都議会厚生委員会質問(7)障害者医療費助成制度の改善求める
2024年 02月 28日
障害者医療費助成制度 もっと改善を
昨年11月、都議会厚生委員会で質問しました。7日は保健医療局の、16日は福祉局の仕事の内容(事務事業)について。その内容を順に紹介しています。すでに保健医療局への質問5回分を掲載しました。
福祉局に対しては(1)障害者医療費助成制度(2)依存症対策(3)摂食障害の治療支援―の3つの課題で質問しました。
連載の7回目は、障害者医療費助成制度を取り上げ、医療費の負担が重いため受診を控えている障害者がいることを示しながら、すべての障害者が必要な支援を受けられるようすることを求めました。
【原のり子のコメント】
障害者医療費助成制度の拡充を求める陳情は、前期、今期と連続で継続審査となっています。議会としては、継続して検討・調査していく責任があります。私は、厚生委員になったら真っ先にとりあげたい、と思っていました。障害者医療費助成制度の対象にならない人たちは、医療費3割負担を強いられています。そのため、受診控えをしている人も多い。その実態をしめしながら、今回初めて提起したのは、愛の手帳3度の人を対象にした場合、予算は7億円ぐらいでできるのではないか、ということです。16兆円もの財政力がある東京都。十分に可能な金額です。
全体として、きちんと質問にかみあわせた答弁が少なく、本当に残念な思いでしたが、今後につながる足がかりを得ることもできました。引き続きとりくみます。
医療費助成対象外の人から切実な声が
「1年間で医療費だけで10万円もかかった」
原のり子 3つの柱で質問します。まず最初に、障害者医療費助成制度についてです。
8月26日に行われた知的・発達障害児者の6団体による第17回東京大集会では、障害当事者の方々が暮らしや仕事、余暇などについて生きいきと発表され、たくさんのことを学びました。
ある方の発言の最後に、「健康で生きていきたい」と述べられました。健康は、自分らしく生きていく土台です。コロナ禍が続いてきたなかで、作業所の工賃も減ってしまったので受診回数を減らしている、あるいはコロナのなかで体調を崩した娘が1年間で医療費だけで10万円もかかった、私たち親も脳梗塞、がんと大病にかかり先行きが心配、など医療費助成制度の対象外になっている愛の手帳3度、4度の方をはじめ、医療費3割負担を強いられている方々、あるいは保護者から切実な声が寄せられています。
たえず制度をよりよくしていくことが大切
医療費の負担が重く受診を控えている障害者がいる
原のり子 障害者医療費助成制度の目的については、「心身障害者の医療費の助成に関する条例」の第1条で、「心身障害者に対し、医療費の一部を助成し、もって心身障害者の保健の向上に寄与するとともに、心身障害者の福祉の増進を図ることを目的とする」と書かれています。この目的にふさわしく、障害者の実態を踏まえ、よりよい制度に絶えず見直していくことが大切です。
それで、まず1点聞きます。医療費の負担が重いため受診を控えている障害者がいることについて、都は認識していますか。
福祉局事業調整担当部長 心身障害者医療費助成制度は、心身障害者の保健の向上と福祉の増進を図ることを目的に、重度障害者の医療費の一部を助成する福祉施策として実施しております。対象要件は、本制度と趣旨を同じくする所得税の特別障害者控除との整合性や、医療にかかる経済的負担が特に大きいことを踏まえ設定しております。
質問に答えていない 再度うかがう
受診を控えている障害者の存在を都は認識しているか
原のり子 質問にはまったく答えていない、そういう答弁だったと思います。私が聞いたのは、受診を控えている障害者がいることについて都は認識していますかということなんです。
もう一度うかがいます。障害者の受診控えについて、認識はありますか。
事業調整担当部長 心身障害者医療費助成制度の対象については、医療にかかる経済的負担が特に大きいことなども踏まえ設定しております。
答えないということは実態を知らないからか
実態を調査する必要があるのではないか
原のり子 答えていただけないということは、実態を知らないということなのでしようか。よりよい制度にしていくためには、実態を調査することが必要だと改めて思います。その点についてはいかがですか。
事業調整担当部長 障害者の生活実態につきましては、5年に1度、福祉保健基礎調査により把握しております。
福祉保健基礎調査
受診控えの実態は調べていないのですね
原のり子 この調査(福祉保健基礎調査)については、私も以前文書質問も行いました。そのときに、調査の目的について、都は生活実態を把握することにより、都における障害者施策の充実のための基礎資料を得ることと答弁しています。これで実態を把握という、いまご答弁ありましたけれども、これまでのこの調査では、受診控えの実態については特に調べてはいないんですね。
今回の基礎調査で
助成対象外の人たちの医療費自己負担を聞いているのか
原のり子 新しい基礎調査がつい先日まで行われていましたけれども、障害者本人や家族の方々からは、医療費助成の対象外の方に対し、医療費の自己負担について聞いてほしいという要望、意見も出されていました。
それでうかがいたいんですけれども、いまのお話だと、今回の実態調査で生活の実態がつかめるというお話だったんですけれども、5年に1度の今回の調査で、こうした医療費助成対象外の人たちの医療費の自己負担について聞いてほしいという要望についての新たな設問を設けたりとか、そういうことはあったんでしようか。ちょっと確認させてください。
事業調整担当部長 福祉保健基礎調査、障害者の生活実態では、障害の状況、健康医療、日常生活の状況、就労の状況、障害福祉サービスの利用状況等、都内に居住する障害者の生活実態を調査してございます。
なお、医療費につきましては、プライバシーに関する事項であり、正確に把握することは困難と考えて、今回の調査項目に入っては、医療費そのものは入っておりません。
医療費についての設問はない
医療費負担の大変さをぜひ調査してほしい
原のり子 入っていないということなんですよね。それで、ただ、福祉保健基礎調査はとても大事な調査だと、もちろん思っています。ただ、医療費の負担実態に関していえば、残念ながら、この調査だけはよく分からない、そういう可能性が高いということだと思います。
コロナ禍というこれまでにない状況のなかで、障害のある方たちはたくさんの困難を強いられてきました。工賃は減ってしまう。仕事がなくなる方もいらっしゃった。また、体を動かす機会が減って、病気が進行してしまう。こういうようなたくさんの困難の中で、医療費の負担はこれまでになく重くなっているというのが実態だと私は思います。
毎年、いくつもの障害者団体から、医療費助成制度の拡充、あるいは、この制度のなかじゃなくてもいいから、医療費の負担を軽減してほしいなどの要望が出されています。この要望は、毎年ただただ出しているわけではなくて、本当に切実で、特に今年、今回出されているのはコロナ禍をくぐっての要望ですから、より切実だということを指摘したいと思うんですね。ですから、福祉保健基礎調査とは別に、やっぱり実態調査、どれだけ医療負担が、医療費の負担が大変かという、受診控えが大変かという、そういう調査をしていただきたいと。このことは検討してほしいと思います。
障害の重さだけで医療費の負担の軽重を量ることはできない
すべての障害者が必要な支援を受けられるようにすべきです
原のり子 それで、実態把握が必要だと思うもう1つの理由は、障害の重さだけで医療費の負担の軽重を量ることはできないと思うからです。中度や軽度の障害の方であっても、年齢を重ねるなかで、たくさんの医療機関にかかる方はとても多いです。また、障害者の方は高齢化のスピードも速いといわれています。さらに、認定を受けている障害以外に、体に弱い部分をもっているケース、そういう方々もたくさんいらっしゃいます。
障害者権利条約に対する国連障害者権利委員会の勧告では、日本の障害者認定制度は機能障害と能力の評価に基づく医学モデルでありこれを見直して人権モデルに変え、すべての障害者が必要な支援を受けられるようにすることを求めています。その方向性に立って、都としても必要な人が受けられる制度に改善することを検討すべきと思いますが、いかがですか。
事業調整担当部長 国は、障害者の医療費について、医療保険制度のほか、障害者総合支援法による自立支援医療費の支給等により負担軽減措置を講じております。
加えて、都は、心身障害者の保健の向上と福祉の増進を図ることを目的に、所得税の特別障害控除との整合性や、医療にかかる経済的負担が特に大きいことを踏まえ、重度の障害者の方の医療費の一部を助成する心身障害者医療費助成制度等を実施しております。
正面から答えてもらえない
その人に必要な支援は何かという実態から考えてほしい
原のり子 これも正面からは何も答えてもらえていないんですけれども、障害の中度、軽度の方が医療費の負担が軽いわけではないんだということを私は本当に強調したいと思うんです。ですから、この勧告でも、その人に必要な支援は何かという実態から考えていくことの大切さを強調しているんですよね。そのことを都が認識して検討する必要があるということを指摘します。こういう制度というのは、実態を踏まえて、絶えず、よりよくしていくことが求められていると思います。
国連障害者権利委員会の勧告
との責任についてどう考えているか
原のり子 それでうかがいますけれども、この国連の勧告(国連障害者権利委員会の勧告)のことをいいましたが、この勧告を受け止めて施策に反映する都の責任についてどう考えていますか。
福祉局障害者施策推進部長 令和4年(2022年)9月の障害者権利委員会の勧告については、今後、国において、その対応を検討していくものと認識してございます。
国が動かなければ都はなにもしない?
締約国の責任のなかには地方公共団体も位置づけられている
原のり子 都の主体性というのはないんでしょうか。国が動かなければ都は何もしないというわけではないはずだと思うんですよね。
条約締約国の責任のなかには地方公共団体も位置づけられています。条約を批准しているのは国ですけれども、社会的なバリアを解消していくという、その条約の実現に向けて、国が取り組まなければならないのは当然ですけれども、都道府県も区市町村も取り組んでいく主体です。条約に関係する施策の多くは地方自治体が主体になっていて、国とともに都道府県や区市町村が取り組まなければ、条約や勧告の内容を実現することはできません。
都が勧告の内容を踏まえて改善する立場に立つ
これは当然のことではないか
原のり子 障害者医療費助成制度を含めて、都として実施している施策をすすめていくのに当たっては、勧告の内容を踏まえて改善していくという、そういう立場に東京都が立つのは当然ではないでしようか。いかがですか。
障害者施策推進部長 今後、国の動向を注視しながら対応していきたいと考えております。
原のり子 主体性をもって取り組んでいただきたいというふうに思います。
障害者権利条約
都としても大事な指針だという認識はあるか
原のり子 もう1つだけ聞きたいんですけれども、では、いま、勧告のことを聞きましたけれども、障害者権利条約そのもの、この条約は、都としても障害者施策を進める上での大事な指針だという認識はありますか。
障害者施策推進部長 条約云々にかかわらず、障害者が安心して暮らせる地域をつくっていくのは東京都の責務だと認識しております。
「条約云々にかかわらず」 答弁として大丈夫でしょうか
条約と勧告を踏まえて、医療費助成を拡充すべきです
原のり子 「条約云々にかかわらず」というのは、ちょっと大丈夫でしようか、答弁として。やっぱり憲法があり、こうした批准した条約があり、そういうなかで、本当にこう施策を充実させていく、都民の暮らしを守っていく、障害者のみなさんの暮らしを守っていくということが大事だというふうに思うんですね。
それで、国際人権規約の自由権規約第2条に関する一般的意見というのがありますけれども、そこでは、政府のすべての部門および他の公的もしくは政府機関は、全国、地域、もしくは地方といかなるレベルにあっても、締約国の責任を引き受ける地位にあると述べています。ですから、障害者権利条約についてもこれが当てはまると考えるべきであり、条約と勧告を踏まえて、医療費助成を拡充するということを私は強く求めたいと思います。
障害者団体などが毎年、医療費の負担軽減を要望
都はどのような検討をしているのか
原のり子 先ほども述べましたけれども、障害者団体等からは毎年、医療費の負担を軽減することについて都に要望が出されています。それらはどのような検討がされているんですか。
事業調整担当部長 障害をおもちの方が地域のなかで生活を送る上で、医療費をはじめとする負担が大きいことなど、さまざまなご意見があるということは承知しております。都は、所得税の特別障害者控除との整合性や、重度心身障害者の医療にかかる経済的な負担が特に大きいことを踏まえ、平成31年度(2019年度)からは、身体障害者手帳1級、2級および内部障害3級、愛の手帳1度および2度の方に加え、精神障害者保健福祉手帳1級の方も心身障害者医療費助成制度の対象としております。
「さまざまなご意見があることは承知している」
困難を解決するための検討をすすめてほしい
原のり子 「障害をおもちの方が生活していく上で、医療費をはじめとする負担が大きいなどさまざまなご意見があるということは承知しています」というご答弁でもあり、また、精神障害の1級の方を新たに対象にするなど、必要に応じて改善もされてきているわけですよね。
都議会では、障害者医療費助成制度の拡充を求める陳情が継続審査になっていますし、障害者団体はそれぞれ、医療費助成制度の拡充や医療費の負担軽減を都に要望し続けています。医療費をはじめとする負担が大きいなどのご意見があることは承知していると先ほどもおっしゃっていただきました。実際に、そうした困難を解決していくための検討をすすめることを強く求めたいと思います。
共産党都議団の調査
都内3自治体で上乗せが実施されていることを把握しているか
原のり子 共産党都議団としては、この間、都内区市町村に調査を行い、その結果、都内で3自治体が制度の上乗せを実施しているということが分かりました。これらについて把握していますか。
事業調整担当部長 都内の一部の区市において、自主事業として、都の制度に上乗せして心身障害者を対象とした医療費助成を実施していることについては承知しております。
杉並区、府中市、武蔵村山市
都がカバーできていないところを補っている
原のり子 都内3自治体ですので、やはり少ないわけですけれども、例えば杉並区では、都が制度化する前年、1973年に障害者医療費助成をスタートしていて、翌年、都制度ができたときに、その制度のなかでは対象になっていなかった愛の手帳3度の方と、脳性麻痺、進行生筋萎縮症の方を引き続き対象にするということになって、それが継続しているそうなんですね。2045万円ほどの予算と聞いています。
また、府中市も、都制度でカバーできていない所得制限の緩和を行ってきて、また、武蔵村山市は、愛の手帳3度、4度と、それから、身体障害者手帳6級までの18歳未満の子どもたちを対象にしてきたということです。
都のどこに住んでいても医療費負担が軽減されるよう
7億円ぐらいでできる 東京都として検討する必要がある
原のり子 でも、それぞれ住民のために必要だということで助成を行っているわけですが、しかし、他の自治体に住んでいる方にとっても同様の支援は必要だというふうに思います。もし杉並のように愛の手帳3度の方などを対象にした場合、これを東京全体で実施をしたらどうなるかと、ざっくりと計算をしてみると、7億円ぐらいでできるのではないかと私は想定しています。
東京都は、広域自治体として、都内のどこに住んでいても医療費負担が軽減されるように検討する必要があると思いますが、いかがですか。
事業調整担当部長 心身障害者医療費助成制度は、都が条例を制定し実施しておりまして、重度心身障害者の医療の困難性生と、その経済的な負担が大きいことに着目し、その医療費の一部について助成を行っているものでございます。
子ども医療費無料化 18歳まで対象になった
障害者の医療費助成制度も拡充すべきです
原のり子 子どもの医療費助成制度については、18歳まで対象になりました。医療は命に関わることですから、とても大事な拡充だと思っています。まさに広域自治体として、重要な判断を東京都はしたと思っています。もちろん、多摩格差をどうするかとか、都としての財政負担の継続など、課題はいろいろありますけれども、それにしても踏み出したことは重要です。
そうであれば、常に医療と切り離せない障害者についての医療費助成制度も拡充すべきではないでしようか。毎年、各障害者団体から要望が出ているということは、それだけ切実だということです。都は、障害者医療費助成制度は重度障害者が対象だと繰り返しますが、私が冒頭に引用したように、条例の第1条の目的、ここに照らして必要な拡充を行うべきです。
こうしたところにも足を運んで話を聞いてほしい
原のり子 先日、知的障害の青年、成人の方たちの余暇支援の場にうかがいました。自分の体の不調や変化について学び、医療の必要性や医療費のことを自分たちで勉強して理解をしていく連続学習の取り組みを行っていました。障害者ご本人が権利の主体として、自ら理解をした上で医療を受けられるようにしていく、とても大切な取り組みだと思いました。ぜひこうしたところにも足を運んでいただいて、話を聞いていただく、こういうことをやっていただけるように求めておきたいと思います。
(1)保健所の体制強化
(2)保健所での障害者健診 充実・継続を
(3)多摩北部医療センターの充実急いで
(4)感染症対策の強化を
(5)市販薬の過剰摂取 悩んでいる人に寄り添った支援を
(6)市販薬の過剰摂取などの依存症対策
by hara-noriko | 2024-02-28 20:16 | 都議会 | Comments(0)