都議会予算特別委員会質問(1)子ども・若者支援
2024年 04月 12日
子ども・若者への支援強化を
都議会第1回定例会の予算特別委員会で質問に立ちました(3月13日)。質問は▽子ども・若者支援▽補聴器補助▽学校プール▽多摩地域の保健所―の4テーマです。質疑の内容を順次紹介します。最初は、子ども・若者支援です。市販薬の過剰摂取など、依存症・アディクションなどに悩む子どもや若者たちへの支援を強化することを求めました。
【原のり子のコメント】
先行きの見えない社会のなかで、子ども・若者の生きづらさはかつてなく深刻になっています。それは、1月26日に発表された、2023年の小中高生の自殺者数が507人、2022年が過去最多の514人でしたが、引き続き多いことにもあらわれています。また、不登校の人数も増え続けています。どうしたら、子どもたちが希望をもって生きていけるようにできるのか、自己責任論や個人の問題に解消せず、真剣に検討することが必要です。
私は、都がオーバードーズ(市販薬の過剰摂取)についての取り組みを予算案のなかで位置付けましたが、ブームのようにとりあげたり、子ども・若者の本当の声を聞かずに進めては困る、と思い、考え方をどうしても確認したいと思い質問しました。とくに、知事に、依存症についての考え方を確認する必要があると考えました。私の質問に知事は1問しか答弁に立ちませんでしたが、そこで、誰もがなりうること、回復できることに触れたことは大事でした。
共産党都議団は、予算特別委員会全体の質問について、あぜ上三和子都議をコーディネーターに、米倉春奈都議、事務局メンバーにかかわってもらい練り上げました。都立多摩総合精神保健福祉センター(東京都多摩市)には、里吉ゆみ都議、池川友一都議、事務局メンバーと一緒に視察して学びました。
また、精神科医のヒアリングや若い女性たちに声を聞かせていただきました。心から感謝しています。悩んでいる人たちやご家族に、必ず回復できる、精神保健福祉センターなどに相談してほしいと伝わることを願っています。引き続きとりくんでいきます。
市販薬の過剰摂取など、依存症・アディクション
子どもや若者の捉え方を間違えると逆効果に
原のり子 初めに、子ども・若者支援についてうかがいます。
都は、来年度予算案(2024年度予算案)の中で、あらゆる危険から若者を守る取り組みとして、子ども、若者を取り巻く課題への対応を進めるとし、具体的には、トー横キッズ、悪質なホストクラブ、オーバードーズについて効果的な取り組みをするとしています。
オーバードーズ(OD)=市販薬の過剰摂取を位置づけたことについて、大事なことだと思う反面、市販薬ODをはじめ、摂食障害、自傷行為など、依存症、アディクションに悩む子ども、若者たちのことをどう捉えているのか、都が問われていると思います。この捉え方を間違うと、まったく逆効果になることも考えられます。
本人に問題があると見るのか
子どもの生きづらさに着目するのか
原のり子 アルコールや薬物など物質に対する依存、ギャンブル、自傷行為、摂食障害、インターネット、人間関係など、非物質系の行動、行為についての依存があります。アルコールや薬物、ギャンブルだけでなく、やめたくてもやめられない状態は広くあり、依存症、アディクション=嗜癖(しへき)と呼ばれています。意思が弱いからはまっているわけではなくて、適切な支援と治療が必要です。
まず、知事にうかがいます。
市販薬の過剰摂取、オーバードーズをはじめ、依存症、アディクションを抱えている子ども、若者たちへの支援は重要です。大事なのは、子ども、若者をどう見るかです。
市販薬ODをはじめ、依存症、アディクションを抱えている子ども、若者たち本人に問題があると見るのか、それとも、子どもや若者の生きづらさに着目するのか、知事はどう認識していますか。見解をうかがいます。
小池知事が答弁 「誰でも依存症になる可能性がある」
「適切な支援により回復することができる」
小池知事 依存症を抱える方への支援についてのご質問でございます。
依存性のある物質摂取、また依存行為が習慣化いたしますと、年齢や性別、社会的立場などにかかわりなく、誰でも依存症になる可能性があるといわれております。そして、適切な支援により回復することができるとされております。
都におきましては、依存症の相談拠点でございます都内3カ所の精神保健福祉センターにおきまして、本人や家族などからの相談に応じ、適切な治療や支援につなげているところでございます。
原のり子 誰でもなり得る、同時に回復もできるということに触れられての答弁で、大事だと思います。
本人の意思が弱いせいだ、という誤解がある
正しい理解と啓発を強めることが大事
原のり子 依存症、アディクションについては、本人の意思が弱いせいだという誤解があり、自己責任論的な見方が強くあります。正しい理解と啓発を強めることが大事だと思いますが、見解をうかがいます。
福祉局長 都は、都民が依存症に関する正しい知識を身につけられますよう、ホームページやリーフレットによる情報発信を行うほか、依存症治療の専門家による講演などを内容とした依存症対策フォーラムを開催するなど、普及啓発を行っているところでございます。
苦しんでいる20代の方々に話をうかがった
苦しい気持ちを何とかしたいと思いながら
原のり子 この間、数人の市販薬ODと他のアディクションを併せ持っている20代の女性の方々にお話をうかがいました。何人かの方のお話を紹介します。
ある方は、中1のときに死のうと思って薬を飲んだことが最初で、その後、大学3年生から市販薬ODをするようになった大学院生の方です。大学院に入った後、突然学校に通えなくなり、精神科を受診し、その後、継続して通院しながら、ODや自傷行為と向き合っています。
また、ある方は、10代のときの性被害や、それに伴う大人たちのセカンドレイプによりPTSDになり、苦しさをずっと抱えています。処方薬ODをしていたが、眠くなってしまうので、仕事や日常生活を送るために市販薬ODをするようになったといいます。やはり主治医と相談しながら依存症と向き合っています。
また、ある方は、新卒で福祉施設に就職し、夜勤があるため、それまで飲んでいた睡眠薬を飲めなくなり、眠れなくなってしまった。何とか仕事をするためにしゃきっとしようと市販薬を飲むようになり、徐々に過剰摂取になってしまい、体中のかゆみや幻覚が出るようになってしまった。医師から当事者を支援する団体などにつないでもらって、孤独でなくなり、薬物依存に向き合うことができるようになったと話しています。
みなさん真面目で優しい人たちです。苦しい気持ちを何とかしたいと思いながらODをしているんです。
子どもや若者の声を聞くことが必要
都として実態調査を実施する必要がある
原のり子 市販薬ODの世間の見方について、楽しむためにやっていると思われているのではないかとも話していました。しかし、ODの理由のトップが、ひどい精神状態から解放されたかったからで72.6%であったと書かれている論文もあります。やはり若者や子どもの声を聞くことが必要だと実感しました。
市販薬ODをはじめ、依存症、アディクションが子どもや若者の中にどのぐらい広がっているのか、都として実態調査を実施する必要があると思います。この場では強く検討することを求めておきたいと思います。
都の宣伝物をよりよくしていくことが必要
「ぜひ相談してほしい」「回復できる」のメッセージを
原のり子 この依存症、アディクションについて正しい理解を増進するためには、都の宣伝物をよりよくしていくということが重要です。
薬物乱用防止を啓発する現在の東京都の保健医療局のリーフレットを、子ども、若者に届くように、不安なことをぜひ相談してほしい、回復はできるというメッセージを強く押し出したものに改善すべきと考えますが、いかがですか。
保健医療局長 都は、薬物乱用対策推進計画に基づき、関係機関や地域団体と連携した啓発活動、規制や取り締まり、相談支援体制の充実など、総合的な薬物乱用防止対策を行っております。
子どもや若者に向けた啓発につきましては、薬物乱用による危険性などを伝えるとともに、不安や悩みを相談できる公的機関をホームページやリーフレット等で周知しており、来年度は、医薬品の適正使用に関する教材の作成、配布など、若年層を対象とした普及啓発を充実することとしております。
薬についての正しい知識とともに
「回復できる」ということも伝えて相談につなげてほしい
原のり子 若年層を対象とした普及啓発を充実するということはとても大切だと思います。
現在改定中の薬物乱用防止計画の案でも、乱用の背景にはさまざまな悩みや生きづらさがあると考えられ、早めに専門相談機関に相談することの重要性を伝えるなどの取り組みの必要性について、繰り返し繰り返し述べられています。ぜひその視点を踏まえ、薬についての正しい知識とともに、回復できるという、これもまた正しい知識ということになりますが、そうしたことをきちんと伝えて、相談につながるようにしていただきたいと思います。
また、リーフレットは違法薬物への依存と市販薬への依存が横並びになっているんですけれども、薬の特性を踏まえたものに、より改善し、若者が受け止められるように工夫することを求めておきたいと思います。
精神保健福祉センターのリーフレット
子ども・若者版を作成して配布してほしい
原のり子 あわせて、精神保健福祉センターのリーフレットについてもうかがいます。
市販薬や処方薬のOD、オーバードーズについて、基本的な知識と同時に、相談を呼びかけ、回復できるということを分かりやすく伝えています。このリーフレットの子ども、若者版を作成し、子どもたちに配布することを求めますが、いかがですか。
福祉局長 精神保健福祉センターでは、市販薬、処方薬の乱用、依存に係るリーフレットを作成しておりまして、児童生徒からの相談などに活用するため、区市町村の教育相談部門や都立高校等に配布をしております。
都立高校に配布していることは重要
全員に行き渡るようにしてほしい
原のり子 都立高校等に配布しているということは重要です。重要ですけれども、漏れなく全員に行き渡るようにしてほしいと思います。それはなぜかというと、相談があったときだけ渡すとか、何人かピックアップして渡すというやり方では駄目だと思うんですね。
今どのぐらいの子供たちがODをしているかというのが分からない、そういう中で、本当にみんなに渡して、例えば自分でなくても、友達が悩んでいるということで胸を痛めている人もいます。そういうときにリーフレットを見て、あ、ここに相談すればいいんだなと分かるということもとても大事です。ですので、みんなに、全員に行き渡るようにしてほしいというふうに思います。
薬物乱用防止教育は小学校、中学校でも実施されている
リーフをすべての子どもに配布することを検討してほしい
原のり子 同時に、薬物乱用防止教育は小学校、中学校でも実施されています。私は、このリーフの内容をすべての子どもを対象に配布することが大事だと思います。ぜひ検討していただきたいと思います。
学校での薬物乱用防止教育
市販薬ODについてどのように扱われているのか
原のり子 では、学校での薬物乱用防止教育では、市販薬ODについてどのように扱われているのでしょうか。うかがいます。
教育長 現在、小中高等学校の児童生徒は、保健の授業において、医薬品の正しい使用方法を含めた薬物乱用による健康被害について学習をしています。
また、薬物乱用防止教室において、医薬品の正しい使用方法を取り扱っている学校もあります。
市販薬の乱用経験 高校生60人に1人の推計も
相談先を知らせ、「回復できる」のメッセージを
原のり子 学校の授業や薬物乱用防止教室というのもやられていて、この薬物乱用防止教室実施率、東京都、高いというふうに思うんですね。
この教室の講師というのは、いろんな方々が講師になられています。学校の要請によって、警察の関係の方であったり、薬剤師さんであったり、いろいろな方が講師になっています。
私は、どういう方が講師になられていても、そのときに精神保健福祉センターのリーフの子ども、若者版を渡せるようにしたらよいと思っているんです。なぜなら、先ほども少しいいましたけれども、目の前の子どもたちの中には既にODをしている子どももいる可能性が高いからです。
国立精神・神経医療研究センターの全国高校生調査では、過去1年以内に市販薬の乱用経験があると答えている高校生の割合が約60人に1人と推計しています。その子たちに絶対駄目、一度でも手を出したら戻れないなどのメッセージだけが伝わってしまうと、ますます自分を責めて相談できなくなります。相談先を知らせ、回復できるとメッセージを伝えることが重要だと思います。
相談先の拠点は精神保健福祉センター
電話は無料に LINE相談の実施も必要ではないか
原のり子 では、その相談先はどこか。それは、最初の知事のご答弁にもありましたけれども、相談先の中心は依存症の相談拠点になっている精神保健福祉センターです。子どもたちがここに直接相談できるということをぜひ周知していただきたいと思います。
そして、精神保健福祉センターに相談しやすいように、電話は無料にすること。また、子ども、若者のLINE相談も実施をすることが必要だと思いますが、いかがですか。
福祉局長 精神保健福祉センターでは、依存症に関する相談につきまして、当事者または家族の状況等を正確に把握し、状況に応じた適切な治療や支援などにつなげていくため、対面実施を基本としております。
なお、電話相談のフリーダイヤル化については考えてはおりません。
相談電話の無料化は考えていない、という答弁だが
ぜひ検討していただきたい
原のり子 考えていません、と。ちょっと冷たいなと思いましたが、困って電話をするときに、短時間で上手に話すというのはとても難しいと思うんですね。無料化は考えていないということですが、私はぜひ検討していただきたいと思います。
少しでも早く相談につながることが重要
LINE相談でハードルを下げる
原のり子 そして、LINE相談を検討する必要があると思います。まず、相談の最初のハードルを下げることが必要だと思うんです。依存症を専門とする精神科医にもうかがいましたが、少しでも早く相談につながることが重要だといっています。
市販薬ODは、先ほど紹介した20代の女性たち、紹介しましたけれども、この方たちも公的機関に相談するということはまったく考えたことがなかった、相談できるところがあるとも知らなかったと話しています。少なくともLINE相談を実施して、それを周知すれば、格段に相談拠点が身近になるのではないでしょうか。
都は子ども・若者を対象にLINE相談を実施している
依存症、アディクションについても実施すべきです
原のり子 他の相談でも、今東京都は、子ども、若者を対象にLINE相談を進めていますよね。先ほど答弁がありませんでしたが、依存症、アディクションについても若者向けにLINE相談を実施すべきと考えます。もう一度うかがいますので、検討を求めますが、いかがですか。
福祉局長 精神保健福祉センターでは、依存症に関する相談につきまして、当事者または家族の状況などを正確に把握し、状況に応じた適切な治療や支援などにつなげるため、対面実施を基本としているところでございます。
原のり子 LINE相談だったら子どもや若者たちはつながりやすいわけです。そのことが分かっているから、東京都ではほかの分野でもLINE相談を増やしているわけですよね。
特にその依存症の問題では、本当に人にいえないという、そういう子どもたちの、若者たちの思いに寄り添えば、やっぱLINE相談、必要だというふうに思います。ぜひこれは検討していただきたいと強く求めておきたいというふうに思います。
市販薬ODの相談 どれだけ充実していくかは必須課題
早く相談でき適切な医療機関につながることが大事
原のり子 都として、市販薬ODにも着目して施策を進めようとしているんですから、相談できるように、どれだけ充実させていくか、これが必須なわけですね。
先ほど、新卒で福祉現場に就職した方の話を紹介しましたけれども、その方はこうもいっています。新卒の当時は誰にも相談できず孤立し、薬に支配される日々だった。それを経て今思うのは、誰にも相談できないと感じてしまったときに、その人が必要とする公的サービスにつなげてあげる支援があるといい、といっています。ぜひ急ぎ検討していただきたいと思います。
また、市販薬ODは、影響がどう出てくるのか分からない怖さもあります。そのときの体調によって薬の影響が強く出てしまい、体を壊したり、中には命を落とす場合もあります。また、急にやめた場合の離脱症状も心配です。
ですから、早く相談できて、早く適切な医療機関につながることが大事なんです。LINEなど、相談体制の拡充を強く求めておきます。
精神保健福祉センター 広い多摩地域に1カ所
支所をつくるなど増設・拡充が必要ではないか
原のり子 そして、精神保健福祉センターは23区には2カ所ありますが、広い多摩地域に1カ所は少なすぎます。先ほど、相談は対面実施が基本だといわれました。来所して相談をするということになった場合、センターまでは遠過ぎる地域が多くあります。そういう自治体ではセンターを頼ることができません。
支所をつくるなど、増設、拡充が必要ではないかと思いますが、いかがですか。
福祉局長 精神保健福祉センターは、精神保健福祉法の規定に基づきまして、都道府県及び政令指定都市が設置することとされておりまして、都では区部に2カ所、多摩地域に1カ所を設置しております。
大事なのは相談する立場に立って充実すること
対面実施が基本といいながら、遠くて行けないとは
原のり子 それは分かって聞いています。大事なのは、相談する人の立場に立って、都として充実することが必要ではないですかということです。しかも、この対面実施が基本だといわれたのですから、この遠くて行けないという問題は、やっぱり解決しないといけないというふうに思います。
都が来年度予算案で市販薬ODも位置づけ、そして、子ども、若者の依存症、アディクションについての相談、これから本人だけではなく、家族や、また保護者からも増えていく可能性もあると思うんですね。増えてくれないと困ると思うんです。相談できるということで増えてくれればいいなと思うんですね。ですから、今ここで求めているわけです。
保護者、家族の支援を強める重要性
知事はどう認識しているか
原のり子 子ども、若者の依存症、アディクションについて安心して相談できることなど、保護者、家族の支援を強める重要性について、知事はどう認識しているか、うかがいます。
福祉局長 都では、都内3カ所の精神保健福祉センターが依存症の相談拠点として、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症につきまして、本人や家族などからの相談に応じておりますほか、家族が正しい知識や対処法を学ぶ家族教室を実施しております。
保護者の方々にも「自分を責めないで」と
家族教室などを案内してもらいたい
原のり子 保護者の方々にうかがうと、自分の育て方が悪かったからではないかとご自分を責めています。でも、そうではなくて、どんなに愛情深く育てて、家族が仲がよくても、子どもは社会の中で生きているのですから、さまざまな傷を負う場合があります。大好きな家族だからこそいえずに、1人でODをしながら学校に通っているという子どもさんもいます。保護者の方々にも、自分を責めないでとメッセージを送り、家族教室などを案内してもらいたいと思います。
ここに通うにも、やはりセンターが多摩に1カ所では足りないと。増設や拡充がどうしても必要だと指摘し、次の質問に移ります。
(1)子ども・若者支援 市販薬の過剰摂取など依存症・アディクション
(2)補聴器購入補助 多摩格差をなくし全自治体で実施できるように
(3)学校プール 防災の観点からも重要な役割 都の支援を求める
(4)多摩地域の保健所 強化と増設の検討を行うことを強く求める
職員の方たち(右側)からさまざまなことを学びました
(左から)里吉ゆみ都議、原のり子、池川友一都議
by hara-noriko | 2024-04-12 15:57 | 都議会 | Comments(0)