総務委員会質問から 都の少子化対策は見直す必要がある
2023年 11月 04日
少子化対策・子ども政策の強化
9月に開かれた都議会第3回定例会。私は総務委員会(9月29日)で(1)少子化対策について(2)都の子ども政策―について質問しました。質疑の内容を順次紹介します。総務委員会での質問は、これが最後でした。今後は厚生委員として、厚生委員会で質問することになります。
総務委員会質問の1回目は、少子化対策についてです。
【原のり子のコメント】
私は、これまでも、「子どもを産んでもらうための結婚支援」は見直すべきだと質問してきました。2020年3月、予算特別委員会で知事に直接質問もしました。しかし、今回都がまとめた「少子化対策の推進に向けた論点整理」は、残念ながら「子どもを産んでもらうための結婚支援」の線ですすめていくものになっています。一人ひとりの生き方を尊重することこそ大事なことなのに。今回の質問では、「世界人口白書」を引用しながら、都の対策は是正する必要があるということを提起しました。
傍聴してくださった方が、「子どもを数でみられるのはいやだな」「結婚するもしないも自由なのに、違和感しかない」「産めよ増やせよ…という考えにぞっとする」という感想を寄せてくださいました。引き続き、議論をすすめながら、一人ひとりの人権が守られる政策を提起していきたいです。
以下が質疑の内容です。
少子化の定義を聞きたい
出生率の低下、家庭や社会の子ども数の低下
原のり子 それでは、最初に「少子化対策の推進に向けた論点整理」について、うかがいます。論点整理をするに当たって確認されていると思われる基本の部分をまず、うかがいます。1つは、都が考える少子化の定義はどういうことでしょうか。
子供政策連携室少子化対策担当部長 国では、出生率の低下やそれに伴う家庭や社会における子ども数の低下傾向を少子化と表現しておりまして、都も同様に考えております。
少子化の何が問題だと考えているのか
経済の縮小、地域の担い手の減少、現役世代の負担増など
原のり子 国と同じということで、出生率の低下とか子ども数の低下ということですね。では、都は少子化の何が問題だと考えているのか、うかがいます。
少子化対策担当部長 予想を超える速さで進展している少子化は、今後、生産年齢人口の減少を通じて、経済の縮小や地域の担い手の減少、現役世代の負担の増加など、わが国の社会に大きな影響を及ぼすと認識しております。
一人ひとりに視点がいっているのか疑問
前提として多様な生き方を大事にする視点はあるのか
原のり子 わが国の社会に大きな影響を及ぼすということなんですけれども、一人ひとりに視点がいっているのかなということを疑問にも感じるわけです。子どもの数を増やさなければということが中心で、人を数字だけでしか見なくなっては困るので、いくつかうかがっていきたいと思います。
論点整理は、冒頭から、望む人が子どもを産み育てることができるという角度です。望む人といいながらも、前提として多様な生き方を大事にするという視点はあるのか疑問に感じるんですけれども、いかがですか。
少子化対策担当部長 妊娠、出産、子育ては、個人の意思決定に基づくものでございまして、都は、望む人が安心して子どもを産み育てることができる社会の実現に向け、多様な価値観や考え方を尊重しながら取り組みをすすめているところでございます。
子どもを産んでもらうための結婚支援
これは見直すべきではないか
原のり子 多様な価値観や考え方を尊重するというご答弁があったんですけれども、そうであれば、結婚支援を東京都が実施するということ自体も、今、改めて問い直す必要があるのではないかと私は考えています。
少なくとも、今、まず現在都がすすめている子どもを産んでもらうための結婚支援、これは見直すべきではないかと思いますが、いかがですか。
少子化対策担当部長 結婚支援は、個人の価値観や人生観が異なることを十分配慮しつつ、結婚を希望しながら一歩を踏み出せない人を後押しし、結婚に向けた機運醸成を図るものでございます。
一方、有識者からもご意見を頂戴しておりますけれども、未婚化、晩婚化が少子化の要因の1つとなっていることは事実でございます。多様な価値観や考え方を尊重しながら、結婚を望む人の希望をかなえる取り組み、支援を論点整理に盛り込んでいるところでございます。
結婚イコール妊娠、出産という印象が強い
多様な方々に意見を聞いているか?
原のり子 しかし、都の政策、今回出されたものを見ますと、結婚イコール妊娠、出産という印象がとても強いんですね。
2ページに、ライフステージを切れ目なく応援というふうに書いてありますけれども、結婚を望む人を後押しするんだというふうにおっしゃったけれど、結婚、妊娠、出産というふうに続いていく、そういうふうになっているので、1つのパターンを応援するというふうに読み取れるわけですね。
それで、LGBTQの方々や、望んでも子どもを持てないという方、あるいは里親として子どもを育てていらっしゃる方、いろいろいらっしゃいますが、こういう方々に意見などは聞いているんでしようか。
少子化対策担当部長 今回の論点整理では、幅広い若年層の結婚や子どもを持つことに関する意識を把握する観点から、都内在住の若年層1000人の方に意見をうかがったところでございます。
都の調査 幅広い人たちに聞いていない
生きていく上で考えていることを幅広く聞くことが必要
原のり子 ですけれども、20ページにオンライン調査の概要が出ているんですけれども、これを見ると、アンケートに答えているのは18歳から29歳の男女のみなんですね。本当に幅広い人に聞いているのかというのは、やはりちょっと、私はこれを見て疑問に感じました。
若い人たちが今どういうふうに考えているのか、何を心配されているか。結婚、出産とか、そういうことだけじゃなくて、生き方、これから生きていく上でどういうことを考えているかということを幅広く聞いていくことこそ必要なのではないかと。私は、少子化対策というけれども、それがもう大前提だと思っています。
「世界人口白書」 問題にすべきは不平等
都の認識は?
原のり子 それで、人口問題については、国連人口基金の「世界人口白書2023」が出ています。ここには、ジェンダー平等の推進こそ鍵だと、そういうふうに述べられているんですね、人ロ問題を考えるときには。
事務局長の声明ではこういうふうに書かれています。「低い出生率が、高齢化社会及びそれに伴う経済不安の主な原因になっているという神話を正す必要がある。出生率を問題視することでは、世界における最も深刻な課題を解決することはできないでしょう。問題視されるべきは不平等です」と述べているんですね。
この世界人口白書についての認識をうかがいます。
少子化対策担当部長 「世界人口白書」では、少子化がすすむ国の女性と男性は、望む数の子どもを現実的に持つことができていないことがしばしばあり、家事、育児分担の男女差、経済不安など、多くの要因があるため、総合的なアプローチが必要と指摘をされております。
都は、望む人が安心して子どもを産み育てられる社会の実現に向けまして、幅広い取り組みを実施しているところでございます。
一人ひとりの人権が大事にされること
これが人口問題の基本
原のり子 この白書では、出生率を上げるということを目標に施策を実施して、失敗してきた国の事例などにも触れているんですね。少し読みますと、鍵を握るのは権利と選択だというふうに書かれていて、子どもの数、出産の間隔と時期を決めることは、すべての人々の基本的人権だと位置づけられています。
それで、「生殖に関する目標などを達成するためのサービスというのは、金銭的にも物理的にも手に届きやすく、国際基準を満たす品質でなければなりません」等々書かれていまして、「こうした目標が私たちがめざすべきものです。高いか低いかにかかわらず出生率に影響を与えることを目標とすべきではありません。実際、こうした介入は決して解決策にはなりません。本質的に適切な出生率や問題の出生率というものはないからです。適切なアプローチを取れば出生率がどうであれ、強靱な社会は繁栄することができる」というふうに書かれていて、「包摂的な社会をつくる、一人ひとりの人権が大事にされることこそ、人口問題の基本」だと強調しているんですね。
国や都の対策の方向性
見直すべきところは見直す必要がある
原のり子 やっぱりこういうものを読んでいきますと、改めて国や都の対策の方向性というのは、私は見直すべきところは見直す必要があるというふうに思っています。これは意見として述べて、今後も議論したいと思っています。
結婚から子育てに至る都民の意識調査
これはどういう調査なのか
原のり子 それで、ちょっと確認したいことは、9ページですけれども、ここに妊娠、出産に当たってはさまざまな不安があるということで、資料をここで引用しているんですね。これは、結婚から子育てに至る都民の意識調査というものが引用されています。これはどういう調査なのか、うかがいます。
少子化対策担当部長 調査を実施した政策企画局からは、都の子育て施策に係る広報の方向性を検討するための調査と聞いております。
都民に公開されていない意識調査
その一部を使って論点整理の根拠にするのか
原のり子 政策企画局から聞いているということですけれども、ただ、この資料を今回出された論点整理の根拠に活用しているわけですので、子供政策連携室ですから、子供政策連携室としてそういう判断をされているので、自分事として答弁していただければというふうに私は要望しておきたいと思うんですね。
この調査、実は公開されていないものなんですよね。ですから、この調査自体がどのぐらい設問があって、どういう人たちがその調査を受けていて、どんなふうな形で調査をしたかというのは、オープンにされていないんです。ですから、私が心配なのは、そういう調査、オープンにされていない調査の一部分を使って根拠にして公表するというのは、やはりちょっとこれは課題があるなというふうに思うんですね。
ですから、政策企画局にも公表してほしいということは求めたいですけれども、子供政策連携室としても、この政策の根拠にしていくのであれば、やはりすべての内容が公開されている資料をきちんと使っていくべきではないかと、そのことは指摘しておきたいというふうに思います。
子育て費用の支援として医療費助成があげられている
これには多摩格差がある どう考えているのか
原のり子 それで、今回の論点整理で大事だと思った点は、2ページのところに、子育てにはお金がかかるという課題を位置づけている点だと思うんですね。しかし、子育て費用の支援というふうに書かれて囲ってあるんですけれども、その中に医療費助成事業があるんですね。これは、医療費助成については多摩格差があります。これについてどう考えているかというのをお聞かせください。
少子化対策担当部長 福祉局からは、都は、この子どもの医療費助成事業について、子育てを支援する福祉施策の一環として、所得制限など一定の基準を設けた上で行っており、具体的な実施内容は、実施主体である区市町村がそれぞれの地域の実情を勘案し定めるものと認識していると聞いております。
住んでいるところによってサービスに差が出る
平等になるように都の姿勢が問われている
原のり子 たしかに施策の中身は福祉局です。今おっしゃったとおりだと思うんですけれども、それを論点整理の中に位置づけているのは子供政策連携室なので、今うかがったんです。
子育て費用支援の中にいくつもの事業が書かれているんですけれども、この中で、住んでいるところによってサービスに差が出るというのは、医療費助成事業だけだと思うんですね。誰一人取り残さないということを、知事も「こども基本条例」も位置づけているのですから、ここに載せる以上、平等になるように、広域自治体としての東京都の姿勢が問われるというふうに私は考えます。そのことは指摘しておきます。
有識者等からの意見聴取
子どもの貧困を研究している方から意見を聞いてほしい
原のり子 それで、論点整理の最後にうかがいますけれども、有識者ヒアリング、最後の24ページのところに18人の方々の名簿があります。この中に子どもの貧困について研究をしている方はいらっしゃるのでしようか。
少子化対策担当部長 今回の有識者ヒアリングは、総合的な少子化対策の検討に向けまして、社会学や人口学、経済学、雇用、労働など、幅広い分野の有識者を対象に実施したものでございます。
原のり子 今回の論点整理では、大きな特徴として子育ての経済的負担に着目をされているわけですよね。そうならば、子どもの貧困の実態を研究している方に話を聞くことは必要不可欠だと私は思います。今後、そうした研究をされている専門家にも意見を聞いていただくように、強く要望をしておきたいと思います。
常任委員会の新しい所属議員を紹介します
by hara-noriko | 2023-11-04 14:24 | 都議会 | Comments(0)