「こども誰でも通園制度」について考える
2025年 12月 28日
子どもの健やかな発達へいくつかの提案
都議会厚生委員会で事務事業質疑をおこないました。事務事業質疑は、厚生委員会が所管する福祉局、保健医療局の事業について何でも質問できることになっています。10月30日に福祉局に質問しました。テーマは(1)都外の医療型障害児入所施設のサービス推進費補助について(2)放課後等デイサービスについて(3)「こども誰でも通園制度」について―の3つです。質疑の大要を順次お知らせしています。
福祉局への質問の3回目は、国が実施する「こども誰でも通園制度」と東京都が実施している「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を取り上げ、子どもたちが発達できる制度にするための改善を提案しました。
【原のり子のコメント】
国の「こども誰でも通園制度」は、ゼロ歳6カ月から2歳までの子どもさんが、月10時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で幼稚園・保育園等を利用できる新たな制度。2026年度から本格実施となり、すべての区市町村で実施しなければならないとなっています。自治体によって、どこの施設が担うかはそれぞれの考えによりますが、6カ月から2歳までの子どもを対象にしなければならないとなっています。
一方、国の制度に先行して実施している、東京都の「多様な他者との関わりの機会の創出事業」は、保護者の就労等の有無にかかわらず、保育所、幼稚園、認定こども園等を利用していない未就園児を保育所等で定期的に預かり、多様な他者との関わりの中でのさまざまな体験や経験を通じて、子どもの健やかな成長を図る、という事業として実施されています。この事業は任意であり、時間や年齢もそれぞれの自治体の考えで実施しています。
食べる・寝る・遊ぶことを基本に、子ども期を十分に保障することの大事さ。また、さまざまな人とのかかわりを経験していくことの大事さ。そして、子どもを真ん中に、先生と保護者が力をあわせて子育てをしていくことの大事さ。…親の就労の要件によらず、どの子もこうした保育を受けられることは、成長・発達にとってとても大事だと思います。国も都も、そのこと自体は認めてきているのだと思います。これは、保育運動の成果だといえると思います。しかし、制度設計が不十分。とくに、国の制度は問題があります。そこを区市町村まかせにせず、都の役割を明らかにしたいと思い、質問しました。
また、今回の質問で、国の制度よりも都の制度が上回っている部分については、上乗せできることを確認・要望しました。
そして、文字通り、誰でも安心して保育を受けられるようにするにはどうしたらよいのか、現場の先生たちの意見も聞きながら、引き続き取り組んでいきたいと思います。
以下が質疑の大要です。
どの子どもにも質の高い保育を保障する
そのために保育条件の確保が不可欠
原のり子 東京都が実施している、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」と、国が実施している、「こども誰でも通園制度」について、うかがいます。
質問するに当たって、制度名が長いので、それぞれ、「多様な他者事業」「誰でも通園制度」と短く話しますので、よろしくお願いいたします。
私たちは、子どもたちが、親の就労等の有無にかかわらず、認可保育園に通えるようにして、どの子どもにも質の高い保育を保障していくことには、意義があることだと考えています。そしてそのためには、職員の配置をはじめとした保育条件の確保が不可欠です。
来年度から実施される、「こども誰でも通園制度」
区市町村から「大丈夫なのか」の声が 都のかかわり方は?
原のり子 しかし、その点から考えると、「誰でも通園制度」は問題が多く、また、多様な他者事業も改善が必要な点もあると考えています。まず、その立場で質問をしていきます。
来年度から、「誰でも通園制度」が本格実施されます。しかし、いまだに実施内容が示されず、すべてが整ってもいない状況で大丈夫なのかと、区市町村からも声が聞かれます。全ての区市町村で実施されることになりますが、この制度に都道府県はどう関わっていく位置づけなのか、うかがいます。
福祉局子供・子育て施策推進担当部長 令和6年(2024年)6月に成立した改正子ども・子育て支援法では、「こども誰でも通園制度」に係る都道府県の役割として、区市町村に対する必要な助言及び適切な援助等を行うことと規定をされております。
補助などを通じて、東京都が役割を果たすことは可能
子どもの権利を守る立場で
原のり子 都として、区市町村に対する必要な助言及び援助など、これが規定されているということです。
実際のところ、実施に向けて具体的にやることというのは、ほぼ区市町村の仕事となっていまして、都道府県の仕事はあまりないという制度設計になっています。
しかし、各区市町村の実施する事業が、少しでも子どもにとってよりよいものになるために、補助などを通じて、東京都が役割を果たすことは可能ですし、かつてかっての東京都は、認可保育園の国基準を上回る都基準をつくって、質の高い保育の提供を保障していたという歴史もあります。
「誰でも通園制度」には多くの問題がありますが、すべての区市町村が実施しなければならないとなった中で、可能な限り、子どもの権利を守る立場で、東京都が役割を果たすことが求められていると思います。
「誰でも通園制度」と「多様な他者事業」
それぞれの目的と違いを説明してほしい
原のり子 「誰でも通園制度」と「多様な他者」は、内容が重なる部分も多いですが、それぞれの目的と違いについて説明を求めます。
子供・子育て施策推進担当部長 国の「こども誰でも通園制度」は、子どもの良質な生育環境を整備するとともに、すべての子育て家庭への支援を強化することを目的としております。
都の「多様な他者との関わりの機会の創出事業」は、乳幼児期から多様な他者と関わりを持ち、子どもの健やかな成長を図ることを目的としております。
両制度では、子どもの対象の年齢や利用時間の上限などに違いがございます。
都の「多様な他者事業」は継続するのか
「誰でも通園制度」との整理はどのようにしていくのか
原のり子 そういう中で、今後、都として、多様な他者事業は継続していく考えなのでしようか。また、誰でも通園制度と重なっている部分、また、異なっている部分の整理はどのようにしていくのか、うかがいます。
子供・子育て施策推進担当部長 都は今年度から、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を国事業の上乗せとして整理し、実施をしております。
令和8年度(2026年度)以降の国事業につきましては、現在、国が制度の詳細を検討しているところでございます。
「多様な他者事業」
施設の内訳、年齢別人数、障害児や医療的ケア児の受け入れは?
原のり子 提出していただいた資料によりますと、「多様な他者事業」は、昨年度(2024年度)、都内380施設で実施し、のべ14万4985人が利用するという計画になっています。施設の内訳や、また、年齢別の人数、これはどのようになっているでしょうか。また、障害児や医療的ケア児の受入れ状況もうかがいます。
子供・子育て施策推進担当部長 「多様な他者との関わりの機会の創出事業」の令6六年度(2024年度)交付決定の実績によりますと、実施場所ごとの内訳といたしまして、認可保育所が102カ所、幼稚園が660カ所、認定こども園が31カ所、認証保育所が24カ所、それ以外が57カ所となっております。
「誰でも通園制度」の場合
0歳6カ月から2歳まで 要望があれば対応しなければならない
原のり子 幼稚園が多いということは、2歳児を対象にしているところが多いのではないかと推察しますけれども、「多様な他者事業」の場合は、すべての年齢に対応していなくてもよいわけですよね。
ただ、今度、「誰でも通園制度」の場合は、給付事業なので、0歳6カ月から2歳までが対象ということになっていますので、要望があれば、自治体としては、0歳は対応できませんなどということはできないと思うんですね。
それで、ちょっとそのことを確認したいんです。「誰でも通園制度」の場合は、今いったように給付事業なので、必ず0歳6カ月から2歳までを、きちんと要望があれば対応できるようにすることが自治体には求められているという、そういう理解でいいのかどうか、そのことだけ確認させてください。
子供・子育て施策推進担当部長 国の「こども誰でも通園制度」は給付事業となっておりまして、今お話にありました、0歳6カ月から2歳児、必要があれば、提供しなければいけないという形になってございます。
原のり子 ありがとうございます。ちょっとその点を確認したかったので。
よい保育が受けられるよう
都として区市町村を支援すべきだ
原のり子 そうだとすれば、今後は、都としても、「多様な他者事業」、また、「誰でも通園制度」、それぞれ利用する子どもたちの年齢や、また障害児の受け入れなど、これはきちんと把握をしていくことが必要なのではないかと思います。
「誰でも通園制度」本格実施に当たって、どこに住んでいる子どもでも同じように利用できて、よりよい保育が受けられるようにするために、都として、区市町村を支援すべきだと私は考えます。
「誰でも通園制度」 上限が月10時間
これでは保育園に慣れることすら難しい、という指摘が
原のり子 それで、以下、聞いていきます。
上限が月10時間、「誰でも通園制度」、上限が月10時間ですけれども、これでは子どもが保育園に慣れることすら難しい、と現場から指摘があります。東京都としてはどう認識していますか。
子供・子育て施策推進担当部長 都は、「多様な他者との関わりの機会」の創出事業におきまして、利用時間の上限を設けずに実施をしております。
また、都は、国に対し、すべての乳幼児が早期から多様な他者と関わる機会を確保できる制度を構築するよう、提案要求をしております。
都が出している国への要望
この内容は重要だ
原のり子 都が国に出している提案要求では、「誰でも通園制度」について、対象となる子どもの年齢が、0歳6カ月から2歳までと限定されていること、また、利用時間の上限が月10時間までとしていること、また、利用者負担の減免も住民税非課税世帯に限られていることを指摘し、医療的ケア児を含めて、すべての乳幼児を対象にし、利用者負担額の早期無償化も、東京都として提案しています。これを国に求めていることは重要だと思います。
当分、都の要望部分を
都がカバーしていくことが必要
原のり子 同時に、当面、都として、その部分をカバーしていくということが必要ではないかと思います。
毎日保育園で過ごす子と日によって入れ替わる子
専用室を整備する場合、都からの支援が必要ではないか
原のり子 また、毎日、長時間保育園で過ごす在園児と、比較的短時間で、日によって入れ替わりのある子どもを一緒に保育することは難しいとの現場の声もあります。
専用室を整備する場合の都からの支援が必要ではないでしようか。いかがでしようか。
子供・子育て施策推進担当部長 都は、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」におきまして、乳幼児期から多様な他者と関わりをもち、子どもの健やかな成長を図ることを目的として実施をしております。本事業を円滑に実施するため、備品整備や改修等を行うための経費を支援しております。
熟練保育士が配置できるように
都の支援が必要ではないか
原のり子 「多様な他者事業」では、10分の10、東京都の10分の10で400万円まで補助をしているわけです。これは継続を求めておきたいと思います。
また、「誰でも通園制度」を既に実施している現場からは、熟練した保育士でないとなかなか対応し切れない、という声もあります。つまり先ほども指摘したように、子どもが慣れること自体、難しい、時間がかかる。月10時間より、ある程度長くしたとしても、同様の課題は残ります。
また、そういう条件の中で障害児などにも対応していくということですから、保育士の力量や周りの保育士との連携も必要になってきます。
熟練保育士が配置できるように、1歳児5人に1人以上の配置とすることをはじめ、保育士の配置を厚くするための都の支援が必要ではないかと考えますが、いかがですか。
子供・子育て施策推進担当部長 都は、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」におきまして、必要な職員配置基準を定め、これに基づき、支援を行っております。
通常の保育以上に難しさがある
充実した職員配置は不可欠
原のり子 通常の保育以上に難しさのある形で実施して、子どもの安心や成長、発達に資する事業にしようとするのであれば、充実した職員配置は不可欠です。改めて検討を強く求めておきます。
「多様な他者事業」
保育士等の割合を6割以上にしたのはなぜか
原のり子 「多様な他者事業」は、保育従事者に占める保育士等の割合を6割以上としているわけですが、このような基準にしたのはなぜですか。
子供・子育て施策推進担当部長 本基準につきましては、認可保育所等を利用していない就学前の児童を継続的に保育する定期利用保育事業を参考に設定をしております。
「多様な他者の事業」の場合
保育士等の割合は10割にすべきではないか
原のり子 都が実施している定期利用保育事業が、多様な他者の趣旨に近いところがある。つまり一時的な保育ではなく、定期的に利用できるという部分で、そうしているのではないかと思いますが、定期利用保育は、保護者の多様な就労形態と保育需要に対応することを目的として実施されたもので、子どもの成長、発達を中心に考えられてきた制度ではありません。
子どもの健やかな成長を図るための事業として、「多様な他者の事業」をすすめていくのであれば、単に別の事業の基準と同じにするのではなく、子どものためにどのような基準にするべきか、きちんと考え直す必要があるのではないかと思います。
保育士は子どもの発達の専門家で、認可保育園では従来から10割の配置が求められています。さらに、先ほど述べたように、高いスキルが求められることからすれば、「多様な他者の基準」で、保育従事者に占める保育士等の割合は10割にすべきではないですか。いかがですか。
子供・子育て施策推進担当部長 繰り返しとなりますけれども、本基準につきましては、認可保育所等を利用していない就学前の児童を継続的に保育する定期利用保育事業を参考に設定をしております。
なお、都は、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」におきまして、必要な職員配置基準を定め、実施をしております。
原のり子 検討すべきと改めて強調しておきたいと思います。
「誰でも通園制度」は
定期利用とすべきではないか
原のり子 さらにいえば、都も、「多様な他者事業」を一時的なものでなく、定期的と見ていることからみても、「誰でも通園制度」は、子どもの成長、発達を支援するということを考えれば、柔軟利用ではなく、定期利用とすべきではないかと考えますが、いかがですか。
子供・子育て施策推進担当部長 国の手引によりますと、「こども誰でも通園制度」の利用に当たりましては、地域の状況等を踏まえ、利用者と自治体、そして事業者が相談の上、子どもの育ちの観点から利用パターンを決定することが示されております。
子どもの発達を保障できるようにするためには
実施方法は、やはり定期利用とするべきだ
原のり子 子どもが安心して過ごし、発達を保障できるようにするためには、継続的で安定した人間関係が必要であり、実施方法は、やはり定期利用とするべきではないかと考えます。
すべての子どもたちが利用できるようにするには
実施する区市町村を都が支援すべきだ
原のり子 そして、本当に文字どおりすべての子どもたちが利用できるようにするためには、親子通園ができる場もつくることや、保護者が相談できるようにすることが重要であって、実施する区市町村を支援すべきだと考えますが、いかがですか。
子供・子育て施策推進担当部長 「多様な他者との関わり機会の創出事業」におきまして、児童が通園に慣れるまでの対応として、親子通園を取り入れることを可能とするほか、保護者に対して、必要に応じて面談や子育てに係る助言を行うこととしておりまして、都は、本事業を実施する区市町村を支援しております。
誰でも通園できる制度にしていく
そのためにも保育士の配置基準を引き上げる
原のり子 親子通園可とすることができるというのは、今ご答弁にあったように、あくまで慣れるまでの間という位置づけです。そうした配慮も、もちろん必要ではありますけれども、さまざまな子どもたち、親子がいます。親子通園して、子どもを見ながら、相談もできる場も増やしておく必要があると思います。
つまり、文字どおり誰でも通園できるという制度にしていくということです。
誰もが利用でき、そのためにも、保育士の配置基準を引き上げる。都としては、多様な他者を実施していることからも、「誰でも通園制度」を上回っている部分については、後退をさせない、上乗せしていく。このことを強く求めて、質問を終わります。


by hara-noriko | 2025-12-28 19:00 | 都議会 | Comments(0)

