都職員の障害者採用 初任給の引き上げを求める陳情を審査
2023年 08月 07日
障害者採用で初任給の加算限度号給を引き上げてほしい
都議会第2回定例会の総務委員会でおこなった私の質問を紹介します。総務局への質問です。最終回の3回目は、都職員の障害者採用で、初任給の加算限度号給の引き上げを求める陳情審査です。私が質問した以外に質問者はなく、私の質問後に採決が行われました。趣旨採択に賛成したのは福手ゆう子委員と私とだけでした。その結果、この陳情は不採択になりました。
【私のコメント】
東京都は、障害者3類採用選考で、すべての障害の方を対象にしています。しかし、知的障害の方は、試験を受けられるようにはなったものの、合理的配慮がないため合格者はなかなか生まれませんでした。今年ようやく1人採用されましたが、もっと障害特性にあった試験を別途行う必要があることをずっと指摘してきました。また、新たに、障害者3類を60歳までの方が受けられるようになりました。そうするとかなり経験を積んだ方がいらっしゃることも考えられ、それにふさわしい給与であるべきだと思います。キャリア活用選考も60歳までに拡大していることを考えても、同じように、経験にふさわしい給与体系であるべきです。
ところが、障害者3類の場合は、初任給に加算される経験加算を低く抑えています。加算によって、上位職を超えることになってはいけないとのことで。では、同じ60歳まで対象のキャリア活用選考を受けようと思っても、合理的配慮が障害者3類ほど準備されていないので受けられない。…こうしたもとで、給与に差が生まれていることについて、改善していくべきというのはもっともだと思います。障害者権利条約にもとづいて、改善に向けた議論をすべきと考え、趣旨採択を主張しました。残念ながら通りませんでしたが、引き続き、障害ある方々がやりがいをもって仕事ができる環境改善へ、取り組んでいきたいと思っています。
陳情の内容を都が説明
障害者採用における初任給の加算限度号給の引き上げ
総務局任用公平部長 DX推進担当部長兼務 陳情5第2号、都職員の障害者採用における初任給の加算限度号給の引上げに関する陳情についてご説明申し上げます。
陳情の要旨につきましては、都において、都職員の障害者採用における初任給の加算限度号給の引き上げを早急に実現していただきたいというものでございます。
現在の状況でございますが、職員の給与については、地方公務員法における給与に関する基本原則である職務給の原則等に基づき、条例等で定められております。
新たに職員となった者の初任給は、規則において、採用された試験選考区分ごとに適用される初任給の号給が規定されており、採用前に職務経験などの有用な経験等を有する場合は、その経験等に応じて初任給の号給に加算することができると規定されています。
初任給における経験加算は、上位職の給与水準を超えないよう均衡を図る必要があることから、加算限度号給を設定しております。
障害者3類採用選考は、都におけるキャリア形成を前提としている一級職を採用する3類採用試験と同等の能力実証を行う選考であることから、3類採用試験と同じ加算限度号給としております。
一方、キャリア活用採用選考は、障害者3類採用選考とは異なり、民間企業等でのキャリアや実績といった個々の経験に着目し、上位職である主任級や課長代理級として採用する選考であることから、採用される級の最高号給を加算限度号給に設定しております。
なお、障害のある方についても、受験資格を満たしていれば、障害者3類採用選考以外の採用試験、選考の受験は可能であり、点字による受験、パソコンを使用した解答など、必要な合理的配慮を行い、試験等において障害の種別にかかわらず能力が発揮できるよう取り組んでおります。
以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審査のほどお願い申し上げます。
総務委員会委員長 説明は終わりました。本件について発言を願います。
陳情は、採用後の待遇が追いついていないと指摘
その改善を求めている
原のり子 それでは、うかがいたいと思います。
本陳情は、東京都が障害者採用の対象を拡大してきた一方で、採用後の待遇が追いついていないのが現状であり、それを改善することは、障害を有する職員が都全体の人材として活躍するために重要だと指摘をして、都職員の障害者採用における初任給の加算限度号給の引上げを早急に実現してほしいと求めているものです。
初任給の加算限度号給の引き上げ
どのような法手続きが必要になるのか
原のり子 まず、確認でうかがいたいのですが、陳情者の願意である障害者採用における初任給の加算限度号給の引き上げ、これを実際に実施する場合には、どのような法手続が必要になりますか。
任用公平部長 初任給の加算限度は、初任給、昇格及び昇給等に関する規則に基づく通知により規定しており、この通知を人事委員会が改正することが必要でございます。
しかし、職員の給与制度は、職務給の原則等に基づいて設計、運用すべきものであり、改正には慎重な検討が必要となるものでございます。
条例改正は必要ない
規則の改正で対応することになる
原のり子 つまり、(規則で規定しているので)条例改正は必要はないということで、都として必要だというふうに判断をする、考えれば、規則の改正で対応するということになるわけです。
障害者3類採用選考を60歳まで拡大した
その理由は何か
原のり子 そうなると、大事になってくるのは、どういう考えに基づいて障害者採用をすすめるのかということだと思います。この陳情では、キャリア活用選考と障害者3類選考が60歳まで対象を広げたことについて触れています。
まず、障害者3類が年齢を60歳まで拡大した理由をうかがいます。
任用公平部長 障害者の雇用の促進等に関する法律の改正など、障害者雇用を取り巻く状況を踏まえつつ、都が率先して障害者雇用の取り組みを推進し、採用のさらなる門戸拡大を図るためでございます。
キャリア活用選考も60歳までに
どういう理由からか
原のり子 では、キャリア活用選考の60歳までというのはどういう理由でしようか。
任用公平部長 民間企業等でのキャリアや実績といった個々の経験に着目し、上位職である主任級や課長代理級として、幅広い年齢層から有為な人材を確保するためでございます。
障害者の雇用の促進等に関する法律
改正を踏まえてとはどういうことを指しているのか
原のり子 それで、ちょっとうかがいたいんですけれども、先ほど障害者3類が60歳まで拡大した理由についてお答えいただいて、そのなかで、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正などを踏まえとおっしゃられました。これはどういうことを指しているのか、うかがいたいと思います。
任用公平部長 先ほど答弁させていただきました障害者の雇用の促進等に関する法律の改正という部分でございますが、これは令和元年(2019年)に法律の改正を行ったものでございまして、内容につきましては、国及び地方公共団体の責務として、自ら率先して障害者を雇用するよう努めなければならないといった法改正がございました。
これを受けまして、東京都としても、都庁における障害者活動推進計画を策定いたしまして、それに基づき、60歳まで拡大したものでございます。
職業能力の開発及び向上に関する措置が加わっている
能力を最大限に発揮できるようにしていくことが重要
原のり子 いまご説明あった部分については理解をするところです。
それで、ただ、障害者雇用促進法の改正、今年の4月1日から施行されたなかには、例えば第5条では、すべての障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有する者であって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない、という規定があって、その適正な雇用管理を行うだけではなくて、職業能力の開発及び向上に関する措置を行うということが加わっています。キャリア形成の支援を含めて積極的に行っていくという、そういうことが示されたというふうに思っています。これは、東京都の職員採用においても、私は重要な視点になってくるんではないかというふうに思うんです。
障害者のみなさんが試験を受けられるように、門戸をできるだけ開いていくという点で、東京都も努力をしてきているわけですけれども、障害者の雇用率を数字上達成すればいいというわけではもちろんなくて、一人ひとりの障害のある方たちがその能力を最大限に発揮できるようにしていくことが重要だというふうに思っています。
試験時間の延長についての規定
点字で解答する人、拡大文字で受ける人に限られるのか
原のり子 それでうかがいたいんですけれども、先ほどこの陳情審査の冒頭にご説明があって、都としての陳情に対する見解が述べられていました。そのいちばん最後の部分で、障害のある方もどの試験も基本的に受けられると、合理的配慮についても個別に対応されているという説明がありました。この間、私も、また福手ゆう子委員も、この問題については質問を重ねてきていますので、合理的配慮の努力についても進んできている、これ重要だと思っています。
それで、確認したいんですけれども、障害者3類選考の場合は、最初から、試験時間はすべての受験者に対して延長されています。その他の採用選考案内の受験の場合には、受験上の配慮というのが書いてあって、試験時間の延長について規定されています。ここでは、点字の試験問題に点字で解答する人と、拡大文字の試験問題を受ける人に限られるように読み取れます。それ以外の人には認められないのかどうか、うかがいます。
総務局試験部長 試験や選考の実施に当たりましては、公正性を確保することが重要でございます。そのため、試験時間の延長は、点字や拡大文字による受験者のうち、問題文の読解や解答の作成に時間を要し、一定の要件に該当する場合に認めているものでございます。
試験、選考において、受験者が能力を発揮できるよう、引き続き個別の相談への対応も含めて必要な配慮を行ってまいります。
試験途中で薬を飲んだりする必要がある方など
キャリア活用の選考希望者が障害者3類選考に行くことになる場合も
原のり子 時間延長については、障害者3類以外は、基本的に、いまご答弁にあった視覚障害の方で一定の要件に合った方に限られるということなんですよね。それ以外で合理的配慮は個別に対応していきますよ、というお話だったと思うんです。ただ、その合理的配慮も、個別に相談して対応できる、あるいはできない、これが決まっていくということだと当然思うんですね。
それで、時間延長については、視覚障害の方に限らず、例えば途中で薬を飲んだり休んだりする必要がある方とか、あるいは手に障害があって記入に時間がかかるなど、いろいろなケースが考えられるのではないかというふうに思うんですね。
そうなると、キャリア活用の選考で受験をしようかなと思っていたけれども、ちょっとなかなか時間が厳しいと判断をされた、そういう障害をお持ちの方は、たとえキャリア活用選考の要件に合致していても、障害者3類を選考するということになるのではないかと思うんですね。ですから、やっぱりほかの試験も、障害者3類以外も受けられますというふうに、もちろんなっているんですけれども、なかなかハードルは高いというのが現実だというふうに思います。
高卒で11年間の民間経験者
キャリア活用選考と障害者3類、給与はいくらか
原のり子 それで、そういう状況を踏まえると、今、障害者3類の受験者数は、年齢拡大とともに大きく伸びていますよね。これはとてもいいことなんですが、その年齢が高くなってから障害者3類を受けている方々のなかには、さまざまな経験をほかのところで積んでいる方、キャリアを持っている、スキルのある、そういう方もいらっしゃるんだというふうに私は思うんです。
そこでうかがいたいんですけれども、キャリア活用選考の場合、高卒で11年の民間での経験がある方から受験の対象になりますけれども、その場合の給与はいくらになるのか。また、障害者3類で、同じ条件ですね、高卒で11年、こういう条件の場合の給与はいくらになるか教えてください。
任用公平部長 高校卒業後、公務と同様の職に11年の経験があると仮定した場合、令和5年(2023年)5月1日現在の初任給は、キャリア活用採用選考で採用された場には、2級職の主任として給料月額24万5300円となります。また、障害者3類採用選考で採用された場合は、1級職の主事として、給料月額21万6600円となります。
障害者3類選考は18歳から60歳が対象
さまざまな経験を積んで採用されることを考慮すべき
原のり子 やはりそこには差が当然出てくるわけです。この陳情でも詳しくその前歴級の差などにも触れています。
障害のある方にそれぞれの力を発揮してもらえるように、給与の問題あるいは働き方の問題を検討していくというのは、とても大切だと思っています。
障害者3類選考は、3類選考と同様に、高卒での受験、高校卒業程度の方の試験というふうになっていますが、ただ、3類は18歳から21歳までが対象になっていて、障害者3類はぐっと広がって、18歳から60歳までになっているわけです。やはりこの違いを踏まえて、今後検討していく必要があるというふうに思うんです。
先ほどもいいましたけれども、さまざまな経験を積んで採用される障害のある職員の方々がいらっしゃると思うんですね。このことを考慮していくことが今後求められていくというふうに思います。
障害者権利条約を踏まえて
よりよくしていく立場で陳情を検討すべきです
原のり子 最後に、ちょっと意見だけ述べておきたいと思いますが、障害者権利条約の第27条は、労働と雇用について規定していますけれども、そのなかには、公的部門において障害者を雇用するということが位置づけられています。それから、募集、採用、雇用の条件、継続、昇進などに関し、障害に基づく差別を禁止し、労働によって生計を立てられるということも位置づけています。
障害者の採用について、よりよくしていくという立場で、今回の陳情の内容を検討することは、私は必要だというふうに思っています。
知的障害の方の特性を生かした試験の実施
視覚障害の方が持っている資格を生かせるような仕事をつくる
原のり子 また、これまでも私たち求めてきていますけれども、知的障害の方の特性を生かした試験を別途実施をする、あるいは障害者団体からも毎年都に要望されていますが、視覚障害の方が持っている資格を生かせるような仕事をつくる、こういうことなども東京都が踏み出すべき課題だと思っています。これは総務局マターになる分野だというふうに思いますが、全庁的に検討していくべきだと思います。
障害のある方が活躍できる職場、また、東京都へと前進できるように検討していくことが必要だと指摘をいたしまして、質問は終わります。
起立による採決
陳情は不採択に
委員長 ほかに発言がなければ、これより採決を行います。本件は、起立により採決いたします。本件は、趣旨採択とすることに賛成の方はご起立願います。
〔賛成者起立〕
委員長 起立少数と認めます。よって、陳情5第2号は不採択と決定いたしました。陳情の審査を終わります。
【2023年 都議会第2回定例会での質問】
(1)政策連携団体に対する指導・監督のあり方
(2)離島振興
by hara-noriko | 2023-08-07 22:32 | 都議会 | Comments(0)