文書質問から(1)摂食障害の治療と支援   

昨年第4回定例会で出していた文書質問
都から答弁がきました


 昨年12月に開かれた都議会第4回定例会で文書質問を都に出していました。このほど都から答弁が来ましたので、質問と答弁とをセットで紹介します。
 文書質問の項目は(1)摂食障害の治療と支援の体制づくりについて(2)所沢街道の歩道整備について―の2つです。まず、「摂食障害の治療と支援の体制づくりについて」の質問と答弁を掲載します。

【原のり子のコメント】

 摂食障害当事者の方に教えていただき、学習会に参加したり、資料を読んで学ぶなかで、私自身これまでの見方が不正確で不十分だったことを反省させられました。誰もがかかりうる疾患であり、強い意志をもてば治るというようなものではないこと、そして死亡率が高いということにショックを受けました。自治体としてとりくむべきことはないのか、そういう問題意識で今回質問しました。
 よかったのは、来年度予算案に、「摂食障害治療支援体制整備事業」(500万円)が盛り込まれたことです。その予算書の説明には、「摂食障害について、適切な治療と支援により患者が地域で支障なく安心して暮らすことができる体制を整備するため、医療機関の連携促進等、必要な検討を行う」と記されました。より良い内容になるよう、さらに提案していきたいと思います。
 今回質問したなかで驚いたのは、正確な患者数を国も都も把握していないということです。とくに、2018年以降は、国は把握の仕方を変え、摂食障害に特化した把握はせず、睡眠障害等などとも合わせた人数で、しかも各年6月30日現在の入院患者数しか把握していません。いわゆるワンデー調査です。都もそれにならっています。そのため、質問に対する答弁は2017年までの人数になっています。
 この質問を機に、患者人数を把握すること、摂食障害の正しい理解を広げ、相談しやすい環境をつくること、治療を受けやすくすること、などを進められるようにとりくんでいきます。

摂食障害はだれでもかかりうる疾患
適切な支援や治療が行える機関が少ない


 摂食障害の外来・入院診療実績は、全国で年間約22万人と言われています(2017年度精神保健福祉資料)。実際には、医療機関にかかっていない方や、治療を中断した方も多いこと、また、死亡率も約5%と高いことが特徴です。誰でもかかりうる疾患であるにもかかわらず、適切な支援や治療が行える機関が少ないことが大きな問題になってきました。ようやく、2014年度から厚生労働省が摂食障害治療支援センター設置運営事業をスタートし、まずは都道府県ごとの専門医療機関の設置を目指していますが、拠点病院を設置しているのは、宮城・千葉・静岡・福岡・石川の5県のみです。

本人や家族が相談できる場が必要
適切な治療を受けられる医療機関や正しい知識の啓発も


 ある10代の方は、最初は自分の容姿に悩み、拒食症の状態になりましたが、家族の前では心配させたくないという思いで、食事をしてそのたびに自室で吐く、ということをくりかえしていました。吐しゃ物は袋にいれて部屋のベッドの下に隠していました。
 またある20代の方は、体重が増えるのが怖いという太る恐怖と、食べたい欲求を過食嘔吐で満たす、という感覚だと話します。そして、吐くことで自分の中の汚れたものが一緒に吐き出せるような感覚だ、と話します。過去の辛い体験によりフラッシュバックもあるなかで、過食嘔吐をすることでなんとか生きていると言います。
 一見、「痩せたい」という気持ちでやっているからやせれば止まると思われがちですが、そうではありません。実際には、葛藤やストレスを多く抱え、その苦しさのはけ口が摂食障害だともいわれます。そして、周りの人からかけられる言葉にも深く傷つけられています。
 摂食障害で苦しんでいる方や家族が相談できる場、適切な治療を受けられる医療機関、都民への正しい知識の啓発、こうしたことがすすめられることが重要です。東京都として、力を入れるべきと考え、以下、質問します。

都内の摂食障害患者 把握している人数は
推移を含めて教えてほしい


 (質問1)
 東京都内の摂食障害患者は何人だと把握していますか。これまでの推移を含めて教えてください。

 (答弁1)
 国の精神保健福祉資料によると、都内の摂食障害外来患者数は、平成27年度(2015年度)2万2551人、平成28年度(2016年度)2万2441人、平成29年度(2017年度)2万3052人です。
 また、精神病床での摂食障害の入院患者数は、平成27年度586人、平成28年度558人、平成29年度530人です。

治療をおこなえる都内医療機関は?
都立病院ではどの病院か?


 (質問2)
 摂食障害の治療をおこなえる都内医療機関は把握していますか。現在、都立病院では、どの病院が治療をおこなっていますか。

 (答弁2)
 摂食障害は精神疾患の一つであり、都内の精神科や心療内科等を標ぼうする医療機関で対応しているものと認識しています。
 都立病院では、主に松沢病院と小児総合医療センターで対応しています。

相談はどこで受けていているのか
その実績は


 (質問3)
 都として摂食障害についての相談はどこで受けていて、どのぐらいの実績がありますか。

 (答弁3)
 都は、都内3カ所の精神保健福祉センターや6カ所の保健所で、電話や面接等により摂食障害の相談を受けており、令和3年度(2021年度)の相談実績はそれぞれ194件、252件です。

摂食障害支援拠点病院を整備すべきです
都は来年度予算案に検討経費を計上


 (質問4)
 東京都として、摂食障害支援拠点病院を整備すべきと考えますがいかがですか。その際、都立病院も積極的な役割を担ってほしいと考えますが、いかがですか。

 (答弁4)
 国の摂食障害治療支援センター設置運営事業実施要綱(以下「要綱」という)では、都道府県が摂食障害支援拠点病院(以下「支援拠点病院」という。)を指定することとしており、都は、令和5年度(2023年度)予算案に検討経費を計上しています。

摂食障害対策推進協議会の設置
都は来年度予算案に検討経費を計上


 (質問5)
 都として、摂食障害対策推進協議会の各地域への設置を推進すべきですがいかがですか。

 (答弁5)
 国の要綱では、支援拠点病院の役割の一つとして、有識者等で構成する摂食障害対策推進協議会を設置することとしており、都は、令和5年度(2023年度)予算案に検討経費を計上しています。

摂食障害治療支援コーディネーターの配置
都は来年度予算暗に検討経費を計上


 (質問6)
 摂食障害治療支援コーディネーターを配置しての相談支援業務や、ピアカウンセリングを行うべきと考えますが、いかがですか。

 (答弁6)
 国の要綱では、支援拠点病院の役割の一つとして、摂食障害治療支援コーディネーターを配置することとしており、都は、令和5年度(2023年度)予算案に検討経費を計上しています。

都民に正しい理解を啓発することが大事
ホームページの充実やパンフの作成を


 (質問7)
 都民への正しい理解を啓発していくことはとても重要です。静岡県などでは、県のホームページでわかりやすい特集ページを設けています。誰でもかかりうるということ、摂食障害の人が弱いのではないということを共有することが大切です。そして、「あなたは何も悪くない」ということを発信していく必要があります。東京都としても、ホームページの充実やパンフレットなどを作成することを求めますが、いかがですか。

 (答弁7)
 都は、令和4年(2022年)10月に発行した広報誌「こころの健康だより」において、摂食障害は、様々な要因が複雑に絡み合って生じていると考えられているため、本人や家族を責めるなど原因を追及するのではなく、早期発見・早期治療が重要であることを周知しています。

フキノトウ
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by hara-noriko | 2023-02-20 22:24 | 東京都政 | Comments(0)

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