都議会厚生委員会質問から(6)社会的養護の施設等について
2024年 04月 24日
社会的養護の施設などの課題について
都議会第1回定例会の厚生委員会で質問に立ちました。3月18日の福祉局への質問を順次紹介しています。テーマは、▽医療型障害児入所施設について▽社会的養護の施設等について▽困難な問題を抱える女性への支援―の3つです。今回は、社会的養護の施設を取り上げ、都として児童心理治療施設を設置することや、職員のメンタルケア、居住支援特別手当の改善、多摩児童相談所の改善を求めました。
【原のり子のコメント】
都に児童心理治療施設がないことが、児童養護施設の負担を重くしていないか…。困難を抱えた子どもたちが、苦しんでいないか…。という問題意識のなか、質問をしました。結局、なぜ、都内に児童心理治療施設を設置するという判断をしないのか、繰り返し質問しても答弁されないので、明確な理由がわかりません。他の問題でもそうですが、なぜ、やらないならやらないその理由を言わないのでしょうか。議論が成り立たないです。
児童相談所の増設については、多摩児童相談所の改善がはかられない問題について指摘し、調布市でもせめてサテライトオフィスの設置をと強く求められていることについての対応を求めました。「サテライトオフィスや子供家庭支援センター分室の設置など、都と区市町村との連携強化策について議論を行っておりまして、今後とも地域の実情に即したよりきめ細かな児童相談体制の構築に努めてまいります」との答弁は、当然のこととはいえ、確認できよかったですし、迅速にとりくむことを強く求めました。
今回質問にあたって、児童養護施設職員の方のお話しを聞かせていただいたり、児童養護施設もたずねました。写真は、調布学園です。田村ゆう子調布市議会議員に同行していただきました。ありがとうございました。
専門機能強化型児童養護施設の設置数は
推移と役割についてもうかがいたい
原のり子 次に、社会的養護の施設等についてうかがいます。
現在、東京の児童養護施設のうち、専門機能強化型児童養護施設の設置数、またその推移、役割について、まずうかがいたいと思います。
子供・子育て支援部長 都は虐待などを受け、治療的、専門的ケアが必要な児童への適切な支援を行うため、専門機能強化型児童養護施設制度を実施しております。
過去3年間の指定数は、令和3年度(2021年度)が41施設、令和4年度(2022年度)が39施設、令和5年度(2023年度)は同じく39施設でございます。
多くの児童養護施設が専門機能強化型に
受け入れが困難なケースも多いと聞くが
原のり子 専門機能強化型の施設とは、施設で生活する子どもたちに対してより専門的な支援を提供するために、生活単位の小規模化、それに伴う職員配置、精神科医や心理職員の配置、外部機関を活用した施設運営の向上の取組をするというふうになっていると思います。
今、東京の多くの児童養護施設が専門機能強化型になっているという状況だと思います。
しかし児童養護施設では、児童相談所からの入所依頼について、既に入所中の児童と生活をともにすることが難しく、受け入れが困難なケースも多いと聞きます。
都としては、こうした状況を把握していますか。都としてどのような支援を行っていまますか。
子供・子育て支援部長 児童養護施設には、虐待を受けた児童や発達障害など支援が必要な児童が多く入所しておりまして、都は知的障害や発達障害等の個別的な援助が必要な児童のケアを行う施設を支援しております。
さらに精神科医等、心理職を配置し、専門機能を強化した児童養護施設に対する支援も行っているところでございます。
児童心理治療施設に入ることが適切と考えられる場合
都はどのように対応しているのですか
原のり子 児童養護施設にお話をうががいますと、目が離せないような子どもさんもいて、その分、元から入所している子どもたちが不安定になってしまったり、落ち着かなくなってしまったケースなどもあるということを聞いています。心理治療施設に入れればよいのにと思うケースもあると話しています。
また、一時保護委託を受けた施設でも、事前に子どもの様子が十分わからない中で受けることもあって、入所児童との折り合いで難しいケースもあると聞きます。
この場合でも、一時保護委託を受けるための条件整備の必要性とともに、児童心理治療施設に入ることが適切ではないかと思うこともあるということもうかがっています。
この児童心理治療施設とは、心理的困難や苦しみを抱え、日常生活の多岐にわたり生きづらさを感じて心理治療を必要とする子どもたちを、入所あるいは通所して治療を行う施設ですが、児童心理治療施設に入ること、活用することが適切だと考えられる子どもの場合、現在、都ではどのように対応しているのか、うかがいます。
子供・子育て支援部長 児童相談所は、子どもの年齢や発達状況に応じて、子どもの最善の利益の観点から施設入所や里親委託などの援助方針を決定しております。
児童心理治療施設を都に設置することが必要ではないか
都として検討しているのかどうか
原のり子 しかし、その結果、今日の要求資料にもありますけれども、都外の児童心理治療施設に入所する子どもたちもいるわけですよね。
児童心理治療施設を都に設置することが必要ではないかと思いますが、都として検討していないのかどうか、うかがいます。
子供・子育て支援部長 都は知的障害や発達障害等の個別的な援助が必要な児童のケアを行う施設を援助しておりまして、さらに精神科医と心理職員を配置し、専門機能を強化した児童養護施設に対する支援も行っております。
また、入所児童が問題行動などにより集団での生活が難しくなった場合には、児童相談センター治療指導課におきまして、専任の医師や心理職による認知行動療法や心理教育などの専門的なケアを実施しております。
来年度(2024年度)は、治療指導課の体制を強化し、児童養護施設等へのコンサルテーションを強化するなど、ケアニーズの高い児童に対する専門的支援の機能を拡充いたします。
児童心理治療施設
都として設置しなくてもカバーできると考えているのか
原のり子 来年度(2024年度)、治療指導課、充実させていくというその方向性は大事だなというふうに思って聞きました。
でも一方でうかがいたいのは、今ご答弁にあったような対応で、児童心理治療施設を東京都として設置しなくてもカバーできるというふうに考えているのかどうか、教えてください。
子供・子育て支援部長 繰り返しになりますが、都は個別的な援助が必要な児童のケアを行う施設を支援しているほか、精神科医等心理職員を配置し、専門機能を強化した児童養護施設に対する支援も行っております。
また、児童相談センター治療指導課において専門的なケアを実施しておりまして、来年度は体制を強化し、専門的支援の機能を拡充してまいります。
原のり子 また繰り返しなんですけれども、ということはカバーできるって考えているのかなというふうにちょっと想像するしかないんですけれども、ちょっと残念だなというふうに思います。
本来、都内にあるべきです
ぜひ検討していただきたい
原のり子 実際には都外の施設も活用しているわけですから、本来都内にあるべきなのではないかというふうに思います。
実際には都外施設も断られているケースもあると聞いています。
首都東京において児童心理治療施設がないということは理解しがたいという専門家の指摘もあります。これは検討を求めておきたいと思います。
子どもたちの困難が増加、複雑化
職員のメンタルケアが大きな課題に
原のり子 児童養護施設の職員の方々にお話をうかがうと、本当に今、苦労されていまして、コロナ禍の中、生きる気力を失ったような子どもたちが増えているという話。また、施設の子どもたちの中に不登校が増えているということを話してくださった方もいらっしゃいました。
一人ひとりに丁寧に向き合わないといけないと今まで以上に感じることが増えているといっています。
その分、職員の負担が増しているわけですよね。
子どもたちの困難が増加、複雑化する中で、子どもによっては職員に対して罵声を浴びせ続けるというような状況になっている子どもさんもいて、そこに本当に胸を痛め疲弊をしながら、つらいと感じてしまう自分を職員の方は責めて、結局、自分自身がメンタルが不調になってやめていくというケースもあるとうかがいました。
ある施設でも、職員のメンタルケアが今、大きな課題になっていると話していました。
介護職員等の処遇改善のための居住支援特別手当
ケア労働者全体を支えるように改善してほしい
原のり子 私はそうした中で、今回、東京都の介護職員等の処遇改善のための居住支援特別手当がありますけれども、これ本当によかったと思っているんですけれども、児童養護の職員が対象になっていないということは本当に残念で、やっぱりケア労働者全体を支えるように改善してほしいという意見をこの場で述べておきたいというふうに思います。
多摩地域の児童相談所が再編成されて増えることに
82万人をかかえる多摩児童相談所だけ変わらないのはなぜ
原のり子 続いて、今の児童養護施設とも関連するんですけれども、多摩地域の児童相談所についてうかがいたいと思うんです。
多摩地域の児童相談所が再編成され増えることになりましたが、多摩児相だけは変わらず、82万人の、管轄人口でいちばん多くなってしまっています。なぜ変更がなかったのかうかがいます。
子供・子育て支援部長 国の政令では、児童相談所の管轄人口は、基本としておおむね50万人以下とされており、国の通知において、20万人から100万人までの範囲が目安とされております。
都はこれらの政令等に基づきまして、人口のほか、地理的条件、交通事情等を総合的に考慮し、多摩地域児童相談所設置計画を策定しております。
おおもとの政令ではおおむね50万人以下
早い時期再検討することを求めたい
原のり子 大元の政令ではおおむね50万人以下となっているわけですから、やはり82万人というのは多すぎるというふうに思います。
地元からも増設を求める声が出ていましたけれども、計画では多摩児相の地域はそのままとなってしまいました。
策定に向けて都が行った調査の報告書では、児童虐待相談の対応件数が著しく増加した場合や、人口動態の状況により児童相談所の業務が逼迫した場合、多摩児童相談所の老朽化対策が必要となった場合等には、中長期的には多摩児童相談所の設置場所等を見直すことが想定されるとありますが、早い時期に再検討することを求めておきたいと思います。
「せめてサテライトオフィスを」 調布市からも要望が
早急に検討をすすめて設置につなげてほしい
原のり子 児童相談所が当面増えないとされた中で、せめてサテライトオフィスを設置してほしいという声も出されています。
調布市からは、サテライトオフィスの設置を要望されていますけれども、進捗をうかがいます。
子供・子育て支援部長 現在、全区市町村が参加しております児童相談体制等検討会において、サテライトオフィスや子供家庭支援センター分室の設置など、都と区市町村との連携強化策について議論を行っておりまして、今後とも地域の実情に即したよりきめ細かな児童相談体制の構築に努めてまいります。
原のり子 早急に検討を進めて、設置につなげることを求めておきたいというふうに思います。
(左から)原のり子、里美ゆみ都議、田村ゆう子調布市議、
大山とも子都議、横手ゆう子都議
by hara-noriko | 2024-04-24 21:13 | 都議会 | Comments(0)