事務事業質疑(6)性暴力被害者の二次被害 なくすための啓発を   

総務局に質問
性暴力被害者が二次被害にあわないために


 11月は都議会で事務事業質疑がおこなわれました。都の各局がおこなう仕事の内容やすすめ方について、毎年行われているものです。私が所属する総務委員会は、政策企画局、子供政策連携室、総務局、デジタルサービス局、人事委員会、選挙管理委員会、監査事務局を所管しています。私は、政策企画局、監査事務局、デジタルサービス局、総務局に対して質問しました。その内容を順次紹介しています。6回目も、総務局です。性暴力被害者の二次被害の実情を紹介しながら、被害者本人が二次被害にあわないために都として取り組むべきことなどを質問しました。

【原のり子のコメント】

 以前、都の犯罪被害者支援条例の制定、また支援計画策定にあたって、二次被害についてきちんと位置付けなければと、実際に被害にあった方々のお話を聞いてとりくみました。
 都の条例及および支援計画で、「二次的被害」という形で位置付けられたことは、そうした方々の声の力です。同時に、今、感じるのは、二次被害によって苦しんでいる人が本当に多いこと、そして加害の側がその深刻さに気付いていないことがとても多いことです。二次被害の深刻さと、誰もが加害側になりうるということをもっと鮮明にし、共有する必要があると強く思いました。
 私が都議になってからずっとこの問題を投げかけてくれている方がいます。その方にも相談し、一般論ではなく、事実をもとに質問することにしました。ですので、被害にあった方の場合、表現やことばが自分の体験と重なって苦しくなる場合もあるかもしれません。心配な方は、読むことを無理しないでいただければと思います。
 そして、被害から10年近くたつ今も苦しい思いがあるなか、質問することを同意してくださった方に感謝するとともに、その思いに応えなければと改めて思っています。

第4期犯罪被害者等支援計画
見直しや支援強化が必要ではないか


 原のり子 犯罪被害者支援について質問します。
 第4期犯罪被害者等支援計画は、2021年度から2025年度までの5カ年間となっています。(計画の)進行管理に当たっては、学識経験者および犯罪被害者等で構成する犯罪被害者等支援施策検討委員会を設置して、犯罪被害者等支援計画の進行管理に関することについて毎年度専門的な見地から意見を聴取している、と聞いています。
 その上でうかがいたいんですけれども、第4期計画には、「計画期間内であっても、国の施策の展開、犯罪被害者等のニーズ、犯罪被害者等を取り巻く状況の変化などに合わせ、必要な見直しを行いながら支援を進めていきます」と書かれています。
 困難女性支援新法(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)やAV出演被害防止・救済法(性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及びび出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律)など新しい法律もできたなかで、見直し・支援強化が必要ではないかと思いますが、まず見解をうかがいます。

 総務局人権部長 本年6月に施行されたアダルトビデオ出演被害防止救済法では、地方公共団体に対し相談体制等の整備や社会福祉施策等との連携による適切な支援の提供を求めており、都ではすでに性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センターや、同センターに配置したコーディネーターが区市町村等の関係機関と連携しながら、こうした取り組みを実施しております。
 令和6年(2024年)4月から施行される困難女性支援法につきましては、現在、国において基本方針の検討中であり、今後関係局と連携しながら対応してまいります。
 ひきつづき、第4期犯罪被害者等支援計画にもとづき、支援センターにおける支援の強化に努めてまいります。

「支援の強化に努めていく」と都が答弁
さらにすすめてほしい、と要望


 原のり子 5カ年のなかで中間の見直しというのをしっかりやってもいいかな、という意見をもっていますけれども、いまご答弁のなかで第4期支援計画にもとづいて支援の強化に努めていく、というお話がありました。これはぜひ、さらにすすめていただきたいと思います。

いま大事なのは、実態の把握
二次被害を詳しく調査することが必要ではないか

 原のり子 いま大事なのは、実態をいかに把握するかだと思います。「犯罪被害者等の実態に関する調査」が2020年1月に実施されて、その結果を踏まえて、第4期の計画で拡充された取り組みもいくつもあると認識しています。
 今後の実態調査において力を入れていただきたいことについてうかがいたいんですね。たとえば痴漢被害なども位置づけられるようになって、性暴力被害の調査、これはより充実させていただきたい、と求めておきたいんですが、同時に、二次的被害について詳しく調査をすることが必要ではないか、といま思っているんです。

二次被害とはどういうものか
都はどう定義しているのか

 原のり子 そこでうかがいたいんですけれども、改めて二次的被害とはどういうものだと定義しているか、お聞きいたします。

 人権部長 令和元年度(2019年度)に実施した実態調査では、二次的被害についても把握する趣旨で質問項目を設定しており、犯罪被害者等が他人の言動や態度により傷つけられたことがある状況についての回答として、加害者側の対応だけでなく、友人や知人の言動やインターネットでの書き込み等があげられました。
 都はこうした調査結果等を踏まえ、犯罪被害者等支援条例において、周囲の者等による偏見や無理解による言動、配慮に欠ける言動のほか、インターネットを通じて行われる誹謗中傷や報道機関による過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛等の被害を二次的被害として定義しております。
 (東京都犯罪被害者等支援条例第2条の4 「二次的被害 犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の者や犯罪被害者等に接する行政機関の職員その他関係者による偏見に基づいた、又は理解若しくは配慮に欠ける言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛、身体の不調、名誉の毀損、私生活の平穏の侵害、経済的な損失その他の被害をいう」)

20代の女性が10代で受けた性暴力
自己嫌悪にいまも苦しむ

 原のり子 とりわけ、性暴力を受けて二次被害を受けるということについては、本当に改めて調査もしながら、そういうことを起こさないような啓発が求められていると思っているんですが、具体的な事例でうかがいたいと思います。
 現在、20代の女性の方ですが、10代後半に性暴力被害にあっています。信頼できる大人たちがたくさんいるグループのなかで、もっとも相談にのってくれる人が加害者となりました。被害にあっている間、そのことを彼女はこういうふうに言っています。「息ができなかった。何が起きているのか理解できなかった。怖くない?と聞かれてうなずいた。本当は怖かったけど、拒否すれば殴られるんじゃないかと怖かった。いい?と聞かれてうなずいた」と話しています。
 彼女は、このときのできごとを、「自分がノーと言えなかったせいだ。相手との距離をとらなかったせいだ」と思って、ずっと自分を責めていました。「いまでも思い出せば叫びたくなるようなことで、いまでも苦しくて忘れたくて、できるなら記憶に蓋をしておきたい。その苦しさと自己嫌悪にいまも苦しんでいる」と話しています。

さらに深刻な二次被害
信頼していた大人から


 原のり子 さらに深刻なのは、その被害のあとのことです。信頼していた他の大人の人たちから、性暴力被害をハニートラップだと決めつけられて、病気と決めつけられ、そしてそれを広げられてグループから排除されます。SNSを使って直接・間接に攻撃を受けます。大人が集団で未成年に対していじめるという構図になったわけです。「話をしたい」といっても拒否されて孤立していきます。その後、その大人たちがいそうな場所にはもう行けないという事態になって、思い出すとフラッシュバックするという状況に苦しむことになります。その後、複雑性PTSDと診断されています。
 いま話したケースは、二次的被害に当たると思うんですけれども、見解をうかがいたいと思います。また、このような場合の被害者本人にメンタル面も含めてどういう対応ができるのか、うかがいます。

 人権部長 犯罪被害者等支援条例では、周囲の者等による偏見や無理解による言動等のほか、インターネットを通じて行われる誹謗中傷等により犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛等の被害を二次的被害として定義しております。これに該当し、支援が必要になった場合は、東京都の総合相談窓口や性犯罪等被害者ワンストップ支援センターにおいて相談を受け付け、被害者の状況に応じて面接相談、警察等への付き添い、医師等による精神的ケアを行っております。また、被害者がインターネット上の誹謗中傷に関する相談を希望する場合には、人権プラザにおける法律相談を紹介するなど、関係機関と連携して対応しております。

SNSを使った二次被害
被害者の伊藤詩織さんが逆転勝訴


 原のり子 先ほどの事例は、まさにセカンドレイプなわけですね。それも、一回二回とかではなくて二重三重にやられるというところが本当に深刻だと思うんですね。いまとても注目されているのは、伊藤詩織さんを中傷するツイートに「いいね」を何度も押したことについて、杉田水脈議員に対して裁判が行われていて、(伊藤詩織さんが)逆転勝訴をしていますよね。これは東京高裁ですけれども、杉田議員が過去に伊藤さんを揶揄する発言をしていたことなどを踏まえて、「いいね」を押したことはこれに好意的・肯定的な感情を示すために行われたものと認められ、伊藤さんの名誉・感情を侵害するもとの認められる、約11万人ものフォロワーを擁する杉田議員のツイッターで行われたもので、国会議員であるからその影響は大きい、と認定されていますが、そういうふうに、この問題は本当に勇気を出して言ってくださる方がいまたくさん出てくるなかで、動いてきているんですよね。
 先ほど事例としてあげた彼女にも許可を取ってここでお話しているんですけれども、先ほどの例も大人が未成年に対してSNSも使って行った、という二次的被害ですから、そういう点でも非常に重大だということがわかっていただけるのではないかと思います。

NHKが実態調査
3万8383もの回答が


 原のり子 それで、今後のいろんな調査のなかで参考にしていただきたいなと思っているのが、今年の3月11日から4月30日の間にNHKが性被害にあった方やそのご家族に実態調査を行っています。3万8383もの回答が寄せられたと発表されています。この調査でわかったのが、性被害後、長期間にわたって心身の不調にさいなまれている人が非常に多いということ、被害後の周囲の反応や対応によって傷ついていること、とくに身近な人に傷つけられているということがはっきりわかる調査結果でした。
 先ほど引用してくださった東京都の調査でも、かなり二次的な被害についてわかる部分があるんですが、NHKの調査はさらに踏み込んだ調査をしています。性被害後の早い対応と周りの理解が回復のためにはとても重要だということがよくわかります。

だれもが二次被害の加害者になる場合がある
そのことを広く周知・啓発してほしい


 原のり子 それで私は、改めてお願いしたいと思うのは、だれもが加害者になる場合がある、ということを含めて広く周知・啓発することを求めたいのですが、いかがですか。

 人権部長 都は二次的被害について広く都民の理解を深めるため、被害者やご遺族の講演会を実施するとともに、リーフレットを作成し区市町村、都の関係機関の協力も得ながら配布するなど、啓発活動に取り組んでおります。今年度は11月25日から12月1日までの犯罪被害者週間にあわせて、電車内や街頭のデジタルサイネージ(電子機器を使った情報発信)等を活用して啓発動画を配信しております。

だれもが被害者になる場合がある
だれでも加害者になりうることも据えて啓発を


 原のり子 都のリーフレットで、被害者向け、あるいは被害者はどういう気持ちかなどを周知する、それはとても大事だと思っています。私は、それに加えて、それは加害だということがわかるような啓発を強化してもらいたいと思っているんです。
 まだまだ自分が加害側になることはない、とひとごとの受け止めが社会では本当に多いんですよね。だれもが被害者になる場合もあるけれども、加害者にもだれでもなりうるんだ、ということを据えて周知することが必要だと思っているんです。

啓発の資料やリーフレット
都としてもぜひ検討してほしい


 原のり子 最後に一点だけうかがいたいんです。
 そういう啓発の資料、リーフレットも含めて、そういうことをぜひ検討していただきたい、というふうに思いますが、いかがですか。

 人権部長 ひきつづきさまざまな工夫を凝らしながら、効果的な啓発活動に取り組んでまいります。

 原のり子 ぜひ、前向きに検討していただくことを強く求めておきたいと思います。

【2022年事務事業質疑から】
(1)五輪を開催した都の責任
(2)遅れているオリ・パラ組織委員会の監査結果/監査請求は都民の大事な権利
(3)東京のデジタル化推進をめぐって
(4)マイナンバーカードの取得は任意
(5)人権プラザ企画展・附帯事業をめぐって

初冬点描 雑木林
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by hara-noriko | 2022-12-11 10:44 | 都議選 | Comments(0)

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