事務事業質疑から(7)自治体のあり方が問われている   

総務局に質問
身分併有型任期付職員について


 11月は都議会で事務事業質疑がおこなわれました。都の各局がおこなう仕事の内容やすすめ方について、毎年行われているものです。私が所属する総務委員会は、政策企画局、子供政策連携室、総務局、デジタルサービス局、人事委員会、選挙管理委員会、監査事務局を所管しています。私は、政策企画局、監査事務局、デジタルサービス局、総務局に対して質問しました。その内容を順次紹介しています。7回目(最終回)も、総務局です。デジタルサービス局がすすめている身分併有型任期付職員について、総務局の人事担当に質問しました。

【用語解説】

 身分併有型任期付職員=企業に在籍したまま都の職員(任期付き、非常勤)になる。
 ICT職=Information and Communication Technologyの略語で、情報通信技術を担う職員といった意味。東京都が正規職員として採用している。
 GovTech東京=ガブテック東京。都が打ち出した構想。東京全体のDXを効果的に進めるため、行政と民間が共同して斬新で革新的なサービスを生み出す新たなプラットフォームとして「GovTech東京」を設立する、としています。

【原のり子のコメント】

 企業に籍を置きながら、都の任期付職員として仕事をする、身分併有型任期付職員。私は、これは実施すべきでない、とデジタルサービス局の質疑で求めてきました。しかし、これは、デジタルサービス局に限らず、他局もみんな対象になっています。その基準をつくったのは総務局なので、質問することにしました。今、自治体の在り方、公務員としての仕事が問われています。

身分併有型任期付職員とは
なぜ、公務の公正性の確保に関する基準を制定したのか


 原のり子 最初に、身分併有型任期付職員についてうかがいます。身分併有型任期付職員とは、民間企業等を退職せず、籍をおいたまま、東京都の職員として仕事をする職員のことですが、昨年の12月1日、都は、民間企業の従業員の身分を併有する任期付職員に適用する公務の公正性の確保に関する基準を制定しました。なぜ、この基準を制定したのか、うかがいます。

 総務局人事部長 令和2年度(2020年度)に総務省が公表した自治体デジタルトランスフォーメーション推進計画において、自治体が外部人材を任期付職員として任用するさい、民間企業の雇用関係を継続し、従業員としての地位を保有したまま任用することが可能との見解が示されました。これを受け、都も身分併有型任期付職員を活用するとしましたが、任用にあたり、官民癒着等の疑念を抱かれることのないよう、公務の公正性を確保するため、独自に民間企業の従業員と身分を併有する任期付職員に適用する公務の公正性の確保に関する基準を定めることといたしました。

デジタルサービス局で募集している
他局でも募集しているのか


 原のり子 これまでに、デジタルサービス局では、身分併有型任期付職員制度の活用も可能な職員募集を行っていますが、この基準はデジタルサービス局に限ったものではないわけです。他局で募集しているものはありますか。

 人事部長 現時点ではその他の事例はございません。

身分併有型の職員
どのようなメリットがあると考えているのか


 原のり子 デジタルサービス局以外では事例はないということです。では、どういう職種について身分併有型を考えているでしょうか。どのようなメリットがあると考えていますか。

 人事部長 任期付職員制度は、法律上、特定の職種に限定されるものではなく、さまざまな行政分野で活用が可能であります。本制度は、専門的な知識や経験を有するものを外部から任用する際、民間企業等の退職を前提としないことから、応募者の選択肢を広げ、よりいっそう柔軟な人材確保が可能となるものと認識しております。

どんなデメリットを想定しているのか
「デメリットとしては考えていない」


 原のり子 いま、メリットを聞いたんですけれども、ちょっと1点、うかがいたいんですけれど、反対に、デメリットというのはどういうものを想定されていますか。

 人事部長 今回の制度につきましては、外部の有識者、外部から任用する際、選択肢を広げるということですので、メリットとしては考えておりますが、デメリットとしては考えてございません。

 原のり子 デメリットとしては特に考えていないということですが、最初のご答弁にあった通り、公務の公正性を確保するために、やはりこういう基準は必要だという判断があるということではあるんだなというふうに思います。

他県の場合はどうなのか
どのくらいの自治体がどんな分野で導入しているのか


 原のり子 それで、身分併有型任期付職員を導入している他県などの状況は把握していますでしょうか。どのくらいの自治体がどういう分野で導入しているのか、うかがいます。

 人事部長 総務省の調査結果では、令和2年(2020年)4月1日時点において、全国の地方自治体で合わせて39名の任用実績があり、デジタル分野のほか、シティープロモーションなどでの任用事例があると聞いております。

企業から給与は受け取らないなどの規定
規定している理由は何か


 原のり子 全国で39名の任用実績ということですから、決して大きく広がっているという状況ではないのかなというふうに受け止めました。東京都で働いている間は、企業から給与は受け取らない、辞めてから2年間は都に在職していた時の部署との間における特定の業務にはつかない、というふうに規定もしていますけれども、あらためてその理由をうかがいます。

 人事部長 身分併有型任期付職員は、地方公務員法に定める営利企業への従事等の制限の適用を受けており、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業、もしくは事務に従事してはならないとされています。また、国の官民人事交流法においては、民間企業から交流採用した職員に対し、任期中、交流元の民間企業が給与等を支給することを禁止しております。これらを受けて、本基準第6条においても、併有元企業は、身分併有型任期付職員に対し、その任期中、金銭、物品その他の財産上の利益を贈与してはならないと規定しております。あわせて、公正な都政運営、都民の信頼確保等の観点から、国の官民人事交流制度における運用なども踏まえ、退職後2年間は一定の業務について従事制限を課しております。

やはりリスクはある、と
癒着や不正を防ぐのに万全といえるのか


 原のり子 やはりリスクはあるということから、このような基準を設けているのだと私は思います。都として基準をつくるという判断は大事だと受け止めていますけれども、しかし、企業に籍を置きながら、都にいる間だけは給与を受け取らないとするなどの一定のルールだけで、果たして癒着や不正を防ぐのに万全といえるのかどうか、というふうにも思います。

公務員の役割は大変重い
自治体のあり方が問われている

 原のり子 公務員の役割は大変重いものであって、自治体のあり方が問われている問題だと受け止めています。私自身は、やっぱりこれは、身分併有型の職員をどんどん採用するというやり方はすすめるべきではない、という意見を強くいっておきたいと思うんですね。

都の外部に団体をつくって給与を上げるとは
果たして自治体がやることなのか


 原のり子 それで、今回も、デジタルサービス局では、高度人材を集めたいということが動機になって、募集をしたわけですけれども、実際には身分併有型での採用はまだ今の時点ではないということですよね。一方で、今度はデジタル関係でいえばガブテック東京までつくって、今度はじゃあ給与の差も付けて高度人材を集めようという、そういう方向にいま、動いていますよね。東京都はICT職を正規職員として採用しているわけで、しかしガブテックを東京都が出資をしてつくって、そちらには給与を高くしていく、と。
 東京都は、東京都で働いてくださる方、特にICT職で採用された方と、そして、なかなか高度人材が集まらないからといって、東京都が出資をして、新たな団体をつくって、そこは給与を上げるっていう、このやり方が果たして自治体がやることかなというふうに私は思っているんですね。

身分併有型任期付職員の採用
推進するのをやめ、見直すべきです


 原のり子 都の職員のみなさんが意欲をもって働ける職場であるように、これらの政策は見直した方がいいというふうに思いますし、とりわけ、身分併有型任期付職員については、これを推進していくというのはここで改めるべきだ、見直すべきだ、という意見をのべておきたいと思います。

【2022年事務事業質疑から】
(1)五輪を開催した都の責任
(2)遅れているオリ・パラ組織委員会の監査結果/監査請求は都民の大事な権利
(3)東京のデジタル化推進をめぐって
(4)マイナンバーカードの取得は任意
(5)人権プラザ企画展・附帯事業をめぐって
(6)性暴力被害者の二次被害 なくすための啓発を

初冬点描 川霧
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by hara-noriko | 2022-12-12 22:05 | 都議会 | Comments(0)

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