げましたとおり、民間企業等の従業員の身分を併有する任期付職員に適用する公務員の公正性の確保に関する基準におきまして、身分併有元企業との間で取り決めるものでございます。

 原のり子 東京都がつくったこの基準においてということなんだと思うんですけれども、そこはちょっと、法的な拘束力という点ではどうなのかというのは、ちょっと疑問が残りますが、また今後聞いていきたいと思います。

身分併有元の企業からの給与補填
国会の質疑でも問題になっている


 原のり子 とても心配しているのは、東京都では基本的には、身分併有元の企業から給与補填を受けるということはないということなんですけれども、国では、国会の質疑でちょっと問題になっているというふうに認識しています。
 出向元企業からの給与補填を受けている職員はどのぐらいいますかという質問に対して、分からないというふうに国はいっているんですね。国のデジタル庁の職員は576人で、民間出身者194人、そのうち非常勤184人なんですけれども、このうち、どのぐらいそういう給与補填を受けている人がいるかって聞かれたときに、答弁できないという状況になっているんですね。
 私は、こういう状況も見ると、東京都でこの基準で決めていますというふうにいっても、この企業との取り決めという点でどうなのか、きちんとやられていくのかなという心配をしています。ぜひその点については、国の方も確認していただいたらいいかなというふうに思います。

「GovTech東京」と身分併有型任期付職員の採用
これはちょっと矛盾していないか


 原のり子 出向元企業から給与補填は受けるということは想定していないということなんですけど、そうだとすると、さらにまたちょっと疑問もあるんですね。疑問も出てくる。
 それは何でかというと、処遇をよくしないと高度人材が集まらないという発想があって、「GovTech東京」が構想されていますよね。それをやる、と。それでも、とくに給与のメリットはないけれど、身分併有型任期付の職員採用もすすめるという、これは矛盾していないでしようか。いかがでしようか。

 戦略部長 急増するデジタルサービスをスピード感をもって、質、量ともに強化していくため、今後もさまざまな手段を活用し、優秀な人材の獲得に向けて適宜適切に対応してまいります。

 原のり子 「GovTech東京」から区市町村への支援に行くこともあるというお話も出ていますよね。都庁とも人材の交流もある、と。しかし、都庁でDX化に向けて仕事をする職員と「GovTech東京」の職員では、給与は異なることになるんですよね。高度人材を集めたいから「GovTech東京」をつくるわけですから、私はちょっと矛盾を感じるんですが…。

「GovTech東京」
自治体がやることなのか


 原のり子 「GovTech東京」には、東京都が100%出資することになるのではないかと思いますが、いかがですか。

 デジタルサービス局調整担当部長 来年中の設立をめざす「GovTech東京」でございますけども、関係各局と調整の上、所要経費を来年度当初予算案に盛り込んでいくこととして考えております。

 原のり子 これから要求していく、と。当初予算に盛り込んでいくんだということですね。私は、自治体として「GovTech東京」を設立させてそこにお金を出して、都庁で働いている人とは、デジタル関係の職員でも、そこで給与では違いが出てくる、差がついていくということで、自治体がやることなのかな、と疑問を率直にいって感じているんです。

区市町村との共同調達
どのような検討をすすめているのか


 原のり子 それともう一つ、いま心配なのは、共同調達についてです。どのような検討をすすめていますか。

 調整担当部長 区市町村との共同で電子申請システムの構築、運営等を行ってきました東京電子自治体共同運営協議会、このスキームを発展、拡充させまして、ソフトウエア等の共同調達などの機能を新たに設けていくこととしてございます。
 現在、本協議会において、区市町村とともに検討を開始してございまして、今後、具体化を図ってまいります。

自治体に追加予算や事業変更などを迫る
そんなことはあってはならない


 原のり子 検討を開始しているということで、「GovTech東京」をつくっていくという前提の下に検討をすすめられているということだと思うんです。現在の東京電子自治体共同運営協議会では、共同調達はできないわけですよね。それをやれるようにしていこうということです。
 それで、需要や予算規模、必要な事業など、それぞれの自治体によって違いがあります。そういう中で共同調達によって自治体に追加予算や事業変更などを迫るようなことがあっては、絶対にならないというふうに厳しく指摘したいと思いますし、また、共同調達によって特定の企業に受注が偏るとか、あるいは独占するなどということが懸念されると私は思っています。そうしたこともあってはならないということは、強く指摘しておきたいと思います。

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初冬点描 朝露
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by hara-noriko | 2022-12-04 19:26 | 都議会 | Comments(0)

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