2023年1定総務委員会質問(6)住民監査請求と勧告をめぐって   

都議会総務委員会で質問
住民監査請求と勧告をめぐる問題について


 都議会2023年第1回定例会でおこなった私の質問を順次、紹介しています。6回目は、監査事務局に住民監査請求をめぐる問題を質した内容です。3月13日の総務委員会です。

【私のコメント】

 東京都は、若年被害女性等支援事業を実施しています。この事業は、性暴力や虐待等の被害にあった、または、被害にあう恐れのある、主に10代から20代の女性を対象に、アウトリーチから居場所の確保、公的機関や施設への「つなぎ」を含めたアプローチを、委託した民間団体に担ってもらっているものです。
 その事業に対し、適切な委託料の支出になっているのかどうか、不適切な利用はないのか、住民監査請求がだされ監査がおこなわれ、勧告が出されました。そして、この事業の所管である福祉保健局でさらに再調査をおこない、その結果が出されました。委託料に過払いはなく、不適切な支出は行われていない、返還する必要はない、ということが明確になりました。にもかかわらず、支援の現場では支援事業に対する妨害がくりかえされました。
 私は、勧告のなかに、民間団体に理解の不足があるかのように読み取れる書き方をしており、こうしたことが心無い攻撃を助長しているのではないかと指摘しました。
 残念ながら、その後も妨害はくりかえされ、東京都もそれに毅然と対応せず、アウトリーチが実施できない状況になりました。さらに、今年度から、委託事業は補助事業に変更されました。本来、公がやるべき事業を委託して担ってもらってきたにもかかわらず、また、委託料の使い方に不正はなかったにもかかわらず、このような状況になっています。
 3月の都議会では、厚生委員会で日本共産党の白石たみお議員が事業の内容をくわしく質問。この事業の必要性について、都はくりかえし答弁したのですから、責任をもって対応すべきです。

住民監査請求
監査委員の勧告とは何か 強制力はあるのか


 原のり子 住民監査請求について、うかがいます。
 住民監査請求における監査委員の勧告とは何か、どういう場合に行うのか、まずうかがいます。

 監査事務局監査担当部長 地方自治法第242条第5項において、住民監査請求により監査委員が監査を行い、当該請求に理由があると認めるときは、当該地方公共団体の長等に対し、期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告する旨、定められております。

 原のり子 それでは、その勧告には強制力はありますか。

 監査担当部長 地方自治法第242条には、勧告の効果について具体的に定める規定はありませんが、勧告とは、一般には法的拘束力ないし強制力を有するものではないものの、勧告を受けた相手方はこれを尊重しなければならない義務を有すると解されております。

法的拘束力や強制力はないが
勧告を受けた側は尊重する義務を有する


 原のり子 法的拘束力や強制力はないけれども、勧告を受けた相手方はこれを尊重しなければならない義務を有するということです。
 当該請求に理由があると認めるときということですけれども、請求のすべてではなく、一部であっても理由があると認めれば勧告し、その上で調査が行われるということになります。

監査委員は請求人が求める範囲を超えて監査できるのか
監査委員の権限と役割は


 原のり子 そもそも監査委員は、請求人が求めている範囲を超えて監査できるものなのでしようか。監査委員の権限と役割について、うかがいます。

 監査担当部長 住民監査請求においては、請求に基づき監査を実施し、その結果を踏まえ必要な勧告を講じるよう勧告を行います。
 監査委員の勧告における必要な措置については、監査委員は必ずしも請求人の請求内容に拘束されず、これを修正して必要な措置を勧告することをできるものと解されております。

 原のり子 それは法のどこに位置づけられているのか、うかがいます。

 監査担当部長 住民監査請求において、繰り返しになりますが、請求に基づき監査を実施し、その結果を踏まえ必要な措置を講じるよう勧告を行います。
 地方自治法第242条には監査委員は監査を行うと規定され、その範囲について具体的に定める規定はありませんが、監査委員は必ずしも請求人の請求内容に拘束されず、これを修正して必要な措置を勧告することをできるものと解されております。

むやみに監査の範囲を無制限に拡大していいものではない
東京都の場合は、調査のすすめ方などの比較がしにくい

 原のり子 自治法の242条については、逐条解説等も私も読んだんですけれども、今のようなことで書かれていました。
 一方、だからといってむやみに監査の範囲を無制限に拡大していいものではないというのは当然のことだというふうに思います。
 東京都の場合は、ほとんど住民監査が実施されてきていないので、今回、これから取り上げます若年被害女性等支援事業についての住民監査請求のすすめ方と、これまでの住民監査請求に対する調査等のすすめ方の比較ができるものがあまりないんですよね、東京都は。これ自体、住民監査の実施が少ないということについては、以前別の質疑でも触れましたけれども、なかなかその妥当性が比較がしにくいという状況にあるというふうに思います。

若年被害女性等支援事業に関する住民監査請求
どのような勧告を出したのか


 原のり子 今回、その若年被害女性等支援事業に関する住民監査請求の監査が行われて、これ以前は、ほかに監査が何があったかというと、平成28年、2016年の知事専用車の使用を違法、不当として、その使用に要した経費の返還を求める住民監査請求ということになると思います。
 これは全く内容は違うものなんですけれども、この監査請求の勧告、また措置についても資料を読みましたけれども、請求に即した勧告をして、今回のような意見を付け足すという内容にはなっていないなということは分かりました。
 それでうかがいますけれども、今回、若年被害女生等支援事業に関する住民監査請求については、どのような勧告を出したのか確認をします。

 監査担当部長 勧告の内容は、令和5年(2023年)2月28日までに、(1)監査対象局は本件契約に係る本事業の実施に必要な経費の実績額を再調査及び特定し、客観的に検証可能なものとすること(2)調査の結果、本事業として不適切と認められるものがある場合や委託料の過払いが認められる場合には、過去の事業年度についても精査を行うとともに返還請求等の適切な措置を講ずること、でございます。

若年被害女性等支援事業について再調査の勧告
この事業に限定して勧告が出されている


 原のり子 つまり、今答弁していただいた内容が勧告の内容ですよね。
 ですから、先ほど私、今回のような意見を付け足すということには前の住民監査ではなかったというふうにいいましたけれども、今回その勧告の中でいま読み上げられた勧告がまずあって、その次に、なお本件事業に係る委託の会計処理について次の意見を付すという意見がついているんですけれども、その部分では、その意見はありますけれども、勧告としては今答弁があったところが勧告だということです。
 それで、今の勧告の内容を聞いていますと、本事業ということがきちんと指摘されていまして、本事業、つまり若年被害女性等支援事業についての再調査の勧告ということです。
 本事業の実施に必要な経費の実績額の再調査、それから本事業として不適切と認められるものがある場合や委託料の過払いが認められる場合には云々、というふうになっていて、若年被害女性等支援事業についてという、当然のことですけれども、そこに限定をしての勧告が出されているわけですね。

異例な「意見」がついている
その内容が果たして適切なのか


 原のり子 先ほどいったように、そういう勧告なんですけれども、一方で、意見というのがついていて、この意見の(六)では、受託者に対し、本事業が補助事業ではなく委託事業であること、また本事業が公金を使用する事業であることを改めて指導、徹底することという、こういう意見を、本当に異例だと思いますけれども、つけている、と。
 こういうふうにしたために、これから再調査してくれということなのに、あたかも受託者が公金を使っている事業だということを理解していないように決めつけているとも取れる、そういう表現をされている。これが果たして適切なのかと私は疑問を感じました。

監査委員の合議はいつ行われたのか
違法、不正はなかったという結果になっている

 原のり子 それで、監査結果を取りまとめて勧告を出すに当たって、監査委員の合議はいつ行われたのか、うかがいます。

 監査担当部長 令和4年(2022年)12月27日に合議が成立いたしました。

 原のり子 これは監査委員が全員集まって、一堂に会して決定をしたのでしようか。

 監査担当部長 12月15、20、22日に対面で審議を行い、25日、27日に書面で審議を行いました。

 原のり子 わかりました。3回一堂に会して審議を行ったうえ、25日、27日で書面で合議が成立をしたということでした。この後、福祉保健局で再調査が行われるということになって、2月28日に知事が講じた措置が発表されるということだったわけです。
 それで、その結果、委託料に過払いはなく、受託者への返還請求は行われなかったということになったわけです。要するに、違法、不正はなかったという結果になっています。

あたかも問題があったかのような印象付けがされている
心ない攻撃、妨害を助長しているのではないか

 原のり子 これも大変異例だと思うんですけれども、にもかかわらず、この知事が講じた措置でもその他という項目をつけて、委託事業を補助事業に変更するというふうに書かれていました。これを本来は再調査の結果の中に盛り込む必要がないことだと私は思います。強い違和感と疑問を感じました。
 もともとこの委託事業というのは、本来東京都がやるべき仕事を民間に担ってもらっているということです。若年被害女性の問題が深刻化している中、この事業の大事さは非常に重要になっている、大きくなっていると思っています。一方で、妨害が非常に激しくなっている。現場は本当に今大変な状況にあります。
 この監査の結果は違法も不正もなかった。しかし、一方で問題があるかのように印象づけられることで、心ない攻撃、妨害を助長しているのではないかと大変今心配しています。

事業を担っている団体が安心して活動できるように
都に毅然とした対応を求めたい


 原のり子 東京都として必要な事業を継続する、それを担っている団体が安心して活動できるようにする、そのために毅然とした対応を求めていきたいと思っています。
以上で質問を終わります。

桑の実
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by hara-noriko | 2023-05-11 21:07 | 都議会 | Comments(0)

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